新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.250、2005/4/21 15:49 https://www.shinginza.com/qa-sarakin.htm

[債務整理・破産]
質問:法人は、支払いが全く不可能でなくても、貸借対照表上債務超過になったら破産することができるのですか。

回答:
1、破産宣告をするために必要な財産状態の悪化の事由を破産原因といいます。自然人、法人共通の破産原因として「支払不能」が規定されていますが(破産法15条1項)、さらに合名会社、合資会社を除く法人(及び相続財産)については、債務超過も破産原因とされています(破産法16条)。
2、支払不能とは、債務者が、即時に弁済すべき債務(弁済期が到来している債務)を全般的に、また今後も引き続いて弁済できない(一時的な資金不足は含まない)と認められる客観的な状態のことをいいます。支払不能かどうかは、財産状態だけでは判断されず、債務者の信用や労力を総合して判断することになります。債務者が現に債務を完済するに足る財産を持っていないとしても、信用や労力によって資金を調達することができ、危機を切り抜けられる場合には支払不能とはなりません。
3、債務超過とは、債務者が、その債務につき、その財産を以て完済する事ができない状態をいいます。法人の場合には、主として財産が弁済能力の基礎となることから、支払不能でなくても、客観的財産状態だけに着目して、破産宣告を出す必要がある場合も生じてくることから、この要件が規定されています。
4、もっとも、ここにいう破産法上の債務超過は、企業会計上の貸借対照表における、負債の部が資産の部を超過していることとは異なります。負債の部には、純然たる債務とは異なるものも(例えば引当金など)も計上されていますし、資産の部に計上された財産評価の点についても、返済のための、換価の可能性を中心に評価されますので、会計上の評価とは必ずしも一致しません。このいわば処分価値の評価についての証明は、それほど簡単なことではありませんから、(支払不能に至らない段階で)債務超過のみで破産を申し立てるケースは、必ずしも多くありません。
5、実務上は、むしろ、小規模経営などの場合、債務超過のみならず支払不能という、明らかに限界を超えてしまった状態で弁護士に相談し、破産申立に至るケースの方が多いかもしれません。会社を債務超過に至る状況から救う方法は、破産だけとは限りません。早期の段階であれば、信用や労力を駆使しつつ、事業継続を前提とした手続も検討の余地がありますので、お早めに弁護士に相談することをお勧めいたします。

≪破産法≫
第十五条  債務者が支払不能にあるときは、裁判所は、第三十条第一項の規定に基づき、申立てにより、決定で、破産手続を開始する。
第十六条  債務者が法人である場合に関する前条第一項の規定の適用については、同項中「支払不能」とあるのは、「支払不能又は債務超過(債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態をいう。)」とする。
第十六条2 前項の規定は、存立中の合名会社及び合資会社には、適用しない。

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