新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.305、2005/10/31 13:47 https://www.shinginza.com/rikon/index.htm
[民事・不法行為]
質問:度重なる姑の嫌がらせ(いびり)に妻が耐え切れず、離婚する事になってしまった。この場合、妻は姑に慰謝料を請求できるか。
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回答:慰謝料請求できる場合があります。
1、夫婦だけなら離婚にはならなかったけれども、配偶者の親族との不仲が原因で離婚に至るケースというのも、日常たびたび見受けられます。典型的なのは、嫁・舅や姑の対立でありますが、他にも、養親の婿いびり、兄夫婦と妻の不仲など、同居の親族との不和からの離婚などもあります。この点、離婚は夫婦の自由意志による夫婦の問題である以上、姑等の親族が離婚に加担しあるいは離婚をするように助長・刺激したからといって、そのことから当然にその親族に慰謝料請求できるものではありません。 つまり、世上一般によくある婚家先の家族の不和にすぎない場合、夫がこの障碍をとりのぞいて夫婦の円満を計るべきであり、原則として夫に対する慰謝料請求の問題であり姑等親族に対する慰謝料請求は認められないわけです。しかし、親族が、本人同士の結婚継続の意思を妨げて、あえて離婚させてしまった、というように婚姻関係破綻と姑のいびりなどの第三者の事情とに相当因果関係が認められる場合、不法行為を根拠に慰謝料請求できる場合が例外的にあります。即ち、この場合の慰謝料は、婚姻が破綻した原因を作った人物に対する賠償請求を意味し、そうすると姑に対する慰謝料の請求も可能となるわけです。
2、(基準)姑が原因で婚姻関係が破綻したといえる場合であり、そのときの夫婦関係や第三者の意図や行為の態様など諸般の事情を考慮して判断することになります。ただ、画一的な基準により判断することはできず最終的には裁判所による個別的具体的な判断となります。例:姑が嫁をいびり続けた挙げ句に追い出したのが離婚の原因になった場合。なお、姑の嫁いびりに夫も加担していた場合には、夫にも責任が認められ、姑と夫の共同不法行為となります。その場合には、損害賠償として認められた額の範囲内で姑と夫のどちらからもお金を取ることができますが、夫から慰謝料を取れた場合には、さらに姑から慰謝料を取ることは出来ないことになります。
3、なお、離婚原因を証明するものとしては、相手の言動を録音録画した「録音テープ・隠しカメラ」、状況を継続的に詳しく記した「日記」、「親族や知人などの証言」などが有効であると思われます。
4、判例 主要な判例としては以下のとおりであります。
〔肯定例〕最判昭和38年2月1日(嫁の追い出しに義父が主導的役割を演じた、社会通念上許容されるべき限度を超えた不当な干渉をしたという理由で、連帯責任を肯定した判例。)最判昭和33年1月23日(性的嫌がらせを繰り返した舅に対する10万円の損害賠償請求を肯定した判例。なお、この判例でも夫の放置の不作為を共同不法行為と認定した。)名古屋地裁一宮支部昭和53年5月26日(夫と姑の嫁いびりにより妻が離婚のやむなきに至った慰謝料として夫と姑両名に対し200万円の支払を命じた。)→肯定した裁判例では夫と姑・舅の共同不法行為と認定する例が多いといえます。
〔否定例〕名古屋地裁昭和43年1月29日判決(財産分与に際し夫に対する慰謝料を認定し第三者の慰謝料請求を否定した。)他