新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.264、2005/6/17 17:51 https://www.shinginza.com/qa-fudousan.htm
[民事・登記]
質問:近時の根抵当権に関する法改正で,根抵当権者から元本確定請求をすることができるようになったと聞いたのですが,その概要について教えて下さい。
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回答:
1、ご質問のとおり,近時,担保物件に関する民法の法改正(平成16年4月1日施行)があり,根抵当権に関し,これまで一般法上は認められていなかった根抵当権者からの元本確定請求が認められるようになりました。
2、もともと,根抵当権の元本確定は,確定以後に生じた債権が被担保債権に含まれなくなるという意味において,根抵当権者にとっては不利益だけを与える制度と考えられていたのですが,近時における不良債権処理などの場面において,債権を担保付でなければ譲受人が譲り受けてくれないケースが多く発生しており,かつ,元本確定前だと根抵当権が債権譲渡に付随して移転しないことから(民法398条の7第1項),債権の譲渡人である根抵当権者が債権譲渡を円滑に行うために,自ら元本を確定させることを法的に認める必要性が高まっていたことから,今回の改正で,一定の条件の下,かかる根抵当権者からの元本確定請求が認められました。
3、このような根抵当権者からの元本確定請求は,当事者間で予め確定期日が定められなかった場合のみ認められ,定めがある場合には,かかる請求はできません(民法398条の19第3項)。
4、次に,根抵当権設定者からの元本確定請求の場合は,根抵当権設定から3年間経過した後でないと認められないとされているところ,根抵当権者からの請求の場合には,かかる制約はなく,さらに,確定する時期に関しても,根抵当権設定者からの請求の場合ですと請求から2週間後となっているところ,根抵当権者からの請求の場合ですと請求時に確定するとされています(民法398条の19第1項及び第2項)。
5、また,根抵当権の確定を前提とした登記手続を行う際には,これまで,根抵当権者が行った競売申立による差押登記など登記簿上で確定事由が確認できる場合を除き,根抵当権設定者と共同申請をしなくてはならないとされていましたが(平成10年にこれに関する時限立法がありましたが,適用範囲が限られていました。),根抵当権者からの元本確定請求が認められたことに付随して,これからは,根抵当権者が確定請求をしたことを証する書面を添付することにより,根抵当権者が単独で確定登記の申請をすることができるようになりました(不動産登記法119条の9)。