新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.326、2006/1/5 11:22 https://www.shinginza.com/qa-jiko.htm

[民事・不法行為]
質問:兄が交通事故に遭い,死亡してしまいました。兄は独身で子供がおらず,両親も既に他界していますので,妹である私が唯一の相続人です。加害者に逸失利益を請求できると聞いたのですが,逸失利益とはどのようなものなのですか。

回答:
1,逸失利益とは,被害者が死亡したことにより被った,仮に被害者が生きていれば,将来得られたであろうと考えられる所得などの経済的損害のことを言います。そして,死亡による逸失利益は,裁判実務では一般に,「基礎収入額×(1−生活費控除率)×労働可能年数に対応する中間利息控除係数」で計算されます。
2,まず,「基礎収入額」は,有職者の場合,原則として,事故前の年収額を基礎とします。次に,「生活費控除率」とは,仮に被害者が生きていれば,収入がある反面,生活費もかかりますので,その分を控除するべきとの考えに基づくものです。そして,裁判実務で尊重される,財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している,民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(通称「赤本」)(平成17年版)によりますと,「生活費控除率」は,独身の男子の場合,50%程度とされています。
3,最後に,「労働可能年数」とは,裁判実務では一般に,67歳までとされ,「中間利息控除係数」とは,仮に被害者が生きていれば,67歳まで収入がありますが,将来に及んで発生する損害額を,通常は一時払いされることになりますので,その間の利息相当額を控除するべきとの考えに基づくものです。そして,「中間利息控除係数」は,平成17年版赤本によりますと,例えば,50歳で死亡した場合,11.2740とされています。
4,よって,本件で,例えば,兄が死亡当時,50歳で,年収が700万円であった場合,裁判では,「700万円×(1−0.5程度)×11.2740=3945万9000円程度」の逸失利益が認められる可能性があります。

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