新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.368、2006/3/13 14:46 https://www.shinginza.com/qa-souzoku.htm
[家事・相続]
質問:2ヶ月前に父が亡くなり、四十九日も済みましたので、遺品を整理していたところ、父の机の引き出しから、「遺言書」と自筆で表書きのある封筒が見つかりました。先日、兄が公証役場で、父の公正証書の遺言がないことは確認したと言っており、遺言書はないと思っていたので、驚きました。初めてのことで、どうしていいかわかりません。封印がしてありますが、開けてしまっていいでしょうか。
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回答:
1.公正証書でない遺言を発見したら、できるだけ早く、家庭裁判所で、遺言書の検認という確認手続を受ける必要があります(民法1004条第1項、第2項)。封印のある遺言書は、この手続で、相続人又はその代理人の立ち会いがなければ、開封することはできません(同法同条第3項)。開封しないまま、すぐに、お父様の最後の住所地の家庭裁判所に、遺言書の検認を申し立てて下さい。
2.この手続によって、相続人全員に対して、遺言の存在が明らかになると共に、手続を受けた時点での遺言書の状態を明確にして、偽造や変造が防止されることになります。この検認を受けても、遺言書が有効だということが、法律上確定するわけではありませんし、検認を受けなくても、遺言書が無効になるわけではありません。
3.しかし、検認なしで遺言を執行したり、開封したりした場合には、5万円以下の罰則も規定されています(民法1005条)。何よりも、後日、その遺言の効力が問題になったときに、裁判所で、相続人全員で状態を確認する、正式な手続をとっていないのですから、自分にとって不利益な遺言の内容だ、と思った人から、信用できない、勝手に作ったのでは、内容を変えたのでは、等といわれたときに、有効だ、と争うことが難しくなってしまいます。
4.遺言書を偽造、変造、破棄、隠匿した人は、相続人となることができません(民法891条)し、既に他のご相続人が公証役場で確認しているとなると(1989年以降の公正証書遺言は、どこの公証役場でも、存否の確認の申し出ができます)、遺言書があるかもしれない、と意識している方がいらっしゃるわけですから、自分だけにしかわからない、とは限りません。とにかく、法的に適正な手続を行い、相続人全員に明らかにした上で、その効力等を検討することが、紛争をできるだけ起こさないための、最善の方法です。もし、ご自身での取扱いにご不安がおありでしたら、お近くの法律事務所までご相談下さい。