新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.178、2004/7/16 17:28 https://www.shinginza.com/rikon/index.htm

[民事・不法行為]
質問:
私には,結婚して10年の妻,9歳と6歳の子供がいますが,去年勤め先の社員旅行で、同じ会社の女性と意気投合し,その日のうちに肉体関係を持ってしまいました。その女性も既婚者で,私たちはいわゆるダブル不倫の関係となり,その後も定期的に二人だけで会っていました。ところが,先日,私たちの関係が彼女の夫に明るみになり,それから約1ヶ月後,その夫から謝罪と慰謝料500万円の支払いを求める内容証明郵便が送られてきました。これに対して,私はどのように対処すればいいでしょうか。

回答:
今回のケースは,俗に言う「ダブル不倫」の問題です。
1、まず,一般に夫婦は,結婚した後に,「貞操義務」(民法752条,770条1項1号)といって,お互いに夫婦以外の第三者と肉体関係を持ってはならないという義務を負うようになり,その反面,お互いに配偶者の貞操を害されない権利,すなわち「貞操権」を有することとなります。そして,夫婦の一方が,第三者と肉体関係を持ってしまうような事態,つまり不倫をしてしまうと,不倫をされた他方配偶者は,その不倫相手に対して,貞操権を侵害されたとして,一定の要件の下,慰謝料を請求することができます(民法709条,710条)。
2、以上のことは,今回のようなダブル不倫のケースでも応用して考えることができ,不倫をされた夫や妻が,それぞれ自分の配偶者の不倫相手に対して慰謝料請求をすることが可能です。今回のケースですと,一定の要件の下,その女性の夫があなたに慰謝料請求をすることとあなたの奥様がその女性に対して慰謝料請求をすることが可能となります。
3、但し,裁判でこのような慰謝料請求をすることになると,請求をする人が,不貞行為の事実の存在などを立証する必要があり,必ずしもかかる請求が認められるわけではありません。ですので実際には,請求する方の人が,そのようなリスクを回避するため,双方の話し合いで解決することもしばしばあります。特に,今回のようなダブル不倫のケースでは,二組の夫婦がいずれも離婚しないことが前提となりますが,話し合いによって,夫婦間同士で共に慰謝料請求権を放棄し,なにも金銭的なやり取りをせずに和解によって解決することもあります。
4、今回の質問に対する回答ですが,今後,その女性の夫が様々な形であなたに対して慰謝料の支払いを求めてくることが予想され,いずれにしろあなたの奥様には不倫の事実が発覚してしまう可能性が高いと思われますので,まずは,奥様に不倫の事実を打ち明けた上で,相手方との和解に向けての方策を検討した方がよろしいかと思います。もし、奥様に打ち明けない解決を取られる場合には、事実である以上は請求を認めた上での和解ということにはなりますが、金額的には、500万円という金額でそのまま応じる必要はありません。通常はせいぜい200−300万、離婚に至る場合でも200−500万ですから、減額交渉の余地は十分にあります。また、支払方法についても交渉できる場合があります。
5、解決方法としては,当事者間の話し合いによる和解,簡易裁判所での民事調停,弁護士会での仲裁,場合によっては,地方裁判所での正式裁判など様々な手段が考えられますが,今回のようなダブル不倫のケースですと,相手方と直接話し合いをしようとしても,お互いに感情的になって交渉が難航する可能性が高いと思われますので,一度,弁護士に相談された上で,相手方に対する対応を決められるのがよろしいかと思われます。

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