新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.198、2004/9/16 10:53 https://www.shinginza.com/qa-jiko.htm
[民事・不法行為]
質問:駐車場に車を停めていたら、接触事故を起こされました。相手に対して、修理代金を全額払って貰いたいのですが、応じてくれません。今後、どのようにすればいいでしょうか。
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回答:
1、駐車場での事故の場合、請求する相手方としては、(1)接触事故を起こした自動車の運転手やこの運転手の使用者と(2)駐車場の管理をしている者の二者が考えられます。通常、駐車場の管理をしている者に対しては責任追及は難しいと考えられますが、管理に落ち度があり接触事故の原因が管理上の問題にある場合は責任追及が可能です。これに対し、事故を起こした自動車の運転手に対しては運転に落ち度があると思われるので不法行為責任(民法709条)があり、修理代を請求できます。また、運転手が仕事中の場合は運転手を雇っている会社に使用者責任があるので損害賠償が可能となります(民法715条)。いずれも修理代の請求ということになります。それ以外の損害については原則として認められません。
2、そこで,相手方への請求ですが,次の方法が考えられます。
(1)まず,事故の際に運転手から弁償する旨の書類を貰っておくことが第一です。次に修理代の見積もりを取って金額を請求することとなります。請求に応じれば示談書を作成し金額を受領するのが一般的です。
(2)次に、相手方が請求に応じない場合です。その場合は、まず、内容証明郵便で返還を求めることが考えられます。内容証明郵便は,文書の内容,差出日が公的に証明されるというもので,民法153条の催告として6か月間の一時的な時効中断効が認められる以外に特別の法的効果はありませんが,相手が請求に応じない場合には法的措置に移行する旨の差出人の強い態度・意思を表明することができるという事実上の効果が期待できます。なお,内容証明郵便だけでは,文書が受取人に到達したことや,その時期の証明ができませんので,配達証明も付ける必要があります。
(3)法的手段に出る場合の手続きとしては,支払督促,民事調停,通常の訴訟が考えられます。
ア 支払督促は,正式な裁判手続をせずに,書面審査だけで裁判所から債務者に対して金銭などの支払を命じる督促状(支払督促)を送ってもらえる制度で,債務者がこの督促状を放置して2週間が経過すれば、債権者は債務者の財産に強制執行するための仮執行宣言の申立ができます。(民事訴訟法382条以下,民事執行法22条4号)。また,事実上の効果としても,債務者に対して内容証明郵便よりも多大な心理的プレッシャーを与えることができ、支払いに応じさせる可能性を高めることが期待できます。ただし,債務者が異議を申立てた場合には通常訴訟へ移行することになります。
イ 民事調停は,裁判官又は調停委員会(裁判官と一般市民の中から選ばれた2人以上の調停委員によって構成されます。)の仲介を通して,話し合いによる自主的な紛争解決をめざす手続きで、合意が成立すれば,強制執行を行うことも可能です(民事調停法,民事執行法22条7号)。通常訴訟と異なり,簡易な手続で,柔軟な解決を得られることもありますが,かならずしも合意が成立するとはかぎらないので,その場合は通常訴訟によるほかありません。
ウ 通常訴訟は,当事者の主張について,証拠によって事実を明らかにした上で,法律に従って公権的な解決を図る方法です。なお,60万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについては,少額訴訟を求めることもできますし,140万円以下の場合は,簡易裁判所の手続きもできます。