新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.268、2005/6/17 18:24 https://www.shinginza.com/rikon/index.htm

[家事・夫婦]
質問:夫は、3年半単身赴任をしていました。ある日、女性ができたから離婚してほしいと言われました。仮に、裁判をして離婚することになった場合には、単身赴任の期間も別居期間として判断されてしまうのでしょうか。離婚に応じたくないのですが、どうすればいいでしょうか。更に、結婚後に住宅を購入しました(名義は相談者と夫、2分の1ずつ)。住宅ローンは夫が払っており、残高が1500万円あります。私はこの家に住み続けたいと思っているのですが、夫から、残りのローンはこれ以上払いたくないと言われました。自分はパートを辞めたばかりなので、収入がありません。どうすればいいでしょうか。

回答:
1、そもそも、「別居していたこと」そのものが離婚原因として条文に規定されているわけではありません。当該別居状態が法律上規定されている「悪意の遺棄」ないし「婚姻を継続しがたい重大な事由」に当たるかどうかを個別具体的に判断していくことになるのです。一般的に単身赴任はやむをえず別居状態になっているに過ぎず、「悪意の遺棄」ないし「婚姻を継続しがたい重大な事由」には該当しないといえます。もっとも、前述したように「悪意の遺棄」ないし「婚姻を継続しがたい重大な事由」があるか否かは個別具体的に判断するので、単身赴任だからといって必ずしもこれにあたらないとは断定できません。離婚したくないという立場からは、「当該別居状態は、あくまで仕事上の事情に基づく単身赴任であり、やむをえないものであった」と主張することになります。
2、住宅ローンについては、債務者がご主人なのであればご主人に支払ってもらうことになりますが、任意に支払いをしない場合に、あなたからご主人に対し支払うよう強制することはできません。住宅ローンを組んだ場合には住宅に抵当権が設定されるのが通常ですので、ローンの支払いが滞ると住宅は競売にかけられる可能性があります。住宅を残したいと考えていらっしゃるのであれば、ご主人の代わりにあなたが支払いをしていかなくてはなりません。あなたが連帯債務者になっているのであれば、あなた自身に支払い義務があるのは当然のことです。ご主人が支払いをせず、あなたも支払いすることができないというのであれば、(他に援助を受けられる特別な事情がない限り)競売されるのを待つか、あるいは不動産業者等を通じて任意に売却するかという方法を考えることになります。
3、仮に離婚することになってしまった場合、住宅は婚姻期間中に購入したものであるため、財産分与の対象になります。一般に、不動産を購入し、残りのローンがある場合には、一方の人が不動産を取得するとともに、残りのローンも引き継ぐという形態をとることが多いと言えます。本件で言えば、あなたが当該住宅に住み続けたいと思うのであれば、ローンはご自分で支払っていくのが基本となります。債務者の変更には債権者の同意が必要となりますが、仮に、本件住宅ローンの債務者がご主人なのであれば、債務者をあなたに変更することにつき債権者は同意しないと思いますので(収入がないため)、債務者はご主人のままで、事実上、あなたが支払いを続けていくことになります(連帯債務になっている場合にも、ご主人を連帯債務者からはずすことは通常出来ません)。ただ、本件ではご主人に不貞行為があり、慰謝料を受け取ることができる立場にある場合には、財産分与の際に慰謝料を考慮し、一定期間はご主人に住宅ローンを支払ってもらうという方法も考えられます。もっとも、これもあくまで任意の話し合いということになります。
4、もしあなたが支払いを続けていくというのであれば、支払いを完了することを条件として、ご主人から共有持分の移転登記をしてもらうよう約束を取り付けておくことが重要です。お二人の約束だけでは、その後、ご主人の持分をもらったり差押えたりした人がいれば、持分をもらえなくなってしまうことがあるので、せめて仮の登記だけでもいれておいた方がいいのですが、その方法は弁護士にご相談下さい。逆に、あなたが支払いをしていくことができないということになれば、住宅はご主人に引き取ってもらい、ローンの支払いをご主人に続けてもらう、あるいは競売ないし任意売却によって住宅を処分し、売却代金から残ローンを控除した残金を財産分与の対象とする、というかたちになります。

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