新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.6、2004/12/17 17:05

[家事・親子]
質問:妻と離婚した100日後に,妻に子供が産まれ出生届を出したようですが、私の嫡出子として戸籍に記載されてしまいました。これまでの経緯からその子は私の子ではなく,他の男性の子であることは確かなのですが,このような場合,どのようにして私の戸籍からその子を外すことができるのでしょうか。

回答:
1、離婚から300日以内に生まれた子供は民法772条で嫡出子として推定されてしまうため,仮に夫以外の他の男性との間に生まれた子供であっても出生届を提出するとご質問の事例のように前の夫であるあなたとの間の子供としてあなたの戸籍に入籍することになります。このようになってしまった後で,あなたの戸籍から子供を外す手段は,大きく分けて嫡出否認を主張する方法(嫡出子として推定される親子関係を否定する方法)と親子関係不存在を主張する方法(戸籍には子供として記載されていても、事情により本当は嫡出子として推定するのが無理な場合に親子関係を否定する方法)があります。いずれの主張も人事訴訟として、訴訟を裁判所に提起することが可能ですが、より簡単な家庭裁判所の調停を申し立て、その合意に基づき家庭裁判所から出された審判で、戸籍訂正を行うことも考えられますので、まずはそちらの手続きから行うことをおすすめします。
2、まず、嫡出否認の調停(家事審判法23条2項)ですが、前夫が子供もしくは親権を行う母に対して申し立てます。申立期間は,民法の規定により前夫が子供の出生を知ったときから1年以内となっておりますので,この点はご注意下さい(ただ、事情によっては、「嫡出推定を受ける関係にある事実を知ったとき」、あるいは「否認原因となるべき事実を知ったとき」とする例もあるので、この期間を過ぎてしまっても、あきらめずに家庭裁判所に申し立てることをおすすめします)。この調停において,当事者双方の間で子供が前夫の子供でないという嫡出否認についての合意ができ,その原因事実について争いがなく、かつ,家庭裁判所が必要な事実の調査等を行った上で,その合意が正当であると認められれば,合意に従った審判がなされます。なお、この審判の際に、親子関係がないことを明らかにするために、血液型やDNA鑑定等の鑑定を行う場合もあります。この場合、原則として,申立人が鑑定に要する費用を負担することとなります。
3、これに対し、例えば、離婚後300日以内に生まれた子供であっても、夫が長期の海外出張や受刑等で、子供の母親との性的交渉がなかった場合など、夫が子供の親でないことが客観的に明白な場合で,先ほどの前夫の子であるとの推定を受けない場合などは、家庭裁判所に親子関係不存在の調停を申し立てることができます。この調停においても、当事者双方の間で子供が夫の子供でないという親子関係不存在についての合意ができ,その原因事実について争いがなく、さらに,家庭裁判所が必要な事実の調査等を行った上で,その合意が正当であると認められれば,合意に従った審判がなされます。なお、この審判の際にも、事情によっては、関係者の血液型検査などがなされる場合があります。審判が出たら、審判書謄本及び確定証明書を添付して、市区町村役場に戸籍の訂正を申請することになりますが、審判が確定した日から1ヶ月以内に申請すること(戸籍法116条1項)となっていますので、ご注意下さい。
4、そして,いずれの調停においても,両当事者間で合意まで行きつかなかった場合には、家庭裁判所に、訴訟として、嫡出否認の訴えまたは親子関係不存在の訴えを提起することとなります。この点、従来、これらのような人事に関する訴訟は地方裁判所で行われてきましたが、平成16年4月1日に人事訴訟法の新設を含む人事訴訟手続法の改正により、調停で合意が得られず不調となった場合でも、引き続き、家庭裁判所で訴訟ができるようになりました。合意に変わる審判や嫡出否認、親子関係不存在を認める判決を得て、戸籍の訂正がなされた場合には、子供は前夫の戸籍から除かれ、母親の離婚後に作られた戸籍に婚外子として記載されることになります。前夫の戸籍からはずれた後は、実の父親から認知してもらうことも可能となり、さらに離婚した妻と実の父親と結婚すれば、準正といって嫡出子となることになります(民法789条)。

法律相談事例集データベースのページに戻る

法律相談ページに戻る(電話03−3248−5791で簡単な無料法律相談を受付しております)

トップページに戻る