新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース 2、もし貸主が協力してくれない場合には、自ら貸主と上階の住人を相手に調停を申し立てるか訴訟を提起することとなります。 3、なお、ステレオや楽器等の音量が異常に大きい場合には、最寄りの派出所に出向いて、そこにいる警察官に相談して、警察官によって止めさせる方法も考えられます。警察官が止めさせようとしているにもかかわらず、それを無視した場合には処罰されますので(軽犯罪法1条14号)、一定の効果はあると思います。 4、では、引っ越すことになった場合、引っ越し費用は誰が負担するべきなのでしょうか。これについても、受忍限度を超えるかどうかによって決まります。受忍限度を超える騒音によって、引っ越しを強いられた場合には、引っ越しにかかる費用は損害となりますから、その騒音を出した相手に対して損害賠償として請求することが可能となります。その場合、直接上階の住人に請求するか、応じない場合には内容証明郵便で請求するのが適切かと思われます。
No.150、2004/3/26 13:41
[民事・不法行為]
質問:私は現在、賃貸アパートで生活しているのですが、上階の住民の騒音で夜も眠れません。何か法律的に改善させるような方法はないでしょうか。仮に、引っ越すことになった場合、引越し費用は誰が負担することになるのでしょうか。
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回答:
1、まずは、大家さんなどのアパートの貸主に事情を説明し、貸主に静かにするよう注意してもらうことになります。また、上階の床がフローリングである場合などは、じゅうたんを敷くなど、防音措置をとるよう働きかけてもらうことになります。それでも改善されない場合には、貸主に改善を勧告する内容証明郵便を出してもらうと良いと思います。それでもなお改善されなければ、貸主に調停を申し立てるか、契約解除の訴訟を提起するよう働きかけることとなります。
(1)調停を申し立てることによって、上階の住人に自分が迷惑を被っていることを理解させることが可能になりますし、もう二度と騒音をたてないと約束させることが可能になります。
(2)ただ、調停は話し合いの場にすぎないので、相手が調停に出席するとは限りませんし、話し合いがつかない場合も考えられます。その場合には、訴訟を提起することとなります。
訴訟を起こす場合には以下の点に注意が必要です。
ア すなわち、日常生活上、音を出すことは避けられませんし、全てを「騒音」であるとして、止めさせたり、損害賠償を請求するこ とは出来ません。そこで、受忍限度、すなわち、客観的に社会生活上我慢すべき限界を超えた場合には、騒音行為の差し止め請求や損害賠償請求が可能となります。受忍限度かどうかの判断基準としては、騒音の程度が普通人の感覚で相当な騒音といえるか、騒音の頻度や時間帯、継続的に発生するようなものなのか、被害の内容及び程度、騒音防止対策などの被害回避の努力がなされているかなどの諸般の事情を総合的に考慮することとなります。受忍限度を超えたとして差止請求や損害賠償をする場合、それらは民法上の不法行為(民法709条以下)に基づき、請求することとなります。
イ 本件の場合も、受忍限度を超えるものであれば、差止請求、すなわち、騒音行為を止めるよう求めることが可能となります。夜間であれば、音を出すにしても他の住人に配慮しなければならないのは当然です。昼間であれば迷惑に聞こえない音でも、夜間多くの人が寝静まる時間帯であれば、迷惑に感じることはありえます。例えば、テレビやステレオの音は、昼間は大き目の音量でも迷惑はかからないとしても、夜間は寝静まって音が響くため、多少音量を小さくする努力は必要となるでしょう。にもかかわらず、大きい音量でテレビを観たりステレオで音楽を聴いていて、他の住人が安眠できないほどで、かつそれが度々あったとすれば、受忍限度を超えるといえると思います。話し声についても、同じことがいえます。
ウ 判例としては以下のものがあります。
@1階のスナックのカラオケが連日2時ころまで及ぶため、その階上居住者が睡眠を妨げられ身体の変調をきたし、勉強ができないとして、午後10時以降のカラオケ装置の使用禁止を求めた事案で、受忍限度を超えるとして、請求が認められました(横浜地決昭和56年2月18日)。
A マンションの床を、じゅうたんからフローリングに変えたことによって騒音被害が4倍に増えたと認定した上で、受忍限度を超えるとして損害賠償の支払いを命じた判決もあります(東京地八王子支判平成8年7月30日)。
Bただし、Aと同様、マンションの床をフローリングに変えたことによって生じた騒音について、受忍限度の範囲内であるとして、床の使用禁止も損害賠償も認められなかった事案もあります(東京地判平成3年11月12日)。