新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.275、2005/7/25 13:44

[刑事・違法性]
質問:内部告発したいのですが、法律的に注意する点を教えて下さい。公益通報者保護法についても教えて下さい。

回答:
1、内部告発とは、広い意味で言えば、ある組織の構成員が、その組織の内部でしか知られていない情報を、組織外部に発表することを指します。近年、大企業の不祥事が多数明らかになっている背景に、従業員からの「内部告発」がきっかけで事実が判明したという事情があります。
2、しかし、日本という国では、内部告発=組織への裏切行為という考え方が根強く、内部告発の「犯人捜し」をして、告発者が解雇されたり、事実上会社にいられないようにしたりといった様々な不利益を被ることがあります。
3、事業者の不正な行為を是正し、国民の生命や身体などへの被害を防止するためには、労働者が内部から法令違反の行為を通報するのは、正しい行為として保護されるべきですが、これまでは、どのような内容で、どこに通報すれば、どのような保護がうけられるのかについて、明確なルールが定められていませんでした。そこで、このようなことを明確にするために、「公益通報者保護法」という法律が制定されました(平成18年4月から施行)。
4、この法律では、事業者内部からの国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法令違反の事実を通報することを「公益通報」といい、「公益通報」を行った労働者(派遣、パート、アルバイト、公務員、退職者なども含む)を「公益通報者」といいます。そして、公益通報者に対して事業者が行った解雇を無効とし、降格、減給や嫌がらせなどの不利益な取扱いも禁止しています。
5、「公益通報」「公益通報者」といえるためには、@通報の目的が不正に利益を得たり、他人に損害を加えるなどの不正の目的ではないこと、A通報の内容が、個人の生命、身体や消費者の利益、環境などにかかわる法令について、事業者の違反が生じたこと、または、まさに生じようとしていること、が最低限の条件となります、さらに、通報先によって、要件に差が出てきます。事業者内部に通報する場合、上記Aの要件は、「法令違反が生じた、またはまさに生じようとしていると思料する(思う)場合」となり、行政機関に通報する場合は、「法令違反が生じた、または、まさに生じようとしていると信じる相当な理由がある場合」になります。両者の違いは、後者の方が、法令違反が生じようとしていると考える「相当な理由」を要求しており、厳しいものとなっています。さらに、事業者外部(マスコミなど)に通報する場合は、上記2つの要件に加えて、B事業者内部へ通報すれば証拠が隠滅される恐れがある場合や、事業者内部へ通報して20日が経過しても調査をするとの通知がない場合などのうちいずれかの場合、という要件がプラスされます。
6、上記で見てきたとおり、「公益通報」といえるための要件はそれほど簡単なものではありません。つまり、上司のスキャンダルを暴露するとかというような行為はもちろん「公益通報」にはあたりません。また、「口止め料」などを要求することは、たとえ内容が公益的であっても、恐喝罪になるおそれがあります。社内での不正を目の当たりにして、通報すべきと考えたとき、公の利益と、自分の安全の両方を上手に守る必要があります。上記法律以外にも、雇用者の正当な理由のない不利益処分等、不当な行為から被用者を守る法的手段はあります。困ったときは、お近くの弁護士に相談されるとよいでしょう。

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