新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース 参考判例
No.159、2004/4/22 14:45
[民事・契約]
質問:一軒家を買ったところ、近所の噂で売主の親族が5年前に家の中で首吊り自殺をしていたことを知りました。知った以上、恐ろしくて住み続けることはできません。契約の時、不動産屋からも売り主からも何の説明もありませんでした。今から解約して、支払った金員を返してもらうことはできないでしょうか。
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回答:
1、売主に対して,民法570条による瑕疵担保責任に基づく解除の主張をしていくことが考えられます。民法570条によれば,売買の目的物に隠れた瑕疵があるときは,買主は,解除・損害賠償請求をすることができると規定されています。この点,瑕疵とは,その物が通常保有する性質を欠いていることを言い,一般に,建物は継続的に生活する場ですから,自殺という建物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景を原因とする心理的欠陥もそれに該当すると考えられます。
2、但し,解除まで認められるためには,契約の目的を達成することが不可能であると言える程の重大な瑕疵であることが必要です。具体的には,居住目的で購入したのか,自殺からの年数,自殺場所,自殺場所が例えば建物内であった場合の建物の存否,自殺物件の所在場所(山間農村地である場合は認めらやすいと言えます。)等を総合的に考慮して,最終的には裁判所の判断に委ねられます。本件と類似の事案で,裁判例も多く出ています。
3、そして,買主は,自殺物件であることを知ってから1年以内に,解除・損害賠償請求をする必要がある等の制限もありますので,弁護士に相談し,訴訟提起等を検討していくのが良いでしょう。
・家族で居住のために購入したマンションで6年前に絞首自殺があったことが判明した場合において、売買契約の解除を認めた事例(横浜地裁平成元年9月7日判決)
・家族で居住のために購入した土地建物に関し、10年前に付属する物置内で服毒自殺行為がなされ、その結果病院で死亡していたことが判明した場合、売買契約の解除を認めた事例(東京地裁平成7年5月31日判決)
・購入した土地建物で約1年前に売主の親族が自殺していたことが判明した場合において、買主の損害賠償請求が認められた事例(浦和地裁川越支部平成9年8月19日判決)