新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.169、2004/6/17 11:25 https://www.shinginza.com/rikon/index.htm
[家事・夫婦]
質問:性格の不一致で離婚をすることになったのですが、慰謝料は夫の年収で計算されると聞いたことがあります。請求額について、割合が法律で定められているのでしょうか。また、慰謝料の中に財産分与も含まれるのでしょうか。
↓
回答:
1、財産分与と慰謝料請求の関係について、財産分与の法的性質を損害賠償的要素も含む包括的離婚給付として把握する見解(包括説)と損害賠償請求権とは別個のものと考える見解(限定説)とがあり、最高裁などもこれらにつき判断していた時期がありますが、現在の実務では、別個のものと考えるのが一般的です。
2、慰謝料とは、そもそも民法709条における不法行為として請求するものであり、離婚の場合には、離婚原因たる個別的有責行為による精神的損害に対する損害賠償請求権と離婚そのものによる配偶者たる地位の喪失という精神的損害に対する損害賠償請求権とがあり、前者は、相手方配偶者たる夫の有責性が必要となります。例えば、浮気、暴力、悪意の遺棄などです。これらが全くない性格の不一致ということでしたら、慰謝料の請求は棄却されるでしょう。ただ、離婚の話し合いの中で、別れてほしいと主張する配偶者が金銭的なものを相手方に支払うことによって、離婚が成立する場合があり、これを慰謝料と呼ぶ人がいるという傾向もあります。
3、慰謝料の中に財産分与が含まれるかについては、上記1のような見解もありますが、一般的には含まないと考えてよいでしょう。なぜなら、法律上は、慰謝料は民法709条、財産分与は民法768条のもので、それぞれの趣旨が異なるからです。従って、財産分与については、相手方の帰責性、有責性というものは不要であり、夫婦が婚姻中に形成してきた共有財産について、夫婦で精算分配するというのがこの財産分与の意味です。
4、慰謝料額の基準は、相手方の有責性、背信性、婚姻生活の実情、当事者の社会的地位等様々な要素で判断されますが、割合が法律で決まっているということはありません。公刊された判例によれば、100万円から1500万円まで相当な幅があり、平均は411万円となっています。また、財産分与・慰謝料含めて「解決金」として和解する例も実務では多く、週刊誌などに掲載される多額の『慰謝料』の事例も、そのようなものを含めると、実態としては正確なところはよくわからないところであります。
5、離婚に詳しく、経験が豊富な弁護士に相談してみましょう。