新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.242、2005/4/20 13:47 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm

[刑事・起訴前]
質問:知り合いが、有印私文書偽造違反で逮捕されました。どのような犯罪なのでしょうか。また、弁護活動についても教えてください。

回答:
1、有印私文書偽造罪とは、行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して、権利、義務若しくは事実証明に関する文書もしくは図画を偽造する犯罪です(刑法159条1項)。私文書とは、公務員ではない、一般の民間人又は団体が作成名義人となっている書類(契約書・借用書など)をいいます。文書・図画とは、文字又はこれに代わるべき記号・符号を用いて、ある程度持続すべき状態において、意思又は観念を表示したものをいいます。(象形的符号を用いたものを図画といいます。)このうち、事実証明に関する文書とは、われわれの実社会生活に交渉を有する事項を証明するに足りる文書をいいます。また、文書の偽造とは、他人の作成名義を偽り、作成権限もなく新たに文書を作成することです。つまり、文書の内容ではなく、名義を偽ることがこの犯罪の核心です。
2、法定刑は三月以上五年以下の懲役です。懲役刑だけで罰金刑はありません。逮捕された場合、処分の見通しとしては、不起訴処分か公判請求かということになります。犯行態様、自白の有無、前科の有無などによって処分が分かれると思います。
3、弁護活動としては、本件偽造行為によって生じた損害が少ないことや犯行態様が悪質でないことを主張、立証していくことになります。起訴前であれば、検察官に面談し不起訴処分を求めて交渉を行います。また、本件偽造行為によって被害を被った人がいる場合には、被害弁償など示談交渉を行います。私文書偽造罪は文書の証明手段としての信用という社会的法益を保護する犯罪ですが、実際に損害が生じていた場合、その損害への賠償をすることは処分を決める際の重要な要素となります。被害者が特にいない場合は、反省の意思を示すためにも贖罪寄付をすることをお勧めします。被害弁償のような効果があるとは必ずしもいいきれないのですが、真摯な反省をしていることを証明できます。寄附先としては、財団法人法律扶助協会に寄附を行うのが通常です。いずれにしても、事案に応じた弁護活動が必要になりますので、お早目に弁護士にご相談下さい。

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