新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.155、2004/4/1 14:35 https://www.shinginza.com/qa-kojinsaisei.htm

[債務整理・再生]
質問:個人民事再生手続きを検討しているのですが、(1)弁護士に依頼しなくても自分で申立てることはできるのでしょうか。(2)仮に、再生計画案が認可されて、支払いができなくなった場合、どうなるのでしょうか。

回答:
(1)東京地裁の統計によれば、平成13年4月〜12月の申立件数507件に対し、代理人による申立て450件(88.8%)、司法書士関与34件(6.7%)、純然たる本人申立23件(4.5%)平成14年1月〜12月の申立件数1000件に対し、代理人による申立て940件(94%)、司法書士関与51件(5.1%)、本人申立て9件(1.1%)となっています。
 弁護士に依頼せずに申し立てることは、法律上は可能ですし、上記のように、実際に行っている方もいますので、全く不可能とは言えないでしょう。しかしながら、最大で債務の8割カットの恩恵を受けられるとはいえ、個人再生は手続的にかなり複雑であり、本人申立ての場合、必ずしも意に添う結論になるとは限りません。例えば、@500万円以上の債務の場合、利息制限法に引き直すその他の方法で、総債務額がかなり圧縮できる場合、本人の方が、債権者に取引経過を開示させて引き直し計算をするのはかなり大変ですし、債権者一覧表を巡って、異議留保や異議申述、評価申立など法律的な戦略・駆け引きが要求される場面もあります。また、これらの点により、月々弁済額が1〜2万円違ってくる場合もあります。A住宅ローン特約を利用する場合には、銀行との事前協議が必要です。Bに、個人再生にも、給与所得者再生、小規模個人再生と2種類あり、それぞれの長所、短所を熟知した上で、精算価値原則に従った再生計画案を作成しなければならず、例えばオーバーローンではない不動産を所有している方などの場合、再生計画案が作成できるか、再生委員より、破産の選択を迫られる場面があるかもしれませんので、方向性についても十分な配慮が必要になります。また、C再生計画案の作成についても、3年間で均等額支払う計画案を作るのは、思った以上に大変ではあります。
 以上のことから、弁護士に依頼されなくとも、最低限、司法書士には相談し、法律的なアドバイスを受けた方がよいでしょう。
(2)再生計画案に従って弁済をする期間は原則3年となっていますが、今回のこの個人再生法が施行されたのは、平成13年4月ですので、支払いができなくなった方の統計は見あたりませんし、運用も定まっていない状況ですが、法律上は、次のように記載されています。@再生計画の変更について、「やむえない事由で再生計画を遂行することが著しく困難となったとき」は、2年を限度として「期間を延長する」ことができます(234条1項、244条)。A再生債務者が「その責めに帰することができない事由」によって「再生計画を遂行することがきわめて困難」となったときには、再生債務者の申立で免責を得られることもあり(ハードシップ免責 235条、244条)、この場合には、再生債務者は、残債務についての支払を免れることができます。但し、再生計画で変更された後の基準債権等の4分の3以上の弁済を終えていること、再生計画を変更することがきわめて困難等の要件を満たし、再生債権者の意見聴取の手続きもあります(235条2項、244条)ので、実際にどの程度認められるかは、現在では未知数です。
 以上のように、再生計画に基づく支払が困難になったときは、再生計画の変更やハードシップ免責の制度を利用することになりますが、再生計画の変更では債務の減額をすることができず、また、ハードシップ免責は要件が厳格すぎるデメリットもありますので、再生手続きを再度申し立てるという方法もあります(190条)。


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