年少年事件と学校連絡回避

刑事|少年法|学校連絡回避手続|警察捜査段階と家裁送致後の段階

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参考条文

質問:

公立高校に通う息子が、スーパーで食品数点を万引きした後、立て続けに本屋でも漫画本1冊を万引きしてしまいました。警備員に目撃されてしまい、その場で警察を呼ばれ、その日のうちに警察署で事情聴取を受けました。

警察の話では、今後、検察庁に事件を送致し、その後は家庭裁判所に事件送致されるとのことでした。

息子は数ヶ月後に大学受験を控えているのですが、学校に連絡されてしまうと、停学や退学といった不利益を受ける可能性があり、受験への悪影響が懸念されます。ところが、警察からは、学校との協定で連絡をする決まりになっている上、2店舗で立て続けに万引き行為をしている点も悪質であるから、学校に連絡せざるを得ないと言われています。

なんとか、学校に連絡されずに済む方法はないでしょうか。

回答:

1 学校への連絡が想定されるのは、主に、警察段階(警察署から学校への連絡)と家庭裁判所送致後(家庭裁判所から学校への連絡)の2通りが考えられます。

2 まず、警察署は教育委員会との間で少年事件に関する相互連絡の協定を結んでいる場合がほとんどであるため(児童生徒の健全育成に関する学校と警察との相互連絡制度)、少年が事件を起こした際は、同協定に基づき、警察から学校に通報がされる可能性があります。

学校への連絡を行う基準は、①逮捕事案(刑事事件となる案件)②ぐ犯事案(刑事事件を犯す怖れのある案件)③その他非行少年等及び児童・生徒の被害に係る事案で警察署長が学校への連絡の必要性を認めた事案などが挙げられます。万引きは窃盗罪として刑事事件が成立しますから、①に該当し、さらに警察が既に学校に連絡する方針を表明していることから、学校への連絡の必要性を減退させる事情を作り出さなければ、方針変更となる見込みは薄いでしょう。方法としては、被害店舗との間で、速やかに示談を成立させることに加えて、学校への連絡を望まない旨の上申書の取り付けを目指すことが考えられます。

3 警察署から学校への連絡がなかったとして、次に、少年による刑事事件の場合、警察又は検察は、認知した事件について、全件を家庭裁判所に送致され(全件送致主義)、送致を受けた家庭裁判所は、調査官を通じて、少年審判に向けた少年の身上調査を行うことになり、具体的には、少年や保護者を呼び出して事情を聞く他、場合によっては学校に情報提供を求めるなどして、犯罪(非行)事実のみならず、少年の日頃の家庭環境や学校での生活態度等の実態調査を行うことが想定されます(調査官調査)。

このように、家裁送致後に、調査官を通じて学校に照会がかけられる可能性もあることは心得ておく必要があります。家庭裁判所は学校へ通報する意図ではないとしても、学校が事件を知ることになってしまいます。

もっとも、軽微な非行事案については、証拠書類等の添付を省略し、簡易な書類の送致だけで送致される場合があり(簡易送致)、送致を受けた裁判所は、調査官の調査を実施することなく、書類上形式的な審判不開始決定をして、手続きが終了します。また、簡易送致の要件を満たさず通常送致となる場合でも、非行の軽微性から、調査官の調査を実施するまでもなく審判不開始で終了となることがあります。

本件のような初犯の軽微な万引き事案については、調査官の調査が実施される可能性が低く、学校への連絡をさほど心配する必要はないでしょう。とはいえ、調査官の調査を確実に回避するためにも、捜査機関が家裁に送致する前段階において、簡易送致によるべきことを積極的に主張しておくことが肝要です。

4 関連事例集1967番1726番等参照。少年事件に関する関連事例集参照。

解説:

第1 少年事件の流れ

成人の刑事事件の場合、事件が司法警察員から検察庁に送られ(刑事訴訟法246条)、検察官が終局処分(起訴・不起訴)を決定します。ただし、捜査した事件について、犯罪事実が極めて軽微で、かつ、検察官から送致の手続をとる必要がないと予め指定されたものについては、微罪処分として、検察庁に送致しないことができる運用になっています(刑事訴訟法246条但書き、犯罪捜査規範198条)。

