新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.291、2005/9/8 11:13 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm

[刑事・起訴前]
質問:高校生の息子が、放置されていた自転車を乗り回していて、警察に逮捕されました。今後どのような手続きになるのですか。

回答:
1、放置自転車でも、捜してみれば所有者が見つかるものですし、見つからなかったとしても、無断で放置してある財物を自分のものにする行為は、占有離脱物横領罪(刑法254条)にあたります(持ち主がはっきりしている場合は、窃盗罪になります)。通常は、このような微罪(犯罪の内容が軽いもの)について、未成年者の場合、補導という処分になり、警察でお叱りを受けて終わることが多いのですが、中には逮捕されてしまうケースもあります。逮捕された場合、警察は48時間以内に検察官に被疑者を送致します。検察官は、取調の必要性等勾留の必要性を認めれば24時間以内に裁判所に勾留請求をします(刑訴法204,205条)。ここで、裁判官が勾留の必要性ありと認めれば、延長を含めて最大20日間の勾留が可能になります。送検されても、少年が被疑事実を認めており、逃走の危険もないようであれば検察官がそのまま釈放するか、または、家庭裁判所に身柄送致されることになります。家庭裁判所に送致されると、送致されたその日のうちに、少年の要保護性という観点から(刑事訴訟法上の勾留とは視点が異なります)、少年の身柄を少年鑑別所に拘束(最長4週間)して調査等を行う監護措置をとるかどうかについて判断されることになります。
2、少年事件で、被疑者少年が学校に通っている場合、20日間の勾留や、4週間の監護措置の決定が下されると、当然学校にも逮捕されたことが発覚し、学校側も停学、退学などの処分を下すことがあります。そのようなことになれば、少年は行き場を失い、非行をさらに加速させることになりかねません。少年事件の場合、少年の身柄を一日も早く解放することが重要になります。ここでご相談内容に戻りますと、今回の事件は、放置自転車を乗り回したという、窃盗ないし占有離脱物横領の事案です。犯罪はどれも許されるものではありませんが、このような犯罪は比較的軽い犯罪で、少年自身もいたずら半分でやってしまったということが多々あります。そこで、弁護士は早期に付添人(成人でいう弁護人のこと)に就任し、少年の家庭状況、反省状況、学校の状況などを調査して報告書にまとめ、勾留決定を出さずに、少年の身柄を早期に解放して欲しい旨の意見書をまとめて裁判所に提出する活動をしています。
3、このような活動により、在宅処分を獲得した場合、その後の手続は、日常生活を送りながら進めていくことになります。具体的には、少年事件は全件家庭裁判所に送致されますので、家庭裁判所がその後の手続を引き継ぎます。家庭裁判所調査官が、今回の事件の経緯、少年の性格、環境などを調査し、少年をどのような処分にするべきかという意見書を作成します。通常、少年の処分を決定するにあたり、家庭裁判所で少年審判を開催し、裁判官が少年と直接対話した上で、処分を決めることになるのですが、本件のような軽微な事件の場合、調査官の調査の段階で、審判を行う必要なし(審判不開始)という意見が出されることもあります。その意見を受けて裁判所が不開始を決定した場合、事件はそこで終了となり、手続も終了することになります。
4、調査官の意見は、裁判所の決定に大きな影響を与えることは事実ですが、裁判所はこれに拘束されるわけではありません。事前に調査官から不開始の意見が出ていても、裁判所の決定で審判を開催することもあります。審判は、成人の刑事裁判とは異なり、厳格な形式は定められておらず、個々の審判官(裁判官)が比較的自由に進行します。できるだけ少年にわかりやすく、対話形式で進められることが多いようです。また、少年の両親も出席を求められ、これまでの教育についての問題点や、これからの指導・監督についてのアドバイスなどをされます。審判期日において、処分が決定されれば、事件は終了になります。少年の前歴や、家庭環境、生活環境によっても異なりますが、本件のような微罪の場合、審判不開始の決定がなされるか、審判を経た上で不処分になるという扱いが多いようです。なお、身柄を拘束する期間に制限があって、その制限内に処分を決定しなければならないという制約上、少年審判手続きは身柄を拘束されている少年を優先して行われます。裁判所の事務の都合上、勾留決定がなされず、在宅による手続になった場合、審判に関する決定がなされるのに多少時間がかかることがあります。
5、いずれにせよ、少年事件については、早い段階で活動を開始することが重要です。お早めにお近くの弁護士に相談されることをお勧めいたします。

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