新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.387、2006/4/10 18:22
[商事]
質問:有限会社を経営しています。本年5月1日の「会社法」施行により、有限会社はなくなると聞きました。これに伴い,何か登記を申請する必要があるのでしょうか。
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回答:
1.新たに「会社法」が施行されることに伴い,「有限会社法」は廃止され,これまでの有限会社は,以降,株式会社として存続することになります。しかし,実質的には,施行後も従前の有限会社と同様の扱いを受けるため,会社法上の「株式会社」と区別するため,商号中においては,従前どおり「有限会社」を使用することになり,当然に「株式会社」を使用することができるものではありません。
2.会社法施行後は,従前の有限会社は「特例有限会社」と呼ばれるようになり,社員は「株主」,出資持分は「株式」,出資一口は「1株」となります。また,有限会社法で定められていた社員の数を50人以内とする制限,資本金の額を最低300万円とする制限がなくなるため,株主が50人を超えることも,資本の総額(施行後は「資本金の額」)を1円とすることも可能になります。一方で,「株式会社」と異なり,取締役会,会計参与を設置することは認められておらず,計算書類については,本店にのみ備え置くことが義務付けられ,決算公告を要しないとされています。
3.会社法施行に伴い,特例有限会社の登記事項(会社謄本)の記載について,次のような変更が登記官の職権でなされます。
(1)廃止される登記事項
ア 出資一口の金額
イ 取締役の共同代表に関する規定
ウ 合併等の公告をする方法
エ 清算人の共同代表に関する規定
オ 支配人の共同代理に関する規定
(2)職権で登記事項が新たに記録されるもの
ア 発行可能株式総数及び発行済み株式の総数
イ 株式の譲渡制限に関する定め
ウ 公告をする方法
(3) 登記事項名が変更されるもの
ア 資本金の額(旧 資本の総額)
イ 存続期間 (旧 存立時期)
4.以上のとおり,有限会社法がなくなることにより,直ちに当該有限会社から,特別な登記申請を要するというものではありません。但し,会社法施行前に有限会社の定款において下記事項を定めている場合には,その定めは,会社法108条1項1号から3号に掲げる事項についての定めのある種類株式とみなされる(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律10条)ため,施行日(5月1日)より6ヶ月以内(これより前に他の登記を行う場合には当該他の登記と同時)に,その登記申請をなすものと定められていますので,注意が必要です。
ア 有限会社法39条1項但書に関する事項(議決権または議決権を行使できる事項について,別段の定めを設けている場合)
イ 有限会社法44条(利益配当),または73条(残余財産の配分)において,別段の定めを設けている場合で,その定めが持分に関するものであるとき
なお,一般的な有限会社においては,定款で上記のような別段の定めを設けていることは非常に稀であるため,新法施行により,必ず登記申請を要する有限会社の数は極僅かであると言えます。