新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース ≪少年法≫
No.244、2005/6/14 10:16 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm
[刑事・起訴前]
質問:19歳の息子が、遊ぶ金がほしさにナイフなどの凶器をつかって脅迫してお金を要求し金員をとって逮捕されました。余罪は数件あるようです。どうなるでしょうか?手続き、処分の予想を教えてください。また、このような事態に両親としてどのような態度で臨めばよいでしょうか?
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回答:
1、息子さんの行為は、強盗未遂罪にあたります(刑法243条、236条)。警察に逮捕された場合、48時間以内に検察庁に送致され、勾留の手続きがとられるのが一般的です(刑訴法204条)。勾留期間は、原則10日間、最大で20日間認められています(刑訴法208条)。その後は、成年であれば裁判所への起訴の手続きがとられますが、息子さんは19歳で20歳未満の少年ですので、少年法が適用されて、家庭裁判所に送致されることになります。
2、家庭裁判所に送致された後は、家裁調査官のもとで鑑別が行われますが、まず、裁判官により少年鑑別所において身柄を拘束された状態で観護措置をとるか、在宅で観護措置をとるかの決定がなされます(少年法17条1項参照)。判断基準としては、一般的には再非行のおそれ、自殺・自傷のおそれ、両親などからの虐待のおそれ、不良集団からの悪影響のおそれ、所在不明になるおそれなどが挙げられます。対策としては遅くともこの段階までに弁護士を付添人に選任し、裁判官との面談、意見書の作成を依頼した方がよいと思われます。
3、残念なことに少年鑑別所での観護措置の決定が出た場合は、少年鑑別所において収容されることになります。収容期間は原則2週間以内ですが、この期間は必要が認められれば更新されることもあり、実務上は4週間となる場合が数多くあります。例外的に、重大犯罪については最大8週間認められる場合もあります。(少年法17条3項・4項参照)。少年鑑別所では、家裁調査官や鑑別技官によって、少年の資質や更生の可能性について調査が行われます。ご両親も家裁調査官から呼び出しを受けて、少年の成長の過程や現在の生活態度、今後の少年に対する教育の姿勢について質問されることがあります。この時点で息子さんのためにすべきこととしては、調査官に対して、保護者としての監督不行き届きを自覚し反省して、今後責任を持って息子さんを指導監督できることを示すことが挙げられます。また、被害者がいる事件の場合は、被害者との示談交渉を進めなければいけません。
4、ご両親の態度について申し上げさせて頂けるならば、少年鑑別所において息子さんと面会をして、今までのことや今後の生活などについて納得のいくまで話し合いをする必要があります。少年犯罪の原因は、いろいろなものがありますが、主としてご両親を含めた家庭全体の愛情の不足や行き違い(コミュニケーション不足)によることが多いと言われています。少年は、未成熟ではあり、19歳でもご両親の愛情を求め、注意を引きたいなどの原因で、考えられないような方向に行動を起こすことがあります。後述する審判においても、少年に対する特にご両親の態度、教育、監督の程度を問題にする場合が多いのです。すなわち、審判においては、少年を叱責するより、その一因となったご両親の態度を問題とし、少年の前でご両親の反省、自覚を促します。ご両親も真に反省することが必要です。少年に対するご両親の愛情、いたわり、自覚が、回復されたとき、そして、少年がそれを理解できたとき、少年は自ら更生への道を選択し、自力により学校、社会への復帰が可能となるわけです。少年を更生、矯正することができる一番の柱は、警察、家庭裁判所、付添い人ではなく、両親を含むご家庭です。
