新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.346、2006/1/25 15:42

[民事・契約][商事]
質問:サブリース契約とは何ですか。また,注意すべき点があれば教えてください。

回答:
1、【サブリース契約とは】サブリースとは,転貸・又貸しすることを予定した賃貸借契約の一形態です。通常は,不動産業者が,マンションやビルなどの建物オーナーからその建物を丸ごと借り上げて一括管理し,業者が各テナント(入居者)に又貸しします。その際,既存建物を利用するケースだけでなく,地主に収益用の建物を新たに建築させた上で,それを借り上げるというケースも多く見られます。サブリース契約のメリットとしては,建物オーナーにとっては,テナントの募集や管理をする面倒を避けられることや,空室状況に関わらず一定の賃料が保証されることなどがあります。他方で,不動産業者にとっては,自前で不動産を取得しなくても各テナントに又貸しすることで利ザヤを稼ぐことができることなどがあります。
2、【賃料の保証について】サブリース契約を結ぶにあたって,不動産業者が保証してくれる賃料が一体どの範囲なのかという点には注意が必要です。とにかく建物の全室分について予め約束した最低金額を保証してくれる「最低保証」なのか,空室分の賃料をそのときの相場賃料の限度で保証する単なる「空室保証」なのかということです。もし,賃料相場が大きく下落した場合,不動産業者から「空室保証」しかしてもらっていなければ,当初の見込んでいた収入が得られず,サブリース用物件の建築費用の返済すらままならないという事態も考えられます。では,「最低保証」をしてもらえば安心なのかというと,そうではありません。法律上,建物賃料が,一定の事情により不相当となったときは,契約の条件にかかわらず,将来に向かって建物賃料の額の増減を請求することができるとされています(借地借家法32条1項)。サブリース契約にもこの法律を適用すべきかについては,平成10年ころから賛否両論様々な裁判例が出ました。しかし,現在は,サブリース契約にもこの法律を適用できるという最高裁の判決(平成15年10月21日)に統一されています。ですから,「最低保証」をしてもらっていても,将来,場合によっては裁判を起こされて減額されてしまう可能性があります。
3、【定期借家契約の利用】借地借家法の改正により,平成12年3月1日から,定期借家契約を結ぶことができるようになりました(同法38条1項)。定期借家契約とは,契約時に定めた期間が満了したら,更新をすることなく確定的に終了する建物賃貸借契約です。この定期借家契約を利用するときは,その期間中,前述の賃料減額請求をしない旨の特約を結ぶことが認められています(同条7項)。したがって,これを利用すれば,将来の賃料相場の変動に左右されずに固定のサブリース料を得ることができる可能性があります。

【参考法令】借地借家法
32条1項 建物の借賃が,土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により,土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により,又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは,契約の条件にかかわらず,当事者は,将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし,一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には,その定めに従う。
38条1項 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては,公正証書による等書面によって契約をするときに限り,第三十条の規定にかかわらず,契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には,第29条第1項の規定を適用しない。
38条7項 第32条の規定は,第1項の規定による建物の賃貸借において,借賃の改定にかかる特約がある場合には,適用しない。

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