新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.282、2005/7/25 14:16 https://www.shinginza.com/sakimono.htm
[民事・消費者]
質問:業者から先物取引の勧誘を受けて,取引を始め,500万円を入金して,100枚の買建玉をしたのですが,値段が下がってしまいました。そこで,業者から,100枚の売建玉をすれば,値段が下がっても上がっても絶対に安心だと言われて,両建を勧められ,新たに500万円の入金が必要であると言われました。先物取引のことはよく分からないのですが,業者の言うことを信頼しても大丈夫ですか。
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回答:
1、両建とは,簡単に言いますと,買建玉と売建玉を同時に持つことを言います。そして,両建は,国民生活センターのブックレットでは,古くから,「顧客を泥沼に引き込む常套手段」であると指摘されていますので,業者の言うことを信頼してはいけません。
2、確かに,両建をすると,その時点で,損益が固定されます。しかし,両建は,当然いずれは,両方の建玉を仕切る必要があり,例えば,本事案で,1か月後に,相場が上昇すると読んで,売建玉を仕切って,買建玉で勝負する場合を考えますと,これは,結局,両建をした時点で,損の出た買建玉を仕切る「損切り」をして,1か月後に,新規に買建玉をすることと,全く同じ経済的効果しかないのです。すなわち,経済的効果としては,「両建=損切り」であり,「(両建した後)両建をはずす=(損切りをした後)新規建玉をする」ことなのです。よって,両建は,損切りと比較して,無益な行為であると言えます。
3、逆に,両建は,損切りと比較して,手数料が多くかかり,さらに,新たな証拠金が必要となります。また,損切りをすれば,その後,いつでも好きな時点で,新規建玉ができますし,もちろん,建玉をせず,先物取引から離脱するという選択肢もあります。しかし,両建をした場合,買建玉と売建玉をタイミングよく外して勝負するほかなく,顧客は一般に適切に外すタイミングなど分かるはずはないので,業者の言いなりにならざるを得ない状態になります。このように,業者にとっては,手数料を多く取得でき,また,顧客の先物取引からの離脱を困難にし,さらに,顧客を言いなりにできる状況を作ることができ,手数料を稼げる可能性が増大することから,業者は必ずといってよいほど,両建を勧めるのです。
4、以上のことから,業者の言うことを信頼してはいけません。そして,先物取引のことがよく分からないのであれば,業社の言いなりになって手数料稼ぎをされ損害が拡大してしまう可能性が高いので,早めに,先物取引に詳しい弁護士に相談して、手仕舞いをするのが良いでしょう。