これに対し、少年の刑事事件の場合、罰金以下の罪については司法警察員が(少年法41条)、それ以外の罪については司法警察員から送致を受けた検察官が(少年法42条)、それぞれ家庭裁判所に送致することとなっております(全件送致主義)。成人の場合の刑事訴訟法246条但書きのような明文の例外規定がありませんので、全件を家庭裁判所に送致する決まりになっている、ということです。少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うという、少年法の目的(少年法1条)から、少年に対する調査権限を有する家庭裁判所に全ての事件を集中させて、保護・教育の見地から専門的な判断をさせようという趣旨です。

送致を受けた家庭裁判所は、少年の調査のため観護措置をとることができます。観護措置には家庭裁判所調査官の観護に付する措置と、少年鑑別所に送致する措置の2つがありますが、実務上、観護措置とは少年鑑別所送致のことを指すのが一般的です。少年鑑別所送致決定がなされると(少年法17条1項)、少年は少年鑑別所に送られることになります。もっとも、観護措置は、逮捕・勾留に引き続く身柄拘束(家庭裁判所送致後は勾留による身体拘束の理由がないため、少年に対する調査という名目で鑑別所に行くことになります。)としての側面が強く、捜査段階で在宅にて進められた事件について、いきなり家裁送致後に観護措置が採られることは稀です。本件でも、その心配はないと言って良いでしょう。

少年に対する調査の結果を踏まえ、審判を開始するか否かの決定がなされ、審判が開かれることとなると、不処分決定(少年法23条)、保護観察(少年法24条1項1号)、児童自立支援施設等送致(同項2号)、少年院送致(同項3号)のいずれかの処分がなされることになります(ただし一定の重大事件では、逆送と言って、ごく稀に検察官送致となり、成人と同様の刑事裁判にかけられることもあります(少年法20条))。

少年審判においては、問題となった非行事実の内容に加え、少年の要保護性という観点から、少年に対する処遇を決定することになります。少年の再非行の危険性や矯正の可能性、保護処分による保護が適当か否かという保護相当性といった要素により構成されます。そのため、審判不開始や不処分の審判結果を得るためには、少年やその家族の生活環境を整え、今後の再犯防止のための具体的な方策を自主的に講じる必要があります。

以上が基本的な流れですが、一定の軽微な非行については、書類のみが家庭裁判所に送られる簡易送致の手続きがとられることがあり、この場合、送致後自動的に家庭裁判所による少年審判不開始が決定されて終了となります。この点は後述します。

第2 学校への連絡が行われる場合

それでは、本題として、少年が事件を起こした際に、学校に通報されてしまうのはいかなる場合か、そもそも連絡されない場合はあるのか等について、解説します。

学校への連絡が想定されるのは、主に、警察段階と家裁送致後の2通りが考えられますので、個別にみていきます。

1 警察段階(学校・警察連絡制度について)

学校と警察が児童生徒に係る問題行動等の情報の共有化を図ることにより、児童生徒の健全育成及び非行防止並びに犯罪被害予防を行うという理念のもと、各警察署は、各自治体の教育委員会との間で、少年事件に関する相互連絡の協定を結んでいる場合がほとんどです(児童生徒の健全育成に関する学校と警察との相互連絡制度)。少年が事件を起こした際は、同協定に基づき、警察から学校に通報がされる可能性があります。

どのような場合に学校への連絡を行うかは、個別の協定の内容によりますが、多くの場合、①逮捕事案、②ぐ犯事案、③その他非行少年等及び児童・生徒の被害に係る事案で警察署長が学校への連絡の必要性を認めた事案が通報の対象とされているようです。

このうち、②ぐ犯とは、保護者の正当な監督に服しない性癖がある、正当の理由がなく家庭に寄り附かない、犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入する、自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖を有する等、当該少年の性格又は環境に照らして、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞のあることを意味します(少年法3条1項3号)。また、③警察署長が学校への連絡の必要性を認める場合というのは、たとえば日常的に非行を繰り返す等、他の生徒に悪影響を及ぼすことが予想される少年等が想定されます。

