新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.263、2005/6/17 17:47 https://www.shinginza.com/qa-sarakin.htm
[債務整理]
質問:10年以上前に大手消費者金融業者から借入を行って以来,現在まで取引が続いていますが,一向に債務額が減少しません。借入期間が長い場合,弁護士に依頼すると消費者金融業者からお金が返ってくると聞いたのですが,本当でしょうか。
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回答:
1、消費者金融業者からの借入を行っているとのことですが,一般に,消費者金融業者は,利息制限法1条1項による上限(元本が10万円未満の場合→年20%。元本が10万円以上100万円未満の場合→年18%。元本が100万円以上の場合→年15%。)以上の利息を取得しています。したがって,弁護士に依頼することで,消費者金融業者からこれまでの取引の経過を開示させた上,改めて利息制限法に則った引き直し計算をすることで,これまで消費者金融業者から請求を受けていた金額ではなく,適正な債務額を基準とした和解をすることができます(任意整理)。
2、特に,消費者金融業者との取引期間が長い場合には,それだけ余分な利息を払っていたことになるため,上記の引き直し計算により,大幅に債務額が減少する可能性が高く,元本以上の返済を行っている場合には,差額分(過払い金)を業者から返してもらうこともできます。
3、もっとも,消費者金融業者によっては,任意での過払い金返還には消極的であったり,返還するとしても一部の返還にしか応じなかったりすることもあり,そのような場合には,訴訟提起をせざるをえないことになります(過払い金返還訴訟)。
4、そして,一般的には,取引期間が長ければ長いほど,引き直し計算による減額の幅が大きく,また,過払い金が発生する場合には,その金額が大きくなるため,消費者金融業者は,過去の取引履歴を出すことを嫌う傾向にあり,現に,消費者金融業者の多くは,過去10年間以前の取引履歴を開示しません。したがって,過払い金返還訴訟を提起するとしても,全ての取引経過が開示されていない以上,正確な過払い金の額が把握できないことがあるのです。
5、このような場合の対処法の一つとして,「仮計算」による取引履歴の再現があります。「仮計算」とは,消費者金融業者からの開示が行われなかった期間については,債務者自身の記憶に基いて取引経過を再現し,その上で取引開示時からの引き直し計算を行うものです。もっとも、この仮計算は、全ての数字が返済の都度発行されていた明細書等の証拠書類に基づくわけではないので、厳密には、裁判所がどの範囲まで証拠として扱ってくれるか、不確定な面もあるといわざるを得ません。そこで、債務者から依頼を受けた弁護士は、依頼者の記憶を支えるために,残存する契約書や入金伝票等を用いたり,依頼者の生活史と関連付けたりして(例えば,「子供が入学した○○年春に,入学金に充てるため○○円の借入を行った」など)記憶喚起を図ったりして、仮計算の正確性、信用性を高めます。一般に,長期間の借入を行っている債務者は,毎月の返済期日が定められており,返済額も毎月均等返済額であることが多いため,返済日と返済額は容易に確定することができます。また,借入限度枠一杯で,頻繁に借入と返済を繰り返している債務者の場合は,開示された直近数年間程度の取引を参考にして,過去の取引を再現することが可能です。なお,このように完成した取引経過について,最後に消費者金融業者の約定利率で検算し,残債務が消費者金融業者の主張していた額に近ければ,再現した取引履歴の信憑性が高いと主張することができます。
6、以上のような方法で過払い金返還訴訟を提起すると,消費者金融業者も当初は開示しなかった分も含めて取引経過を全て開示してくることが多く,判決や,債務者にとって有利な内容での裁判上の和解を得ることが可能になります。諦めずに、お近くの法律事務所にご相談下さい。