新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.226、2005/3/1 11:45 https://www.shinginza.com/qa-sarakin.htm
[債務整理・破産]
質問:破産法が改正されたと聞いたのですが、内容を教えてください。
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回答:
1、平成17年1月1日から、破産法が改正されました。以前の破産法は、大正11年に制定されたもので、現代のように小規模な企業や、個人の破産などを大量・迅速に処理することを念頭においていなかったものでした。そこで実務では、各裁判所が具体的な運用に当たってさまざまな工夫を凝らし、現代のニーズにこたえる破産手続きを実施してきたのです。今回の改正は、各裁判所の運用による工夫などを参考に、現状に合わせた法律に改正されたものです。
2、今回の破産法改正の目的は、破産手続きの迅速化・簡易化・合理化・実効化などを目的としています。内容的には、前述のような実務で取扱い上工夫されてきたものを大幅に採用する形になっていること、また、現在の経済取引の状況にあわせた権利関係の調整がはかられたこと、簡単に言えば、自由財産の拡充などによって、破産者の経済的再建を図りやすくしたものといえます。
3、今回の改正の主なものを以下に紹介します。
(1)手続の簡易化・柔軟化・迅速化 現在最も破産件数として多く存在するのは同時廃止(破産管財人を指定して配当をするほどの財産が存在しないと認められた場合、破産決定と同時に破産手続きを廃止するもの)ですが、債務が数億円、債権者が数百人という複雑で大規模な破産事件もあります。新法では、これらさまざまな事件を適切に処理できるよう、手続きについて複数の選択肢を考えることができるようにし、不要と思える手続き(個人は三社についての債権者集会など)については省略することも可能としています。つまり、簡単な事件には簡易な手続を取ることも可能になったということです。
(2)破産後の手続きの変更 破産申立にあたって、手続きが簡易・迅速・柔軟になったことに加えて、破産手続き開始後の取扱いについても変更がなされました。破産管財人の質問・検査権を拒否した場合の刑事罰や、破産財団に関して、公租公課・労働債権の優先順位が変更されました(破産の時点で配当するべき財産がない場合は前述の同時廃止になります)。これによって、残った財産の配当においても、全債権者がより平等に配当を受けられるようになったといえます。
(3)不要な制度の廃止 これまでの破産法には小破産という制度があり、条文上は小規模な破産はこれによるものとなっていましたが、実際には使われていませんでした。これと同じく、旧法に存在した強制和議の制度についても、実際にはほとんど利用されていなかったので、廃止されました。
4、個人債務者の権利拡大 さらに、今回の改正において、個人債務者のかたにとって最も重要と考えられるのは以下の二点です。
(1)自由財産の拡張 破産者が、生活再建の資金として、配当にまわさずに確保できる財産の範囲が拡大されました。民事執行法の定める金銭の1.5倍の金銭、具体的には、99万円の金銭を自由財産として確保できるようになりました。また、上記の拡張だけでは99万円は現金だけに限られるのですが、実際には預金(預金は、銀行に対する債権という扱いになります)や保険などの形で財産を有している人も多いことから、99万円の範囲内で、自由財産の拡張も認められる余地があります。すなわち、99万円の範囲内であれば、預金なども自由財産に含めることが認められる場合もあります。
(2)強制執行の中止(禁止) 破産という制度は、申し立てた人を破産者と認定する、という決定を出す手続きをさしており、これだけで借金が消えるわけではありません。破産に続いて、免責の決定をもらわなければ借金は消えないのです。従来は、破産手続きから、免責決定の確定までの間、債権者が給料を差し押さえる等して事故の債権の回収を図ることを防ぐことができず、せっかく破産の手続きを開始したのに給料を差し押さえられてしまうということがありました。そこで新法は、個人債務者の生活再建のために、破産手続きと同時に、債務者の財産(給料債権など)に対する強制執行を禁止(すでに手続が始まっているものも中止)できることになりました。
5、以上のように、今回の破産法改正は、多様化・大量化する破産案件・再生案件について、今まで実務上さまざまな工夫を凝らして合理的な対応を行ってきたものを具体的な法律に取り込んだということができるでしょう。