新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース 2、不正登記防止申出の際には、申出人が登記名義人本人であることに加え、申出に至った経緯や申出理由に対応した措置を執っていること(今回の場合、警察への被害届がこれに当たります)の確認がなされます(新準則第35条第4項)。法務省の通達によれば、緊急を要する場合は、いったん申出を受け付けた上で、その後直ちに措置を執るよう求めることができる余地もあるようですが、この本人確認制度や不正登記防止申出制度自体、まだ新しい制度であり、運用が定まっていないというのが実状ですから、この緊急措置がどの程度認められるかについても、今後の運用を待たざるを得ません。ご心配の場合は、これら手続を弁護士や司法書士などの専門家と相談しながら行うと良いでしょう。 3、なお、実印や印鑑証明書がすぐに用意できない場合には、被害届だけでも法務局に持っていって、不正登記防止申出制度を使わずに、本人確認調査を促すという方法も考えられます。申出制度を使えば、申出書類が保管されますし、要調査の扱いになる場合もありますので(新準則第35条第5項)、その方が確実だとは思われますが、急を要する場合も多いと思います。まだ新しい制度ですので、状況判断に迷った場合には、迅速な対応を行ってくれる専門家と相談することをお勧めします。 ≪参照条文≫ 準則 法務省民二第457号 平成17年2月25日 通達
No.68、2005/6/17 14:22
[民事・登記]
質問:権利証が盗まれてしまいました。どうしたらいいですか。
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回答:
1、権利証が盗まれたり、強奪されたりした場合には、早急に警察に被害届2通を受理して貰い、そのうち1通に受領印をもらって、それと実印、印鑑証明書を持って法務局に行って下さい。不動産登記法が改正され、24条で登記官の本人確認制度が創設され、その本人確認調査の契機とするため、不正登記防止申出制度が新設されました(新準則第35条)。この申し出を行ったからといって、必ず登記申請が却下されるわけではありませんが、登記官が、申請人となるべき者でない者が申請していると疑う相当な理由があると、この申し出から判断した場合には、権限の有無が調査されることになります。
改正不動産登記法24条 登記官は、登記の申請があった場合において、申請人となるべき者以外の者が申請していると疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、次条の規定により当該申請を却下すべき場合を除き、申請人又はその代表者若しくは代理人に対し、出頭を求め、質問をし、又は文書の提示その他必要な情報の提供を求める方法により、当該申請人の申請の権限の有無を調査しなければならない。
第35条 不正登記防止申出は,登記名義人又はその代表者若しくは代理人(委任による代理人を除く。)が登記所に出頭してしなければならない。ただし,当該登記名義人又はその代表者若しくは代理人が登記所に出頭することができない止むを得ない事情があると認められる場合には,委任による代理人が登記所に出頭してすることができる。
2 不正登記防止申出は,別記第53号様式又はこれに準ずる様式による申出書を登記官に提出してするものとする。
3 前項の申出書には,登記名義人又はその代表者若しくは代理人が記名押印するとともに,次に掲げる書面を添付するものとする。ただし,登記申請における添付書面の扱いに準じて,次に掲げる添付書面を省略することができる。
(1) 登記名義人又はその代表者若しくは代理人(委任による代理人を除く。)の印鑑証明書
(2) 登記名義人が法人であるときは,当該法人の代表者の資格を証する書面
(3) 代理人によって申出をするときは,当該代理人の権限を証する書面
4 登記官は,不正登記防止申出があった場合には,当該申出人が申出に係る登記の登記名義人本人であること,当該申出人が申出をするに至った経緯及び申出が必要となった理由に対応する措置を採っていることを確認しなければならない。この場合において,本人であることの確認は,必要に応じ規則第72条第2項各号に掲げる方法により行うものとし,登記名義人の氏名若しくは名称又は住所が登記記録と異なるときは,氏名若しくは名称又は住所についての変更又は錯誤若しくは遺漏を証する書面の提出も求めるものとする。
5 登記官は,不正登記防止申出を受けたときは,不正登記防止申出書類つづり込み帳に第2項の申出書及びその添付書面等の関係書類をつづり込むものとする。
6 前項の場合は,不正登記防止申出書類つづり込み帳の目録に,申出に係る不動産の不動産所在事項,申出人の氏名及び申出の年月日を記載するものとする。
7 登記官は,不正登記防止申出があった場合において,これを相当と認めるときは,前項の目録に本人確認の調査を要する旨を記載するものとする。
8 不正登記防止申出の日から3月以内に申出に係る登記の申請があったときは,速やかに,申出をした者にその旨を適宜の方法で通知するものとする。本人確認の調査を完了したときも,同様とする。
9 登記官は,不正登記防止申出に係る登記を完了したときは,第2項の申出書を不正登記防止申出書類つづり込み帳から除却し,申請書(電子申請にあっては,電子申請管理用紙)と共に保管するものとする。この場合には,不正登記防止申出書類つづり込み帳の目録に,登記を完了した旨及び除却の年月日を記載するものとする。
2 不正登記防止申出の取扱い
(1)登記官の本人確認調査の契機とするため,不正登記防止申出の取扱いが定められた(準則第35条)。申出を受ける場合は,申出人に,当該申出があったことのみにより申出に係る登記の申請を却下するものではないこと等不正登記防止申出の取扱いの趣旨を十分に説明することを要する。
(2)不正登記防止申出があった場合には,当該申出人が申出に係る登記の登記名義人本人であることのほか,当該申出人が申出をするに至った経緯及び申出が必要となった理由に対応する措置を採っていることを確認しなければならないとされた(準則第35条第4項)。
この措置とは,印章又は印鑑証明書の盗難を理由とする場合には警察等の捜査機関に被害届を提出したこと,第三者が不正に印鑑証明書の交付を受けたことを理由とする場合には交付をした市町村長に当該印鑑証明書を無効とする手続を依頼したこと,本人の知らない間に当該不動産の取引がされている等の情報を得たことによる場合には警察等の捜査機関又は関係機関への防犯の相談又は告発等がこれに当たる。
申出の内容が緊急を要するものである場合には,あらかじめこれらの措置を採っていないときであっても,申出を受け付けて差し支えない。この場合には,直ちに,当該措置を採ることを求めるものとする。