訴訟物の価格の算定方法、予納郵券(平成20年7月10日更新)


1、 訴状において 訴訟物の価格(訴額)は訴えの手数料算定、管轄決定のために記載します。請求する元金の金額のみを記載します(民訴9条2項)。利息、遅延損害金等付帯請求を入れると額が未確定になり手数料計算が煩雑になるのが理由です。金銭請求以外の価格では算定に一般的決まりがありますが(民訴8条、民事訴訟費用の法律4条)不明確な部分は最高裁民事局長(訴額)通知等により決められています。別表参照してください。

2. 基本原則
@ 訴えで主張する利益(全部勝訴した場合の額)が基準になる(民訴8条)。
A 1つの訴えで複数の請求をする場合は合算する(民訴9条1項)。
B 損害金等の付帯請求は入れない(民訴9条2項)。
C 財産上の請求でない場合(離婚、認知、嫡出否認の訴え、)、算定困難な場合(市民全体のための住民訴訟、自治体の監査請求)は160万円とする(民事訴訟費用法4条2項)。
D 一の訴えにより財産権上の請求でない請求とその原因である事実から生ずる財産権上の請求とをあわせてするときは、多額である訴訟の目的の価額による(民事訴訟費用法4条3項、離婚の訴え160万円と慰謝料請求の額の多いほう)等

3. 訴額から計算された手数料印紙(計算式はホームページ参照)の他に、郵送用切手を訴状提出時に予納します(民訴費用13条)。裁判所は、訴状、準備書面、呼び出し状、判決、等の郵送迅速に行う必要がありますから紛争解決を申し出た原告に訴状に添付して予納させます。東京地裁通常訴訟第一審では合計6400円です(10円から500円まで8種類提出)。1名増えるごとに2080円追加。裁判所に電話でも確認できます。郵送代ですから残れば返還してくれます。


訴訟物の価額(訴額)の算定基準(基本的なもの)

昭和31.12.12 最高裁判所民事甲第412号民事局長通知
平成6.3.28 最高裁判所民2第389号民事局長通知
平成6.3.28 最高裁判所民2第79号民事局長通知


訴訟物たる
権利の種別

訴訟物の価格

所有権

目的たる物の価格

占有権

目的たる物の価格の3分の1

地上権・永小作権・賃借権

目的たる物の価格の2分の1

地役権

承役地の物の価格の3分の1

担保物権

優先順位の担保物権がない場合

  • 被担保債権の金額
  • 目的たる物の価格が被担保債権の金額に達しないときは、物の価格

優先順位の担保物権がある場合

  • 被担保債権の金額
  • 目的たる物の価格に優先順位の担保物権を考慮して修正を加えた金額が被担保債権の金額に達しないときは、その修正金額

金銭支払請求権

  • 請求金額
  • 将来の給付を求めるものは、請求金額から中間利息を控除した金額

物の引渡し(明渡し)請求権

所有権に基づく場合

目的たる物の価格の2分の1

占有権に基づく場合

目的たる物の価格の3分の1

地上権・永小作権・賃借権に基づく場合

目的たる物の価格の2分の1

賃貸借契約の解除等による場合

目的たる物の価格の2分の1

所有権移転登記請求権

目的たる物の価格

詐害行為取消し

  • 原告の債権の金額
  • 取り消される法律行為の目的の価格が原告の債権の金額に達しないときは、法律行為の目的の価格

境界確定

係争地域の物の価格



1. 物の価格とは、
@ 地方税法349条の規定による基準年度の価格のあるものについては、その価格(固定資産税の評価額。課税標準額ではない)、但し、土地を目的とする訴訟については、平成6年4月1日から当分の間、その目的たる物の価格に2分の1を乗じて得た金額を基準とする
A その他の物については、取引価格とする
2. 上訴(附帯上訴を含む)の場合は不服を申し出た限度で訴訟物の価額を算定する。
3. 会社設立無効、株主総会の決議の取消し・無効確認等の訴えは、財産権上の請求でない訴えとして取り扱う
4. この基準は、参考資料であって、訴訟物の価額に争いがあるとき等の基準にはならない。
5. 価格の認定に関しては、基準年度の価格について所管公署のこれを証明する固定資産評価証明書を提出する等の方法により、適宜、当事者が証明すること。


民事訴訟法
(普通裁判籍による管轄)
第四条  訴えは、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。
第五条  次の各号に掲げる訴えは、それぞれ当該各号に定める地を管轄する裁判所に提起することができる。
一  財産権上の訴え
     義務履行地
(訴訟の目的の価額の算定)
第八条  裁判所法 (昭和二十二年法律第五十九号)の規定により管轄が訴訟の目的の価額により定まるときは、その価額は、訴えで主張する利益によって算定する。
2  前項の価額を算定することができないとき、又は極めて困難であるときは、その価額は百四十万円を超えるものとみなす。
(併合請求の場合の価額の算定)
第九条  一の訴えで数個の請求をする場合には、その価額を合算したものを訴訟の目的の価額とする。ただし、その訴えで主張する利益が各請求について共通である場合におけるその各請求については、この限りでない。
2  果実、損害賠償、違約金又は費用の請求が訴訟の附帯の目的であるときは、その価額は、訴訟の目的の価額に算入しない。

民事訴訟費用等に関する法律
(訴訟の目的の価額等)
第四条  別表第一において手数料の額の算出の基礎とされている訴訟の目的の価額は、民事訴訟法第八条第一項 及び第九条 の規定により算定する。
2  財産権上の請求でない請求に係る訴えについては、訴訟の目的の価額は、百六十万円とみなす。
 財産権上の請求に係る訴えで訴訟の目的の価額を算定することが極めて困難なものについても、同様とする。
3  一の訴えにより財産権上の請求でない請求とその原因である事実から生ずる財産権上の請求とをあわせてするときは、多額である訴訟の目的の価額による。

(郵便切手等による予納)
第十三条  裁判所は、郵便物の料金又は民間事業者による信書の送達に関する法律 (平成十四年法律第九十九号)第二条第六項 に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項 に規定する特定信書便事業者の提供する同条第二項 に規定する信書便の役務に関する料金に充てるための費用に限り、金銭に代えて郵便切手又は最高裁判所が定めるこれに類する証票(以下「郵便切手等」という。)で予納させることができる。


※東京地方裁判所に予納する郵券の一覧表
合計6400円
 500円切手8枚
 270円切手2枚
 200円切手2枚
 100円切手8枚
 80円切手2枚
 50円切手4枚
 20円切手10枚
 10円切手10枚
 但し、当事者1名増加する毎に2080円追加
 (内訳、500円切手4枚、20円切手4枚)

※東京高等裁判所(控訴審)に予納する郵券の一覧表
合計8850円
 500円切手12枚
 300円切手3枚
 100円切手10枚
 80円切手5枚
 50円切手5枚
 20円切手10枚
 10円切手10枚
 但し、当事者1名増加する毎に2080円追加
 (内訳、500円切手4枚、20円切手4枚)


※東京高等裁判所(上告審)に予納する郵券の一覧表
合計5690円
 500円切手4枚
 400円切手6枚
 200円切手2枚
 100円切手2枚
 50円切手7枚
 30円切手6枚
 20円切手2枚
 10円切手12枚
 但し、当事者1名増加する毎に2140円追加
 (内訳、500円切手2枚、400円切手2枚、100円切手2枚、50円切手1枚、30円切手3枚)


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