新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.348、2006/1/25 15:52 https://www.shinginza.com/rikon/qa-rikon-youikuhi.htm
[家事・親子]
質問:昨年離婚しましたが、別れた夫は長男の養育費を全く払ってくれません。そのため、子供の食費や幼稚園の費用などが払えなくなってきており、子供の養育に重大な支障が生じてきています。離婚したときに何も取り決めをしていないのですが、今から養育費の請求をすることはできますか。別れた夫は全く支払う意思はないようですが、強制的に払わせることはできるでしょうか。
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回答:
1、養育費は、子供の扶養のための親子の関係に基づく責任ですから、親権の有無に関わらず、親である以上養育費を負担する義務があります。したがって、養育費について具体的な取り決めをしていなくても、相手方に対して養育費の支払いを請求することができます。養育費の請求方法は、基本的には当事者間での協議をすることになりますが、相手方が協議に応じない場合には、家庭裁判所において養育費支払いの調停を申し立てることになります。そして、調停に相手方が出頭しない場合や調停がまとまらない場合には、養育費支払いの審判の申立をして裁判官の決定を受けることができます。養育費の金額については、裁判所に一応の基準が設けられており、当事者の収入などを考慮して決められます。あなたの収入が少なくて子供の養育に現実的な支障が生じているのであれば、当然に養育費の支払いは認められますので、前述の手続きをとられることをお勧めします。手続き的に難しいところがある場合には、弁護士に手続きを委任するとよいでしょう。
2、調停が成立すれば調停調書、審判の場合は決定書が作成されます。それらには確定判決と同一の効果が認められ、執行力があります。したがって、相手方に対して強制的に支払いを求めることができます。よって、別れたご主人が支払う意思がない場合でも、強制的に支払いを求めることができます。具体的には、まず、履行勧告の制度があげられます。相手方が支払いに応じない場合に、家庭裁判所に履行勧告の申立をしますと、家庭裁判所から相手方に対して調書、決定に基づき支払うように勧告をしてもらえます。ただ、この履行勧告の制度は、あくまでも勧告であり、強制的に支払いをさせる効果まではありません。
3、そこで、調書、決定に基づいて、別れたご主人の給料や預貯金に対して差押をして養育費を取り立てる強制執行の手続きをとることになります。前述のように調書、決定書には執行力があり、債務名義ですので、この書面を裁判所に提出して強制執行の手続きをとることができます。養育費の強制執行に関して、平成16年に改正がなされ、より便利になりました。すなわち、一回の強制執行の申立で、過去の分だけでなく将来の養育費についても差し押さえることができるようになり、差し押さえることができる給与の範囲も4分の1から2分の1になりました。さらに、間接強制として制裁金の支払いを求めて相手方の支払いを促す手続きもあります。平成17年4月以降認められました。この手続きは、調書、決定の債務の履行をしない場合に一定の制裁金の支払いを命じて、債務の履行を心理的に強制する手続きです。この場合には具体的な財産を特定しなくても、相手方の所在さえ判明すれば利用することができます。したがって、別れたご主人の財産を具体的に把握されているかどうかによって、前述の手続きを選択して強制的に養育費の支払いを求めていくことができます。ただ、強制執行の手続きはやや複雑で難しいところもありますので、弁護士に委任をすることをお勧めします。