大まかに言えば、逮捕事案の他、悪質性や再犯性が高い事案も連絡の対象となると理解することができます。悪質性や再犯生が高いかどうかは、各警察署が個別に判断することになりますので、必ずしも一義的ではありません。学校への連絡可能性を少しでも下げたいのであれば、事件発覚後直ちに、弁護士を通じて、悪質性や再犯性が低く学校への連絡が不要であること、さらには学校への連絡が少年の個性にとって障害となることを説得することが肝要です。

とはいえ、警察が既に学校に連絡する方針を表明している場合は、連絡の必要性を減退させる事情を作り出さなければ、方針変更となる見込みは薄いでしょう。このような場合は、被害店舗との間で、速やかに示談を成立させると共に、学校への連絡を望まない旨の上申書の取り付けを目指すことが考えられます。一般的な刑事事件の示談書では、示談することまた宥恕文言と言って、刑事処罰を望まないことを記載することが望ましいのですが、さらに学校への連絡を望まないことまで記載した示談書を作成する必要があります。実際に、同様の弁護活動を行なったことで、学校に連絡する方針を翻意させ、連絡を回避できた例がございます。

本件は、軽微な万引きの事案で非行性も弱いため、今からでも警察の学校連絡を回避できる可能性が十分にあります。学校・警察連絡制度を熟知した弁護士に相談されることを推奨いたします。

2 家庭裁判所調査官による調査

⑴ 概要

上記のとおり、少年による刑事事件の場合、警察又は検察は、認知した事件について、全件を家庭裁判所に送致する必要があります(全件送致主義)。

送致を受けた家庭裁判所は、調査官を通じて、少年審判に向けた少年の身上調査を行うことになります。家庭裁判所の身上調査は、少年や保護者を呼び出して事情を聞く他、場合によっては学校に情報提供を求めるなどして、犯罪(非行)事実のみならず、少年の日頃の家庭環境や学校での生活態度等の実態調査を行うことが想定されます。

このように、家庭裁判所送致後も、調査官による調査の一環として、学校への連絡がなされる場合があるということを認識しておく必要があります。

もっとも、全ての非行事案について調査官の調査が実施されるかと問われれば、そのようなことはありません。

⑵ 簡易送致による例外

まず、全ての少年事件について捜査機関が証拠書類を整えて送致することは、負担が大きく、現実的に無理があります。そのため、法律上、一定の軽微な事件については、証拠書類等の添付を省略し、簡易な書類の送致だけで送致される場合があります。これを「簡易送致」といいます。

簡易送致がされた場合、送致を受けた裁判所は、基本的に少年の呼び出し調査等をすることなく、書類上形式的な審判不開始決定をして、手続きが終了します。少年にとっても負担が少なく、非行事実を争わない場合には、メリットが大きい手続であるといえます。

簡易送致となる為の要件は、「事実が極めて軽微で、犯罪の原因、動機、少年の性格、行状、家庭環境等から再犯の恐れがなく、検察官からあらかじめ指定のある」ことで(犯罪捜査規範214条)、実務上は、成人事件における微罪処分と類似の基準によって運用されています(同条2項参照)。

微罪処分になるための基準は、明確には公表されておりませんが、実際上は、①被害金額が2万円以下②犯情が軽微③被害回復がなされている④被害者が処罰を希望していない⑤素行不良者でない者の偶発的犯行であること⑥再犯のおそれがない、などの条件を満たせば、微罪処分となります。

また、少年事件の場合、犯罪捜査規範にも規定されているとおり、「少年の性格、行状、家庭環境等から再犯の恐れ」があるか否か、といった点も重要な判断要素となります。学校に毎日通学していない場合や、両親による監督が期待できない場合には、例え軽微な事案であっても、通常送致により家庭裁判所の手続に付されてしまうことは多いと言えます。

