新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース 2、以上は,会社による解雇が有効である場合を前提としましたが,そもそも使用者は,労働者に対して,自由に解雇ができるわけではありません。すなわち,現在の法律では,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない解雇は,解雇権を濫用したものとして,無効とされています(労働基準法18条の2)。これは,それまで判例によって認められてきた法理を平成15年の法改正で明文化したものです。そこで,「合理的な理由」「社会通念上相当」があるか否かをどのように判断すべきかにつき,問題となることの多い@使用者の経営上の理由による整理解雇,A懲戒処分としての懲戒解雇を中心に簡単に説明します。 3、なお,平成15年の法改正により,使用者には,就業規則に解雇の事由を記載することが義務づけられるとともに(89条3号),使用者は,労働者に解雇を通告した場合,解雇の効力発生前であっても,当該労働者の請求があれば,解雇の理由を記載した文書を交付しなければならないこととされました(22条)。 4、したがって,あなたは,解雇の理由の開示を求めた上,解雇の有効性に疑問を抱く場合には,労働者としての地位を守るために地位保全の仮処分,解雇無効確認の訴え等の法的手続きをとることができますし,併せて,解雇処分後支払を受けていない賃金の支払を求めることもできますので,諦めて退職届を書くことのないようにして下さい。実際には,法的手続をとった上で,適正な額の金額を受け取って退職する旨の裁判上の和解が成立するケースも多く見られますが,任意退職の形にされてしまうと,法的手続をとることが難しくなります。ただ、書いてしまっても争う余地が全くないわけではありませんから,弁護士にご相談してみて下さい。
No.5、2005/1/25 10:16 https://www.shinginza.com/qa-roudou.htm
[民事・労働]
質問:正社員で働いていましたが,突然,会社から解雇を言い渡され,困っています。
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回答:
1、原則として,使用者が(会社)が労働者を解雇しようとする場合は,少なくとも30日前(解雇予告期間)にその予告をしなければならず,もし,即時に解雇する場合には,30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません(労働基準法20条1項本文)。もっとも,やむを得ない理由で事業が継続できなくなった場合や,労働者に責任がある理由がある場合は,解雇予告期間,解雇予告手当とも必要ありません(労働基準法20条1項但書)。後述する懲戒解雇が認められるような場合は,解雇予告期間,解雇予告手当が不要とされることが多いでしょう。予告期間,解雇予告を無視した解雇の効力については,解雇の意思表示から30日が経過するか,使用者が予告手当を提供した時点で,労働契約終了の効力が生じるとする判例があります。したがって,通常の場合であれば,あなたは,解雇に際し,少なくとも30日間は仕事を続けるか,30日分以上の解雇予告手当を受け取ることができます。
(1)懲戒解雇 懲戒解雇が有効といえるためには,一般に,@懲戒事由及び懲戒の種類が就業規則に明確に定められ,労働者に周知されていること,A規定の内容が合理的であること,B規定に該当する懲戒事由があることが必要とされています。そのほか,平等な取扱いがなされること,処分の重さが規律違反の種類・程度に照らして相当であること,本人に弁解の機会を与えるなどの手続を経ていることも要請されます。また,上記の要件を充たしていても,懲戒の対象となる行為が行われた後に定められた就業規則の懲戒事由に基づいて懲戒処分をすることは許されませんし,過去に懲戒処分の対象とされた事由について重ねて懲戒処分をすることも許されません。
(2)整理解雇 整理解雇が有効とされるためには,判例上確立された要件として,@企業運営上の必要性,A解雇回避のための努力を尽くすこと,B人選の客観性・合理性C労働者に対する説明や事前の協議を尽くすなどの手続の履践が必要とされています。なお,Aの具体的内容としては,経費削減,新規採用の停止,労働時間短縮,配置転換,出向,希望退職募集等の措置が考えられます。
(3)その他 その他の場合として,(a)労働者個人の能力・適正欠如を理由とする解雇,(b)傷病による能力欠如を理由とする解雇等が考えられます。これらの解雇の有効性は,ケース・バイ・ケースで判断するほかありませんが,例えば,(a)勤務成績不良を理由とする解雇が有効とされるのは不良の程度が著しい場合に限られ,単に相対評価が低いというだけでは解雇事由に該当しないといえますし,(b)傷病により従前の職務への復帰が困難な場合であっても,別の職務への配置可能性を検討することなくなされた解雇は無効とされる余地があります。