新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.47、2003/3/2 17:22 https://www.shinginza.com/chikan.htm

[刑事・起訴前]
質問:満員電車の中でつい痴漢(ちかん)行為をしてしまい、女性に腕を捕まれ警察に逮捕されてしまいました。会社をクビになってしまいますか。新聞になど出てしまいますか。心配です。
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回答:刑事手続きについて
あなたが服の上から女性の体に触れて、逮捕されたのが1回目であるなら、逃走や犯行を否認しなければ警察署から検察庁に送検されず、後に迷惑防止条例違反で略式起訴されることが多いです。罰金は20〜30万円程度が多いです。送検されても勾留はされず同様の罰金となることが多いです。逃走、犯行否認の場合は最長23日間、短くても13日間以内拘束され、略式手続により罰金20〜30万円となる可能性があります。法改正により、常習性がない場合でも、罰則が6月以下の懲役又は50万円以下の罰金となりましたので注意が必要です。何度も逮捕されたことがあるとか、下着の中に手を入れていたなどの場合は、強制わいせつ罪となり、通常起訴されて何週間も勾留され続けてしまう場合もあります。

解雇について
 会社は、就業規則で「犯罪行為を犯して有罪が確定したとき」社員を懲戒解雇にできる、という規定を定めていることが多いですから、勾留が長引いたり、事件が会社に知れてしまったときは、最悪の場合は、懲戒解雇処分になるおそれもあります。特に外資系の会社、上場会社の場合は厳しい規定がおかれています。公務員であれば当然懲戒解雇となるでしょう。ちなみに、勤務医師の場合は医師免許に関連があり特別の注意が必要です(医道審議会参照)直ちに弁護士にご相談ください。

報道について
捜査機関は、司法記者が捜査機関を巡回している関係上、一罰百戒の意味もあり、報道機関からの報道の自由の要請(ニュース価値)から、公務員、有名会社の社員、有名機関の勤め人等アトランダムに報道機関に事件を公表する場合があります。あなたが有名会社の社員であれば注意が必要です。

対策について
 最良の手段は、検察官により起訴(略式起訴も含む)される前に(勾留されている場合は最長23日以内に)、一刻も早く弁護士を依頼して被害者に謝罪を行い、示談を成立させ、示談書を検察官に提出することです。できれば、示談金を少々高めにしても担当弁護士に粘り強く交渉を要請し、告訴、被害届けの取り下げをしてもらうことです。交渉の際、被害者の連絡先を知る必要がありますが、被害者の人権上または被害者の希望、捜査の密行性から、被疑者側には被害者の連絡先は開示されないのが通常です。刑事弁護人であれば捜査機関に被疑者側の事情を詳しく説明し、被害者側との連絡方法等の確認を詳しく協議要請し、被害者側の示談の意思を確認することが可能な場合もあります。示談金は20〜30万円が通常です。起訴前に示談が成立すれば、親告罪では有りませんが不起訴処分になる可能性もかなり高いと言えます。その理由は、本罪よりも刑がかなり重い強制わいせつ罪、強姦罪の場合には親告罪となっており、これらの罪を犯した場合、被害者が起訴される前に告訴を取り下げる(処罰意思の放棄)と公訴権が消滅し不起訴となってしまう関係上、より犯行態様、犯情、刑罰が軽い本罪についても不起訴にすることが取り扱い上公平とされているからです。
常習性がある場合は、公判(公開刑事裁判)を請求される場合があり、これも示談が大切です。和解、示談により公判を請求されることなく、簡易な略式手続きになる場合があります。
刑事事件、起訴前弁護に詳しい弁護士、被害者側と和解交渉、方法に詳しい弁護士に依頼されるといいでしょう。

参考刑罰法規

刑法176条 強制わいせつ罪
  十三歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上七年以下の懲役に処する。十三歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

刑事訴訟法235条
 親告罪の告訴は、犯人を知った日から6箇月を経過したときは、これをすることができない。ただし、次に掲げる告訴については、この限りでない。
一 刑法第176条から第178条まで、第225条若しくは第227条第1項(第225条の罪を犯した者を幇助する目的に係る部分に限る。)若しくは第3項の罪又はこれらの罪に係る未遂罪につき行う告訴

公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(抜粋)
(東京都迷惑防止条例、東京都以外の各道府県でもほぼ同様の条例が制定されています。)

第5条(粗暴行為の禁止)
1項 何人も、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しくしゆう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない。
第8条(罰則)
1項 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
  1 第2条の規定に違反した者
  2 第5条第1項の規定に違反した者
3項 常習として第一項の違反行為をした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

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