本件で簡易送致となるためには、早期段階から、これらの条件を満たしていることを警察署に積極的に伝達していくことが望まれます。本件は、軽微な万引きの事案ですから、まさに簡易送致が適切な事案と言えるでしょう。

なお、これとは別に、そもそも警察が事件自体を認知しない扱いとし、事実上の訓戒に止めるという場合が稀にあります。全件送致主義に反する取扱いであり、非公式のものですが、事件として扱うほどのものではない極めて軽微な事案においては、かかる取扱いを弁護人から要請することもあり得るところです。

⑶ 通常送致の場合でも調査官の調査が実施されない場合がある

簡易送致の要件を満たさず通常送致となる場合でも、非行の軽微性から、調査官の調査を実施するまでもなく審判不開始で終了となる可能性があります。

家裁送致後、付添人の立場で、調査官の調査を実施するまでもなく審判不開始とすべきとの意見を述べるなどして、学校への連絡可能性を可能な限り排斥していくことになります。本件のような初犯の万引き事案であれば、仮に通常送致となっても、調査を実施するまでもなく審判不開始で終了となる可能性が十分にあります。

⑷ 小括

以上のとおり、そもそも簡易送致の場合は、家庭裁判所の調査官による学校への連絡が想定されないため、捜査段階の警察との交渉においては、警察から学校への連絡を控えるよう要請するのみならず、家庭裁判所への送致方法を簡易送致とすべき点についても、積極的に要請していくべきです。

その上で、仮に通常送致となった場合は、家庭裁判所に対し、事案の軽微性から、調査官による調査を実施するまでもなく審判不開始で終結すべき旨の意見を述べるなどして、学校への連絡可能性を可能な限り排斥していくことになります。

第3 まとめ

少年事件の場合、学校への連絡を回避して穏便に済ませたいと考えるのは当然のことです。交渉により、連絡を回避することが可能な場合がありますので、学校への連絡が気になる場合は、早期段階から弁護士に相談すると良いでしょう。

以上

以上

関連事例集

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※参照条文

●刑事訴訟法

第二百四十六条 司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。

●犯罪捜査規範

(微罪処分ができる場合)

第百九十八条 捜査した事件について、犯罪事実が極めて軽微であり、かつ、検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたものについては、送致しないことができる。

(軽微な事件の処理)

第二百十四条 捜査した少年事件について、その事実が極めて軽微であり、犯罪の原因及び動機、当該少年の性格、行状、家庭の状況及び環境等から見て再犯のおそれがなく、刑事処分又は保護処分を必要としないと明らかに認められ、かつ、検察官又は家庭裁判所からあらかじめ指定されたものについては、被疑少年ごとに少年事件簡易送致書及び捜査報告書(家庭裁判所へ送致するものについては、別記様式第二十二号。ただし、管轄地方検察庁の検事正が少年の交通法令違反事件の捜査書類の様式について特例を定めた場合において、当該都道府県警察の警察本部長が管轄家庭裁判所と協議しその特例に準じて別段の様式を定めたときは、その様式)を作成し、これに身上調査表その他の関係書類を添付し、一月ごとに一括して検察官又は家庭裁判所に送致することができる。

2 前項の規定による処理をするに当たつては、第二百条(微罪処分の際の処置)に規定するところに準じて行うものとする。

●少年法

(審判に付すべき少年)

(この法律の目的)

第一条 この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。

第三条 次に掲げる少年は、これを家庭裁判所の審判に付する。

一 罪を犯した少年

二 十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年

三 次に掲げる事由があつて、その性格又は環境に照して、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年

イ 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。

ロ 正当の理由がなく家庭に寄り附かないこと。

ハ 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所 に出入すること。

ニ 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。

2 家庭裁判所は、前項第二号に掲げる少年及び同項第三号に掲げる少年で十四歳に満たない者については、都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り、これを審判に付することができる。

(観護の措置)

第十七条 家庭裁判所は、審判を行うため必要があるときは、決定をもつて、次に掲げる観護の措置をとることができる。

一 家庭裁判所調査官の観護に付すること。

二 少年鑑別所に送致すること。

2 同行された少年については、観護の措置は、遅くとも、到着のときから二十四時間以内に、これを行わなければならない。検察官又は司法警察員から勾留又は逮捕された少年の送致を受けたときも、同様である。

