新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.321、2006/1/5 10:58 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm
[刑事・被害]
質問:先日,私は,最近ニュースなどでよく報道されている架空請求の被害に遭い,約100万円ものお金を騙し取られました。しかし,幸いなことに犯人達は逮捕され,現在,組織犯罪処罰法違反という罪名で刑事裁判を受けています。私としては詐欺の被害に遭ったと思っていたのですが,どうして,今回の場合は詐欺罪ではなく組織犯罪処罰法違反になっているのでしょうか。また,両者にはどのような違いがあるのでしょうか。私は,私から大事なお金を騙し取った犯人達の裁判や判決がどうなるかについて強い関心があるので,是非教えて下さい。
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回答:
1、ご質問の組織犯罪処罰法は,正確には,「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」といい,平成11年に制定されたものです。この法律は,年々巧妙化する組織犯罪に厳罰を科すことや違法組織の活動にとって必要不可欠といえる資金源に対して没収及び追徴などを科すことによって,このような犯罪組織に大きなダメージを与えることを目的とした法律です。
2、そして,同法は,刑法に規定されている殺人,逮捕監禁,詐欺,恐喝などの一定の罪名につき,刑法で規定されている法定刑よりも厳しい法定刑を規定しています。たとえば,刑法上の詐欺罪(刑法246条)の法定刑は,1月以上10年以下となっていますが,組織犯罪処罰法の適用があると,その法定刑は,1年以上20年以下と相当厳しくなります(同法3条1項9号)。
3、組織犯罪処罰法の適用があるかどうかは,団体(2名以上)で,犯罪行為の効果や利益が団体に帰属するような団体の活動として,同法3条1項所定の犯罪を行うことが必要となります。ですので,例えば,ここに規定のない業務上横領を複数人で行ったとしても,組織犯罪処罰法の適用はなく,刑法上の業務上横領罪(刑法253条)で処罰されることになります。
4、今回のご質問のような架空請求詐欺の場合,刑法上の詐欺罪で起訴するのか,組織犯罪処罰法違反で起訴するかは検察官の判断によりますが,仮に,組織犯罪処罰法違反で起訴され,判決でも同法違反との判断がなされた場合は,事案にもよりますが,刑法上の詐欺罪の場合よりも,例えば,実刑判決となる可能性が高くなるなど,一般的には,量刑が重くなる傾向にあると言えます。
5、なお,かかる刑事裁判の過程で,被告人から被害弁償の申出があることもありますので,今回のような被害に遭った場合には,被害者として認知されるために,なるべく捜査機関に対して被害届などを出しておいた方がよろしいでしょう。