新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.316、2005/12/13 14:25
[商事]
質問:類似の商標を使用されたのですが、どうすればいいでしょうか。使用中止、謝罪広告、損害請求の要求はどのようにすればいいでしょうか。
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回答:
1、商標について、特許庁において商標として登録をしている場合には、当該商標を他社に無断で使用されないように法的な保護を受けることができます。商標登録をすれば、当該商標について商標権を取得し、当該商標を自社だけで独占的、排他的に使用することができます。また、商標権の保護として、同一の商標だけでなく、当該商標に類似した範囲の名称についても、商標権侵害として他社に使用を中止させることができます。
2、したがって、類似の商標が使用された場合には、商標権の侵害となり、使用者に対して、使用中止、損害賠償請求、謝罪広告の要求をすることができます。ただ、商標権は、商標に化体された「信用」という無形の財産を保護の対象とする特殊な権利であることから、商標法により特別な規定が定められております。
3、差止請求権 商標権者は、自己の商標権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができます(商標法36条1項)。また、商標権者は、使用中止を請求する際、侵害の行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除去その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができます(商標法36条2項)。商標権者は、侵害者の主観的事情を立証せずとも、客観的な侵害の事実だけで使用の中止を請求することができ、直接的で有効な手段といえます。
4、信用回復の措置 故意又は過失により商標権を侵害したことにより商標権者の業務上の信用を害した者に対して、裁判所は、商標権者の請求により、損害の賠償に代え、又は損害の賠償とともに、商標権者の業務上の信用を回復するのに必要な措置を命ずることができるとされています(商標法39条、特許法106条)。よって、商標権者は、裁判所に、侵害者に対して謝罪広告の掲示等を命ずることを請求することができます。
5、損害賠償請求権 商標権者は、故意又は過失により自己の商標権を侵害した者に対し、不法行為に基づき、当該侵害により生じた損害の賠償を請求することができます(民法709条)。また、商標権の特殊性から、商標権者の救済のための特則が、商標法において認められています。具体的には、他人の商標権を侵害した者は、その侵害行為について過失があるものと推定され(商標法39条、特許法103条)、過失の証明責任が転換され、商標権者の証明責任の負担を軽減しています。また、商標権を侵害する行為について、具体的に類型化されています(商標法37条)。さらに、商標権侵害の損害額の推定も認められています(商標法38条)。