新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.262、2005/6/17 17:21 https://www.shinginza.com/syouhisya.htm
[民事・消費者]
質問:先月,英会話スクールに通い始めたのですが,急に転勤になってしまい解約をしたいと思っています。このような場合,英会話スクールとの契約を解約することはできるのでしょうか。また,入会時に,入会金やレッスンのチケット分の費用をまとめて支払っているのですが,解約した場合,返ってくるのでしょうか。
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回答:
1、一度締結した契約を途中で止める方法としては,様々な方法が考えられますが,今回は,英会話スクールに関するご質問ですので,特定商取引に関する法律(特定商取引法)上の「特定継続的役務提供」に焦点を絞ってご説明致します。
2、まず,特定継続的役務について,その定義は特定商取引法41条2項に規定があり(定義については長文に及ぶためここでは記載は致しません。)現行法上,いわゆるエステティックサロン,語学教室,家庭教師,学習塾,パソコン教室,結婚相手紹介サービスの6種類がこれに指定されています。そして,特定継続的役務提供といえるためには,政令で定められた以上の期間及び対価であることが必要です(同法41条1項)。具体的には,英会話スクールのような語学教室ですと,2か月以上の期間で,その対価が5万円を超えるものがこれに当たります。そして,ここでいう対価とは,入学金,受講料,教材費,関連商品などの費用を含んだ金額になります。
3、このような特定継続的役務提供に該当する契約の場合,特定商取引法により,様々な規制を受けます。ここでは,今回のご質問と関連性があると思われるクーリング・オフ及び中途解約を中心に,その概要をご説明致します。まず,消費者がこれらの特定継続的役務提供を内容とする契約を事業者とした場合,消費者が法定の契約書面を受け取ってから8日間以内であれば,書面により契約の解除を行い(クーリング・オフ),支払った費用の返還を求めることができます(法48条1項)。そして,付随して契約の際に購入した関連商品についてもそれを返却して(返却の際の費用は,事業者が負担することになっています。)代金の返還請求をすることができます。但し,一定の消耗品で既に使ってしまっているものについてはかかる請求ができないこともあります(法48条2項但書)。次に,このクーリング・オフ期間を経過したあとにおいても,消費者はその契約を将来に向かって解除(中途解約)することができるとされています(法49条1条)。もっとも,クーリング・オフの場合と異なり,事業者は,法律の定める範囲内の損害賠償を消費者に請求することが認められています。なお,中途解約の場合も,関連商品販売に関する契約をも含めて解除でき,法律に定める一定の金額の返還請求が可能です。
4、以上を前提にご質問に関して検討致しますと,まだクーリング・オフ期間が過ぎていない場合には,原則として,英会話スクールに対して,書面で(内容証明郵便が望ましいです。),契約の解約及び支払済みの入学金等の返還を求めることができます。一方,クーリング・オフ期間が過ぎてしまっている場合にも,原則として,中途解約が可能ですので,英会話スクールに対し,中途解約及び支払済みの入学金等の返還を求める事ができます。そして,入学の際に購入したテキスト代などに関しても,法の定める範囲内で、その支払代金の返還を求めることが可能です。ただし,これらの解除や支払金の返還請求が法律上可能であるかにつきましては,特定商取引法によって条件が細かく定められていますので,事前に,弁護士等の専門家にご相談されるのがよろしいかと思われます。