新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.354、2006/2/17 13:14 https://www.shinginza.com/qa-jiko.htm
[刑事・起訴前]
質問:私は、交通違反を繰り返したため、刑事裁判にかけられることになってしまいました。しかし、身柄は拘束されず、「在宅起訴」というものになるそうです。在宅起訴とはどういうものですか?また、実刑判決を受けた場合、その場で身柄を拘束されるのですか。
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回答:
1、刑事裁判においては、被告人の逃亡、罪障隠滅、証人威迫(証人を脅かしたり買収したりして、虚偽の証言をするように促すこと)などの可能性があるため、そのような行為に出る危険性のある被告人については、裁判所が身柄を拘束する権限があります。これを勾留と言います(刑事訴訟法60条など)。しかし、全ての刑事裁判手続きについて、勾留という措置がとられるわけではありません。中には、裁判の期日に出頭すればよいということで、身柄を拘束せずに被告人を起訴することもあります。「在宅起訴」とは、法律用語ではありませんが、被告人の身柄を拘束しないまま裁判を行うものです。
2、被告人は、身柄を拘束されていないと言っても、刑事訴追されていることに変わりはありませんから、裁判の期日には必ず出頭しなくてはなりません。もし、正当な理由なく期日に出頭しない(召還に応じない)場合には、勾引(刑事訴商法58条)という手続がとられます。勾引は、逮捕と同様、対象者を捜索し、身柄を拘束することができる手続です。
3、在宅起訴になる場合とは、勾留の必要性がない場合、すなわち、上記のような逃亡のおそれ、証拠隠滅、証人威迫などのおそれがないといえる場合と考えられます。被告人が罪を認めていて、証拠などもすでに捜査機関によって収集済みであり、被告人が一定の住所を持っていて、逃亡のおそれがないといえるとき、などが考えられます。また、被告人が病気や障害などにより勾留に耐えられないときなども考えられます。この点、保釈との相違点は、保釈が勾留されている被告人を、一定の要件の元に勾留を解く手続であるのに対し、在宅起訴とは、最初から勾留という手続が取られていない、という状態になります。
4、軽微な犯罪のときにも在宅起訴という取り扱いをされることが多く、相談者のような交通違反の累積などの場合、交通前科等がなければ、判決にも執行猶予がつく可能性が高いと思われますが、もちろん、実刑判決が下されることもあります。その場合、判決の言い渡しがあったその場で身柄を拘束されるというわけではありません。後日(一週間程度が一般的です)、検察官から呼び出し状が届きますので、指定の場所に出頭することになります(同法484条)。これに従わない場合、勾引状と同様の効力を有する収監状が発布され(同法485条・488条)、強制的に身柄を拘束されることになります。
5、刑事手続において、裁判所や検察官の呼び出しに応じないということは、結局自分の不利益になってかえってくることになりますので、かならず応じるようにしてください。