新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.270、2005/6/17 19:38 https://www.shinginza.com/qa-jiko.htm

[民事・不法行為]
質問:娘(21歳)が,1年前に,ダンプカーの一方的な過失により跳ねられて,下半身の自由が全く失われた状態(後遺症1級)となってしまいました。任意保険会社からは,示談金5000万円の提示を受けていますが,安過ぎる気がします。民事裁判を提起した場合,どの位の損害額を獲得できるのですか。

回答:
1,民事裁判を提起した場合に認められる損害額は,裁判官が自由な裁量に基づいて決するのが原則です(これを自由心証主義と言います。)。但し,裁判所に提訴される大量の交通事故訴訟事件を,事件毎に不公平にならないように,ある程度一律に処理する必要があることから,裁判官は,財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している,民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準(通称「赤い本」)を尊重することが多いのが現状です。そして,上記基準によりますと,本事案では,概ね,以下の損害額が認められる可能性があると思われます。
2,
@入院治療費・・実費全額
A入院雑費・・1日につき1500円程度×入院日数分
B近親者の看護のための通院交通費・・実費全額
C入院慰謝料・・仮に1年間入院の場合は,321万円程度
D後遺症による逸失利益・・仮に20歳で症状固定の場合は,349万0300円(基礎収入・賃金センサス平成15年女子労働者学歴計全年齢平均賃金)×1(労働能力喪失率・後遺症1級の場合は100%)×17.9810(中間利息控除・労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)=6275万9084円程度
E後遺症慰謝料・・2800万円程度(後遺症1級)
F将来の付添看護費・・近親者が付添看護する場合は,1日につき8000円程度×365日×19.1610(中間利息控除・平均余命までの期間に対応するライプニッツ係数)=5595万0120円程度職業付添人に頼む場合は,実費全額。但し,必要性,因果関係の問題点がありますので,仮に,現実に1時間3000円〜4000円(8時間で3万円前後)かかったとしても,裁判で認められる金額は、現在では多くても1日につき1万5000円程度です。
G将来雑費・・1日につき1500円程度×365日×19.1610(中間利息控除・平均余命までの期間に対応するライプニッツ係数)=1049万0647円程度
H家屋改造費・・必要性が認められる相当額
I弁護士費用・・@〜Hの合計額の1割程度
3,上記のように,本事案では,民事裁判を提起した方が,任意保険会社と5000万円で示談するよりも,はるかに多くの損害額を獲得できる可能性が高いと思われます。但し,上記2の損害額は,あくまで,1つの基準であり,最終的に幾らになるのかは,具体的な事情,裁判官の裁量によって,異なってきますので,ご注意下さい。民事裁判の提起を検討されている場合には,お近くの弁護士に相談されるのが良いでしょう。

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