新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース ≪参照条文≫
No.265、2005/6/17 17:56 https://www.shinginza.com/qa-jiko.htm
[民事・不法行為]
質問:夫が交通事故に遇い,死亡してしまいました。妻である私と息子が残されてしまいました。加害者の保険会社からは,慰謝料について総額1000万円の提示を受けていますが,裁判をした場合は,幾らくらい慰謝料を請求できるのですか。
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回答:
1、まず,死亡による慰謝料請求の場合,近親者は,被害者本人の慰謝料請求権を相続して請求するという法律構成,近親者固有の慰謝料を請求するという法律構成(民法711条),両者を併用するという法律構成が考えられますが,いずれの法律構成をとっても,慰謝料の総額は同じであると考えるのが,裁判実務の傾向です。
2、そして,慰謝料の額は,裁判では,裁判官の自由な心証により決せられるのが原則です。(これを,自由心証主義と言います。)但し,交通事故の紛争は多く,日本全国の裁判所に持ち込まれる多数の紛争間で不公平がないように,なるべく定額化が進められており,裁判官は,財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している,民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(通称「赤本」)を尊重することが多いのが現状です。その基準(平成17年版)によりますと,一家の支柱が死亡された場合,近親者の慰謝料は2800万円程度とされています。ただ,これは,あくまで一つの目安であって,あくまで裁判官の自由な心証により決せられるのが原則です。また,例えば,夫に交通事故の際,信号無視などの過失がありましたら,過失相殺により大幅に減額されることもあります。さらに,これは,慰謝料の総額であって,近親者の人数が多いと上がるという関係にあるわけではないと考えるのが,裁判実務の傾向です。
3,ただ,裁判をした場合,裁判で認められた損害額の1割程度を,弁護士費用として,これも損害として加害者側に請求できると考えるのが,裁判実務です。よって,死亡事案の場合のように,請求金額が多額になる場合は,裁判をした方が受け取れる金額が多くなり有利なケースも多いので,お近くの弁護士に相談されるのが良いでしょう。
民法711条「他人ノ生命ヲ害シタル者ハ被害者ノ父母,配偶者及ヒ子ニ対シテハ其財産権ヲ害セラレサリシ場合ニ於テモ損害ノ賠償ヲ為スコトヲ要ス」