新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.162、2004/5/18 18:21 https://www.shinginza.com/stoker.htm

[刑事・被害]
質問:現在,私は前の彼氏から,ストーカー被害に遭っています。彼氏とは1ヶ月前に別れたのですが,その直後より,彼氏から,「もう一度,よりを戻してほしい。」,「俺にもう一度チャンスをくれ。」などとしつこく言われていました。私としては,もう彼氏とやり直すことは考えられないのできっぱりと断っていたのですが,最近になって,彼氏からのしつこい電話はなくなったものの,深夜に無言電話が何度もかかってきたり,また,町中を歩いているときに後ろから誰かが付いてくるような気がしたりして,このままだと精神的におかしくなってしまいそうです。今までの経緯からして,彼氏の仕業だと思うのですが,このストーカー行為を止めさせることはできないでしょうか。

回答:
1、このようなストーカー行為に対する法的措置としては,刑法や近時制定された「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(「ストーカー規制法」)等による刑事上の処罰を与えることと,様々な迷惑行為に対して民事上の不法行為責任(民法709条,710条)に基づく損害賠償請求をすることが考えられます。しかし,これらは,基本的にストーカー被害に遭ったあとになってストーカーの責任を追及するものであり,現在ストーカー被害に遭っているような場合には,なるべく早く,このようなストーカー行為を止めさせる手段を施すことが第一となります。
2、そのひとつの手段として,最寄りの警察署の生活安全課に,ストーカー行為によって被害に遭っていることを相談した上で,「ストーカー規制法」に基づく「警告」(同法4条)をストーカー行為を行っている元彼氏に対して発してもらうことです。この「警告」とは,警察署長等の名前で,ストーカーに対して,「ストーカー行為を止めなさい。」と警告をするものであり,実際,かかる「警告」により約80%のストーカー行為が止んでいると報告されています。そして,仮にこの「警告」にそのストーカーが従わなかった場合には,その事実を警察に申告し,公安委員会による「禁止命令」(5条)を元彼氏に対して発してもらいます。この「禁止命令」は,「警告」よりも法的効果が大きく,この命令に違反してストーカー行為が継続された場合には,ストーカーに刑罰が科せられます(14条)。
3、もっとも,警察に対して,口頭のみでストーカー被害に遭っているということを伝えるだけでは警察がなかなか動いてくれないという現実があり,実際に警察を動かすためには,あなたがストーカー被害に遭っていることが分かる証拠を集めた上で,警察に対して提出することが必要となってきます。被害に遭っている際に,証拠を収集することは難しいかも知れませんが,さきほどの「警告」や「禁止命令」を発してもらうため,または,将来あり得る裁判のためにも,ストーカー被害を受けているという証拠が存在することが重要になってくるのです。証拠は,送られてきた電子メール,留守番電話の録音テープ,被害の様子を書いた日記など,被害の存在を伺わせるものであればとりあえずなんでも集めておき,警察等に提出を求められた場合にすぐに出せるようにしておくとよろしいでしょう。
4、次に考えられる方法として,元彼氏にストーカー行為を止めるよう求める交渉を弁護士に依頼することが考えられます。このような依頼を受けた場合,弁護士としては,元彼氏と直接交渉の場を持って,ストーカー行為を止めるように強く要求するとともに,さきほどのような「ストーカー規制法」による「警告」などの手続がスムーズに進むように証拠の収集方法等をアドバイスしたり,直接警察と交渉したりします。また,場合によっては,ストーカー行為の刑事上の処罰を求める告訴手続のアドバイスをしたり,さらには,民事上の損害賠償請求訴訟を提起して,被害者の方が金銭的な救済が受けられるように弁護活動をしたりもします。
5、質問に戻りますが,あなたは,現在,ストーカー被害に遭われており,このストーカー行為がさらにエスカレートする可能性もありますので,被害を拡大させないためにも,なるべく早く最寄りの警察署若しくは弁護士にご相談することをお勧めします。

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