新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.294、2005/9/8 13:34 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm

[刑事・起訴前]
質問:夫が,友人と居酒屋でお酒を飲んでいたところ,店内にいた隣のテーブルのお客さんと喧嘩になり,友人と一緒に,その人に暴行を加えて軽傷を負わせてしまいました。夫は,警察に逮捕され,現在は,勾留されて3日目ですが,このまま夫の身柄拘束が続くと,勤務先から解雇されてしまうかもしれません。どうにかならないでしょうか。なお,夫の友人は,暴行を加えたことを警察に認めていないようです。

回答:
1、他人に暴行を加え,怪我をさせてしまったのが真実であれば,事実を正直に認めた上,弁護士に依頼して被害者と示談を成立させることで,早期に身柄が釈放になる場合があります。
2、勾留期間は,法律上,10日間までとされており(刑事訴訟法208条1項),捜査の必要等のやむをえない事情があれば,さらに,最長10日間の延長がされることになります(同条2項)。そして,勾留期間が満了するまでに,検察官は,起訴するか,不起訴にするかを決定します。なお,起訴する場合は,公判請求,すなわち,正式裁判にするのが通常ですが,一定の軽微な犯罪については,略式命令請求といって,正式な裁判にはしないで罰金等を課す手続きを請求する場合があります。そして,公判請求の場合,被疑者の身柄は引き続き拘束されることになりますが(起訴が勾留),不起訴の場合や略式命令請求の場合は,被疑者の身柄は釈放になります。
3、そして,事件を起訴するかどうかは,検察官の裁量とされており,仮に,被疑者が犯罪を行ったのが事実であるとしても,犯人の性格,年齢及び境遇,犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により,検察官が,起訴する必要がないと判断した場合には,起訴猶予,すなわち不起訴となります(刑事訴訟法248条)。
4、あなたの場合は,夫が被害者に軽傷を負わせただけということですから,もし,夫が事実を認め,十分に反省して,なおかつ,前科等の悪質な事情がなければ,被害者と早期に示談を成立させることで,起訴猶予になる可能性が高いといえます。また,勾留期間についても,単純な事案で,かつ,事実を認めているのであれば,10日以内に捜査が終了になると思われますので,勾留延長されずに,10日以内に釈放になる可能性もあります。したがって,早期の身柄釈放のためには,弁護士に,被害者との示談交渉や,担当検察官との折衝を行ってもらうことが重要です。
5、なお,共犯者の一方が犯罪事実を認めていない場合には,事実を認めている他方の共犯者も含めて,勾留延長されてしまう可能性が高いといえます。すなわち,被疑者が犯罪事実を認めていない場合は,捜査機関としては,被疑者の取調べなどの捜査を重ねる必要があるため,勾留期間が延長されてしまうのが通常です。そのような場合,事実を認めている共犯者にとっても,捜査が未了であるとして,勾留延長がなされる可能性が高くなるのです。もっとも,事実を認めている共犯者の弁護士が,他方の共犯者に接見を行い,正しい知識・情報を伝えることで,共犯者が翻意して事実を認め,結果として,共犯者が双方とも勾留延長されることなく,釈放になったという成功例もあります(ただし,共犯関係にある複数の被疑者について,同一の弁護士が弁護人になることは,共犯者間に利害対立がないことが前提となりますので,かならずしも可能であるわけではありませんし,慎重な判断を要する場合があります。)。
6、したがって,あなたとしては,弁護士に,当該ケースにおいてそのような手段をとることが可能かどうかを確認してみてはいかがでしょうか。

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