5、少年に対する調査が終了すると、家庭裁判所において少年審判が開かれます。少年に対する処分としては、不処分、保護観察処分、少年院送致があります。少年の要保護性や非行事実の内容によって、少年に対する処分が決められます。本件非行事実は強盗未遂事件であり、重大ですので不処分の決定は難しいと思われます。少年の反省態度、更生意欲及びその可能性、家族などの周囲の環境、被害者の被害感情、前歴の有無、余罪の有無などを総合的に考慮して、保護観察か少年院送致かいずれかの処分がなされると思われます。ただ、息子さんは19歳であり、あと少しで成年になることから、前歴がある場合、非行事実の凶悪性や余罪が多数ある場合などは少年事件としての処分ではなく、検察庁に逆送されて成年と同様の刑事裁判を受けることになる恐れもあります(少年法20条)。ご不明な点は、お近くの弁護士にご相談ください。
(観護の措置)
第十七条 家庭裁判所は、審判を行うため必要があるときは、決定をもつて、次に掲げる観護の措置をとることができる。
一 家庭裁判所調査官の観護に付すること。
二 少年鑑別所に送致すること。
2 同行された少年については、観護の措置は、遅くとも、到着のときから二十四時間以内に、これを行わなければならない。検察官又は司法警察員から勾留又は逮捕された少年の送致を受けたときも、同様である。
3 第一項第二号の措置においては、少年鑑別所に収容する期間は、二週間を超えることができない。ただし、特に継続の必要があるときは、決定をもつて、これを更新することができる。
4 前項ただし書の規定による更新は、一回を超えて行うことができない。ただし、第三条第一項第一号に掲げる少年に係る死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件でその非行事実の認定に関し証人尋問、鑑定若しくは検証を行うことを決定したもの又はこれを行つたものについて、少年を収容しなければ審判に著しい支障が生じるおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある場合には、その更新は、更に二回を限度として、行うことができる。
5 第三項ただし書の規定にかかわらず、検察官から再び送致を受けた事件が先に第一項第二号の措置がとられ、又は勾留状が発せられた事件であるときは、収容の期間は、これを更新することができない。
6 裁判官が第四十三条第一項の請求により、第一項第一号の措置をとつた場合において、事件が家庭裁判所に送致されたときは、その措置は、これを第一項第一号の措置とみなす。
7 裁判官が第四十三条第一項の請求により第一項第二号の措置をとつた場合において、事件が家庭裁判所に送致されたときは、その措置は、これを第一項第二号の措置とみなす。この場合には、第三項の期間は、家庭裁判所が事件の送致を受けた日から、これを起算する。
8 観護の措置は、決定をもつて、これを取り消し、又は変更することができる。
9 第一項第二号の措置については、収容の期間は、通じて八週間を超えることができない。ただし、その収容の期間が通じて四週間を超えることとなる決定を行うときは、第四項ただし書に規定する事由がなければならない。
10 裁判長は、急速を要する場合には、第一項及び第八項の処分をし、又は合議体の構成員にこれをさせることができる。
(特別抗告)
第十七条の三 第三十五条第一項の規定は、前条第三項の決定について準用する。この場合において、第三十五条第一項中「二週間」とあるのは、「五日」と読み替えるものとする。
2 前条第四項及び第三十二条の二の規定は、前項の規定による抗告があつた場合について準用する。
(少年鑑別所送致の場合の仮収容)
第十七条の四 家庭裁判所は、第十七条第一項第二号の措置をとつた場合において、直ちに少年鑑別所に収容することが著しく困難であると認める事情があるときは、決定をもつて、少年を仮に最寄りの少年院又は拘置監(監獄法 (明治四十一年法律第二十八号)第一条第三項 の規定により代用されるものを含まない。)の特に区別した場所に収容することができる。ただし、その期間は、収容した時から七十二時間を超えることができない。
2 裁判長は、急速を要する場合には、前項の処分をし、又は合議体の構成員にこれをさせることができる。
3 第一項の規定による収容の期間は、これを第十七条第一項第二号の措置により少年鑑別所に収容した期間とみなし、同条第三項の期間は、少年院又は拘置監に収容した日から、これを起算する。
4 裁判官が第四十三条第一項の請求のあつた事件につき、第一項の収容をした場合において、事件が家庭裁判所に送致されたときは、その収容は、これを第一項の規定による収容とみなす。