青少年保護育成条例(淫行条例)、児童買春禁止法について教えて下さい

刑事|淫行条例|児童買春禁止法

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参考条文

質問:

法律が改正されたということですが、青少年保護育成条例(淫行条例)、児童買春禁止法について教えて下さい。

回答:

1 多くの都道府県で制定されている淫行条例は18歳未満の児童に対する「みだらな性行為」や「せいせつな行為」を取り締まるものでしたが、平成11年11月からは児童買春・児童ポルノ禁止法が施行されています。意外に思われるかもしれませんが、この両規範の射程範囲の多くは重なっており処罰範囲も概ね変わらないと言って良いでしょう。

2 淫行条例・児童買春禁止法に関する関連事例集参照。

解説:

1、平成11年11月1日に児童買春禁止法が施行されるまでは、児童買春行為は基本的に淫行条例で処罰されていました。

2、神奈川県の青少年保護育成条例を引用します。ほとんどの都道府県で同様の条例が制定されています。

第4条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 青少年 小学校就学の始期から満18歳に達するまでの者(婚姻により成年に達したものとみなされる者を除く。)をいう。

第19条 何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。

2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。

3 第1項に規定する「みだらな性行為」とは、健全な常識を有する一般社会人からみて、結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交をいい、同項に規定する「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激し、又は興奮させ、かつ、健全な常識を有する一般社会人に対し、性的しゆう恥けん悪の情をおこさせる行為をいう。

第37条 第19条第1項の規定に違反した者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

2 次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

(1) 第19条第2項の規定に違反した者

条例で禁じられていたのは「みだらな性行為」でしたが、児童に金銭を渡して買春する行為は「みだらな性行為」と認定されることが多く、事実上、児童買春が禁止され摘発・起訴されていたのです。

3、なお、上記「淫行」として処罰の対象となるのは、性行為やわいせつな行為の全てではなく、金銭の授受を伴うなど真摯な交際と言えないものに限られます。

従いまして、少し複雑になるのですが、長年の交際で両家公認で婚約者の関係にあるなど、真摯な交際であれば、金銭の授受を伴っていても違法性を帯びない可能性も一応はあると言えます。

4、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律が平成11年11月1日に施行されてからは、この法律の条文にあてはまる買春行為についてはこの法律のみが適用され、そうでないものについてのみ淫行条例が適用されることになりました(児童買春禁止法附則第2条)。以下法律を引用します。

従いまして、児童買春禁止法施行後に淫行条例が適用され得るのは、金銭の授受や約束を伴わずに、18歳未満の児童にたいして「みだらな性行為」や「わいせつな行為」をした場合に限られることになります。例えば、恋愛感情が無いのにあるように装って騙してわいせつな行為を行う場合などが想定されるところです。

第2条 この法律において「児童」とは、18歳に満たない者をいう。

2 この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいう。

1号 児童

2号 児童に対する性交等の周旋をした者

3号 児童の保護者(親権を行う者、後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)又は児童をその支配下に置いている者

第4条 児童買春をした者は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

附 則 第2条 地方公共団体の条例の規定で、この法律で規制する行為を処罰する旨を定めているものの当該行為に係る部分については、この法律の施行と同時に、その効力を失うものとする。

2 前項の規定により条例の規定がその効力を失う場合において、当該地方公共団体が条例で別段の定めをしないときは、その失効前にした違反行為の処罰については、その失効後も、なお従前の例による。

5、児童買春禁止法と、成人を対象とする売春防止法の違いは、①売春防止法では買春する側は処罰されないが、児童買春禁止法の場合は買春をする側が処罰される、②売春防止法では性交をしないと処罰されないが、児童買春禁止法では性交をしなくても性的好奇心を満たす目的で性器に触れただけで既遂罪が成立する、という点になります。

6、なお、淫行条例違反や児童売春禁止法違反で逮捕された場合は、18才未満の相手方との示談を成立させ検察官と交渉する方法もありますが、これら罰則規定には社会的法益に対する処罰規定(社会秩序違反)という側面もありますので、和解できても不起訴処分には必ずしも直結しません。もちろん重要な情状資料となりますので、事件を反省しているということであれば、女児の親御さんに謝罪して宥恕を得ることは必要な努力になると言えます。

以上

関連事例集

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※参照条文

第二章 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰等

(児童買春)

第四条 児童買春をした者は、五年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。

(児童買春周旋)

第五条 児童買春の周旋をした者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

2 児童買春の周旋をすることを業とした者は、七年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する。

(児童買春勧誘)

第六条 児童買春の周旋をする目的で、人に児童買春をするように勧誘した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

2 前項の目的で、人に児童買春をするように勧誘することを業とした者は、七年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する。

(児童ポルノ所持、提供等)

第七条 自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。自己の性的好奇心を満たす目的で、第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管した者(自己の意思に基づいて保管するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)も、同様とする。

2 児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。

3 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。

4 前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

5 前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

6 児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。

7 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。

8 第六項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。

(児童買春等目的人身売買等)

第八条 児童を児童買春における性交等の相手方とさせ又は第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を描写して児童ポルノを製造する目的で、当該児童を売買した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。

2 前項の目的で、外国に居住する児童で略取され、誘拐され、又は売買されたものをその居住国外に移送した日本国民は、二年以上の有期懲役に処する。

3 前二項の罪の未遂は、罰する。

(児童の年齢の知情)

第九条 児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、第五条、第六条、第七条第二項から第八項まで及び前条の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失がないときは、この限りでない。

(国民の国外犯)

第十条 第四条から第六条まで、第七条第一項から第七項まで並びに第八条第一項及び第三項(同条第一項に係る部分に限る。)の罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三条の例に従う。

(両罰規定)

第十一条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第五条、第六条又は第七条第二項から第八項までの罪を犯したときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

(捜査及び公判における配慮等)

第十二条 第四条から第八条までの罪に係る事件の捜査及び公判に職務上関係のある者(次項において「職務関係者」という。)は、その職務を行うに当たり、児童の人権及び特性に配慮するとともに、その名誉及び尊厳を害しないよう注意しなければならない。

2 国及び地方公共団体は、職務関係者に対し、児童の人権、特性等に関する理解を深めるための訓練及び啓発を行うよう努めるものとする。

(記事等の掲載等の禁止)

第十三条 第四条から第八条までの罪に係る事件に係る児童については、その氏名、年齢、職業、就学する学校の名称、住居、容貌ぼう等により当該児童が当該事件に係る者であることを推知することができるような記事若しくは写真又は放送番組を、新聞紙その他の出版物に掲載し、又は放送してはならない。

(教育、啓発及び調査研究)

第十四条 国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの所持、提供等の行為が児童の心身の成長に重大な影響を与えるものであることに鑑み、これらの行為を未然に防止することができるよう、児童の権利に関する国民の理解を深めるための教育及び啓発に努めるものとする。

2 国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの所持、提供等の行為の防止に資する調査研究の推進に努めるものとする。