新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.274、2005/7/25 13:39 https://www.shinginza.com/qa-seikyu.htm

[民事・消費者]
質問:私は公務員ですが、携帯電話で費用について何も表示されていないアダルトサイトにアクセスしたところ、管理会社と名乗る相手から電話があり、登録料として、3万円を請求され、支払ったところ、さらに依頼を受けた探偵社と名乗る者から「データ保管料として50万円振り込んでほしい。もし支払わないのであれば、職場、家まで取立に来る。」と言われました。支払う必要があるのでしょうか。何度も連絡があったので、一度は、「支払う。」と言ってしまいました。もし本当に家まで来たら、どのように対応したらいいでしょうか。

回答:
1、貴方が、50万円を支払う義務があるかどうかは、アダルトサイトを運営している会社との契約関係がどのようなものであるかによって決まります。貴方が利用したアダルトサイトにアクセスした時点で、何らかの契約が成立したかどうかですが、契約は、申し込みと承諾によって成立します。申し込み、承諾の意思表示は、口頭、文書、携帯電話からのメール、アクセスによっても行うことができますから、アダルトサイトにアクセスした時点で、何らかの契約が成立しているものとも考えられます。業者はこの点を根拠にしているのでしょう。しかし、契約の成立には、契約内容が、確定していなければならず、貴方がアクセスした時点で、データ保管料50万円という内容がアダルトサイトに掲載されるか、明確にわかるように表示されていなければなりません。本件では、このアダルトサイトが、費用を明確な形で表示していませんので、契約は不成立であり、貴方に支払い義務は一切生じません。また、金額の点からも不法請求として、公序良俗に反し契約自体が無効(民法90条)であると考えることも出来ます。
2、本件は、保管料という名目ですが、「登録料」「利用料」「調査費用」「運営費用」 「損害金」「弁護士費用」「遅延損害金」「訴訟費用」のいかなる名目であっても同様です。本件のように登録料の名目で数万円請求し、さらに請求金額を上げていく手法がとられているようです。貴方が、一度「支払う。」といっても、元々支払う義務はなく、そのことを知らなければ(民法705条)、応ずる必要はありません。勿論、すでに支払ってしまった登録料などの支払い義務もありませんので、法律上は返還請求することができます(民法703、704条)。ただ、業者の所在等もつきとめることも難しい場合も多く、返還を受けるのは困難かもしれません。
3、なお、このような事件の対策として、平成13年に電子消費者契約法が成立しました。事業者側が意思確認のための措置を執らない限り、重大な過失によってクリックしてしまっても、錯誤による無効(民法95条)を主張可能にした法律です。具体的な確認措置としては、そのボタンやURLが表示されている画面内に、サービス内容や利用料金などの契約内容が、分かりやすく明記され、そのボタンやURLをクリックすることで意思表示となることを明らかに確認できる画面とすること、あるいは、最終的な意思表示となるボタンなどのクリックの前に、申し込みの内容を表示し、そこで訂正の機会を与える画面を設置すること等が考えられます。本件では、以上の条件は満たされていませんので、錯誤無効を主張することができると思われ、この点からも、一切支払いに応じる必要はありません。
4、このようなトラブルは、近時多くあるようです。これはアダルトサイトを利用したという利用者の恥ずかしさ、後ろめたさを逆手に取って違法な請求を行い、金員をだまし取り、請求金額を次第に上積みしていくのです。貴殿は、公務員ですからその点動揺があるかもしれません。契約内容を明確に確認し、冷静に対応することが必要です。一度払えば、請求が終了すると思うことは危険です。一度支払えば、必ずさらなる請求が来ると思って間違いありません。請求額は、さらにエスカレートします。毅然たる態度が必要です。

以下の言動に惑わされては行けません。
「これで最後ですから。」
「家族にご連絡しますから。」
「登録を抹消しますから。」
「支払って頂ければ、利用サイトの名前をお教え致します。」
「訴訟となり、訴状を送ることになります。」
「クリックすると自動入会になってしまいますから。」
「支払わなければ社員がご自宅に伺いますから。」
「振込んでもらえればこれ以上請求しませんから。」
「今日支払えば、延滞金はつきませんから。」
「無料と書いてあっても、登録料は別です。」
「支払って頂ければ、退会できますから。」
「請求を依頼され調査している探偵社の者ですが。」
「依頼された法律事務所のもので弁護士ですが。」
などの言動を安易に信じてはいけません。

5、業者の違法請求は、詐欺罪(刑法246条)や恐喝罪(刑法249条)にも該当し得る行為ですから、あまり脅迫するようであれば、警察署生活安全課にご相談ください。実際に自宅に来た場合は直ちに警察署に連絡して下さい(但し、もともと根拠に乏しい請求ですので、可能性は低いと思います)。警察署が「民事不介入」を主張し、対応が遅れるような場合は法律事務所に相談してください。弁護士を代理人に選任し代わって交渉してもらうこともできます。   

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