新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.220、2005/1/19 10:23 https://www.shinginza.com/qa-fudousan.htm

[民事・契約]
質問:借地権つき建物を所有しています。借地人の側から立退き料を請求することはできますか?建て替えの話がまとまりません。地代は供託にしています。

回答:
1、借地人の側から立退料を請求することは出来ません。借地権は,契約により定められた期間または借地借家法で定められている存続期間が満了すると消滅するものとされています(借地法3条参照)。しかし,建物所有を目的とする借地であり,現に土地上に建物がある場合には,期間が満了したからといって直ちに借地権が消滅するわけではありません。借地権者から更新請求があり,あるいは借地権者が存続期間満了後も土地の使用を継続している場合には,借地権設定者が「正当事由」に基づく異議を遅滞なく述べない限り法定更新(前の契約と同じ内容の契約を再び締結したものとみなされる)されることになります(借地法4条1項)。そして「正当事由」の有無は,@土地の使用を必要とする事情,A借地に関する従前の経過,B土地の利用状況,C借地権設定者が土地の明け渡しの条件として,または土地の明け渡しと引き換えに借地権者に対して財産上の給付(いわゆる立退料)をする旨の申し出をした場合におけるその申し出,を考慮して総合的に判断するものとされています(借地借家法6条参照)。なお,上記@からCは並列的な要件ではなく,@が主たる要件,AからCは従たる要件であるとされています。つまり,借地権設定者と借地権者のどちらがより当該土地を使用する必要があるか,という点が正当事由を判断する一番のポイントになり,AからCはこの要件を補うもの,というかたちになります。
2、以上からもお分かりになるかと思いますが,立退料の支払いは借地権設定者の方から,借地権者に対して,借地契約の更新拒絶ないし終了を主張する場合に,法律上要求される「正当事由」を満たすための要件の一つなのです(ただし,必須のものとは言えません)。逆に言えば,借地権者から借地契約の終了を主張された場合には借地権設定者は「正当事由」を具備する必要がない以上,立退料を支払う必要はないのです。さらに言えば,借地権設定者が借地権者に対して借地契約の更新拒絶ないし終了を主張している場合であって,かつ,借地権設定者が「正当事由」を備えていない場合には,借地権者は「借地権が継続していること」を主張できるのであって,「正当事由」を具備するための要件である「立退料」の支払いを請求できるわけではないのです。
3、「立退料」とは,あくまで借地権設定者が自己の「正当事由」を具備するために支払うものであって,借地権者から請求できるものではありません。この点,借地契約が終了し,土地を明け渡す場合には,どのような場合にも当然に立退料を受け取ることが出来ると誤解されている方も多いようですので注意が必要です。もっとも,立ち退き交渉の中で,「立退料○○円を支払ってくれるのであれば,退去する」といった話をすること自体は何ら問題ありません。あくまで,「立退料」を請求する法律上の権利はない,という意味です。ここまで「借地法」を前提に解説をしてきましたが,平成4年8月1日以降に契約がなされたものについては,「借地借家法」の適用があります。しかし,立退料の取り扱いについては,原則として借地法と同様であり,借地権者から立退料を請求することは出来ません。詳しくは、お近くの弁護士にご相談ください。

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