少年による強盗未遂事件
刑事|起訴前| 少年法|強盗未遂罪
目次
質問:
19歳の息子が、遊ぶ金がほしさにナイフなどの凶器をつかって脅迫してお金を要求し金員をとって逮捕されました。余罪は数件あるようです。どうなるでしょうか?
手続き、処分の予想を教えてください。また、このような事態に両親としてどのような態度で臨めばよいでしょうか?
回答:
1、息子さんの行為は、強盗未遂罪にあたります(刑法243条、236条)。警察に逮捕された場合、48時間以内に検察庁に送致され、勾留の手続きがとられるのが一般的です(刑訴法204条)。勾留期間は、原則10日間、最大で20日間認められています(刑訴法208条)。その後は、成年であれば裁判所への起訴の手続きがとられますが、息子さんは19歳で20歳未満の少年ですので、少年法が適用されて、家庭裁判所に送致されることになります。
2、家庭裁判所に送致された後は、家裁調査官のもとで鑑別が行われますが、まず、裁判官により少年鑑別所において身柄を拘束された状態で観護措置をとるか、在宅で観護措置をとるかの決定がなされます(少年法17条1項参照)。判断基準としては、一般的には再非行のおそれ、自殺・自傷のおそれ、両親などからの虐待のおそれ、不良集団からの悪影響のおそれ、所在不明になるおそれなどが挙げられます。対策としては遅くともこの段階までに弁護士を付添人に選任し、裁判官との面談、意見書の作成を依頼した方がよいと思われます。
3、残念なことに少年鑑別所での観護措置の決定が出た場合は、少年鑑別所において収容されることになります。収容期間は原則2週間以内ですが、この期間は必要が認められれば更新されることもあり、実務上は4週間となる場合が数多くあります。例外的に、重大犯罪については最大8週間認められる場合もあります。(少年法17条3項・4項参照)。少年鑑別所では、家裁調査官や鑑別技官によって、少年の資質や更生の可能性について調査が行われます。ご両親も家裁調査官から呼び出しを受けて、少年の成長の過程や現在の生活態度、今後の少年に対する教育の姿勢について質問されることがあります。この時点で息子さんのためにすべきこととしては、調査官に対して、保護者としての監督不行き届きを自覚し反省して、今後責任を持って息子さんを指導監督できることを示すことが挙げられます。また、被害者がいる事件の場合は、被害者との示談交渉を進めなければいけません。
4、ご両親の態度について申し上げさせて頂けるならば、少年鑑別所において息子さんと面会をして、今までのことや今後の生活などについて納得のいくまで話し合いをする必要があります。少年犯罪の原因は、いろいろなものがありますが、主としてご両親を含めた家庭全体の愛情の不足や行き違い(コミュニケーション不足)によることが多いと言われています。少年は、未成熟ではあり、19歳でもご両親の愛情を求め、注意を引きたいなどの原因で、考えられないような方向に行動を起こすことがあります。後述する審判においても、少年に対する特にご両親の態度、教育、監督の程度を問題にする場合が多いのです。すなわち、審判においては、少年を叱責するより、その一因となったご両親の態度を問題とし、少年の前でご両親の反省、自覚を促します。ご両親も真に反省することが必要です。少年に対するご両親の愛情、いたわり、自覚が、回復されたとき、そして、少年がそれを理解できたとき、少年は自ら更生への道を選択し、自力により学校、社会への復帰が可能となるわけです。少年を更生、矯正することができる一番の柱は、警察、家庭裁判所、付添い人ではなく、両親を含むご家庭です。
5、少年に対する調査が終了すると、家庭裁判所において少年審判が開かれます。少年に対する処分としては、不処分、保護観察処分、少年院送致があります。少年の要保護性や非行事実の内容によって、少年に対する処分が決められます。本件非行事実は強盗未遂事件であり、重大ですので不処分の決定は難しいと思われます。少年の反省態度、更生意欲及びその可能性、家族などの周囲の環境、被害者の被害感情、前歴の有無、余罪の有無などを総合的に考慮して、保護観察か少年院送致かいずれかの処分がなされると思われます。ただ、息子さんは19歳であり、あと少しで成年になることから、前歴がある場合、非行事実の凶悪性や余罪が多数ある場合などは少年事件としての処分ではなく、検察庁に逆送されて成年と同様の刑事裁判を受けることになる恐れもあります(少年法20条)。ご不明な点は、お近くの弁護士にご相談ください。
6、少年による強盗未遂に関する関連事例集参照。