新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.278、2005/7/25 13:54 https://www.shinginza.com/rikon/index.htm
[家事・夫婦]
質問:「結婚したいと思っています。夫婦別姓・夫婦別氏にしたいのですが、今の法律で、できるでしょうか。知り合いの内縁の夫婦は、住民票の続柄の欄に「妻(未届け)」と記載されています。自分たち夫婦も、このようにすれば夫婦別姓に出来るのでしょうか。子供が産まれた場合、子供の氏はどうなりますか。また、婚姻届を出して戸籍上の夫婦にした場合でも、仕事や学校などで、別姓を名乗ることは可能でしょうか。」
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回答:
1、現行法上、夫婦の姓については「夫婦は婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」(民法750条)となっていますので、結婚に際しては、夫婦どちらか一方の姓・氏に変更しなければなりません。つまり、夫婦同姓でなければ婚姻届が受け付けられませんので、今の法律では、戸籍上の夫婦別姓・別氏はできません。
2、しかし、結婚に際して、慣れ親しんだ自分の姓を捨て改姓しなければならないということは、@自分が自分でなくなったような自己喪失感、違和感が生じる場合があり、A98%もの女性側が改姓している現状では、夫と妻の間の不平等感がつきまとうこと、Bその人としての社会的実績、信用の断絶、C改姓に伴う手続きの煩雑さ、D結婚・離婚・再婚などのプライバシーの公表を否応なく強制されるなど問題点があります。そこで、法務大臣の諮問機関である法制審議会の民法部会身分法小委員会は、1994年「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案」を発表し、夫婦同姓を維持する案と夫婦別姓を認める案を併記しましたが、1996年同審議会答申の要綱では、選択的夫婦別姓が提言されたことから、現在では選択的夫婦別姓導入へ向けた民法改正の動きが活発化していますが、残念ながら、国会での最終的決着はついていません。
3、このような現状のもとで、夫婦別姓を実践している人たちは、主として、@通称使用(婚姻届を出して戸籍上はパートナーの姓に変更するも、改姓した方は日常的に旧姓を通称名として使う方法)、もしくは、A事実婚(婚姻届を出さずに結婚する方法)を行うことで夫婦別姓・別氏を貫いています。4、ご質問にある「知り合いの内縁夫婦」が住民票の続柄の欄に「妻(未届け)」との記載をされているのは、@事実婚として夫婦別姓を実践しているものであり、単なる同棲とは異なることをアピールしているものといえるでしょう。ただし、事実婚としての夫婦別姓を行う場合、夫の扶養家族になれない(健康保険は入れますが)、夫の遺産相続権がない(遺言があれば別)、子供は非嫡出子になるという不利益があります。この場合、子供の氏は、母親の氏になりますが、父親の認知を受け、家庭裁判所で「子の氏の変更許可」がおりれば、父親の戸籍に入り、父親の氏を名乗ることができます。
5、他方、A婚姻届を出して戸籍上の夫婦にした場合でも、仕事場や学校などで旧姓を通称として名乗ることは可能ですが、公的書類(戸籍、住民基本台帳、運転免許など)では通称が認められませんので、通称を使える範囲が限定され、戸籍姓と通称の使い分けが煩雑という不利益があります。