3 第一項第二号の措置においては、少年鑑別所に収容する期間は、二週間を超えることができない。ただし、特に継続の必要があるときは、決定をもつて、これを更新することができる。

4 前項ただし書の規定による更新は、一回を超えて行うことができない。ただし、第三条第一項第一号に掲げる少年に係る死刑、懲役又は禁錮こ に当たる罪の事件でその非行事実(犯行の動機、態様及び結果その他の当該犯罪に密接に関連する重要な事実を含む。以下同じ。)の認定に関し証人尋問、鑑定若しくは検証を行うことを決定したもの又はこれを行つたものについて、少年を収容しなければ審判に著しい支障が生じるおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある場合には、その更新は、更に二回を限度として、行うことができる。

5 第三項ただし書の規定にかかわらず、検察官から再び送致を受けた事件が先に第一項第二号の措置がとられ、又は勾留状が発せられた事件であるときは、収容の期間は、これを更新することができない。

6 裁判官が第四十三条第一項の請求により、第一項第一号の措置をとつた場合において、事件が家庭裁判所に送致されたときは、その措置は、これを第一項第一号の措置とみなす。

7 裁判官が第四十三条第一項の請求により第一項第二号の措置をとつた場合において、事件が家庭裁判所に送致されたときは、その措置は、これを第一項第二号の措置とみなす。この場合には、第三項の期間は、家庭裁判所が事件の送致を受けた日から、これを起算する。

8 観護の措置は、決定をもつて、これを取り消し、又は変更することができる。

9 第一項第二号の措置については、収容の期間は、通じて八週間を超えることができない。ただし、その収容の期間が通じて四週間を超えることとなる決定を行うときは、第四項ただし書に規定する事由がなければならない。

10 裁判長は、急速を要する場合には、第一項及び第八項の処分をし、又は合議体の構成員にこれをさせることができる。

(検察官への送致)

第二十条 家庭裁判所は、死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、決定をもつて、これを管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。

2 前項の規定にかかわらず、家庭裁判所は、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であつて、その罪を犯すとき十六歳以上の少年に係るものについては、同項の決定をしなければならない。ただし、調査の結果、犯行の動機及び態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、この限りでない。

(審判開始後保護処分に付しない場合)

第二十三条 家庭裁判所は、審判の結果、第十八条又は第二十条にあたる場合であると認めるときは、それぞれ、所定の決定をしなければならない。

2 家庭裁判所は、審判の結果、保護処分に付することができず、又は保護処分に付する必要がないと認めるときは、その旨の決定をしなければならない。

3 第十九条第二項の規定は、家庭裁判所の審判の結果、本人が二十歳以上であることが判明した場合に準用する。

(保護処分の決定)

第二十四条 家庭裁判所は、前条の場合を除いて、審判を開始した事件につき、決定をもつて、次に掲げる保護処分をしなければならない。ただし、決定の時に十四歳に満たない少年に係る事件については、特に必要と認める場合に限り、第三号の保護処分をすることができる。

一 保護観察所の保護観察に付すること。

二 児童自立支援施設又は児童養護施設に送致すること。

三 少年院に送致すること。

2 前項第一号及び第三号の保護処分においては、保護観察所の長をして、家庭その他の環境調整に関する措置を行わせることができる。

(司法警察員の送致)

第四十一条 司法警察員は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、罰金以下の刑にあたる犯罪の嫌疑があるものと思料するときは、これを家庭裁判所に送致しなければならない。犯罪の嫌疑がない場合でも、家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料するときは、同様である。

(検察官の送致)

第四十二条 検察官は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑があるものと思料するときは、第四十五条第五号本文に規定する場合を除いて、これを家庭裁判所に送致しなければならない。犯罪の嫌疑がない場合でも、家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料するときは、同様である。

2 前項の場合においては、刑事訴訟法の規定に基づく裁判官による被疑者についての弁護人の選任は、その効力を失う。