新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.402、2006/4/26 16:20

[民事・消費者]
質問:私は,3年制のある専門学校の学生です。今度,第2学年に進級するので,先日,第2学年分の学費や施設使用料などを学校に支払ったばかりなのですが,第1学年のときの授業の内容があまりに稚拙でひどいもので,授業を担当する先生のほとんどが,法律で決まっている資格を有していないようであり,さらに,入学する際に参考にした入学パンフレットに記載されているカリキュラムと全然異なる内容の授業ばかり行われていたことなどから,これ以上この学校にいても時間の無駄で勉強にならないと考え,この学校を退学したいと思っています。このような場合,私が支払った第2学年分の学費などは返ってくるのでしょうか。また,授業内容がひどく,全く勉強にならなかった第1学年分の学費までも返ってくるのでしょうか。

1、専門学校に限らず,学校などに入学して入学金や学費を払い,その対価としての授業等の教育サービスを受ける場合において,学校と生徒は在学契約(入学契約)により,法的に拘束される関係となり,その契約内容は,それぞれの学校で規定されている学則や入学案内などのパンフレットなどの解釈により確定されることになります。
2、そこで,ご質問の学費等が返還されるかについては,第1に,学則などに規定されている学費返還に関する条項に従うことになりますが,そもそも学費は,学校側の教育を提供するというサービスへの対価として支払われるものですので,どのように規定されているにせよ,第2学年の授業を受け始めてしまいますと,第2学年分の学費等の返還請求が法律上認められなくなる可能性が高まってしまいますので,退学の決意が固いようであれば,まず,第2学年の授業を受け始める前に,学校側に対して明確に退学の意思表示をした方がよろしいでしょう。
3、そして,納付済みの学費が返還されるかについてですが,学校側と話し合っても返還されない場合,内容証明郵便などを利用してさらに返還請求を行い,それでも第2学年の学費すら返還されないような場合には,弁護士などの専門家に学校側との交渉,さらには,学費等の返還や慰謝料の支払いを求める民事訴訟の提起を依頼し,裁判上で争う必要が出てきます。
4、もっとも,納付済みの学費のうち,裁判上,どの部分の返還が認められるかにつきましては,個々の事情により異なってきますが,基本的に,本件のようなまだ授業を受けていない第2学年分の学費に関しては,学校側が債務を履行していない部分といえますので,返還請求を認める判決が出る可能性が比較的高いと言えるでしょう。
5、そして,すでに受講済みの第1学年の学費に関しては,形式的には学校側は授業の提供というサービスを生徒に対して供給していることからすると,授業の質が低かったという一事をもって返還請求が認められることは基本的に困難であると言えますが,カリキュラムが入学パンフレットと全く違う,法律で規定されている資格を有さない教員がほとんどの授業を行っている,その他法律で規定されている教育体制で授業を行っていないなど(例えば,一度に授業を行うクラスの定員が法律の規定よりも多い場合など。)の事情がある場合には,学校側が授業を提供するという債務を完全に履行していないという理由で,第1学年分の学費の一部,場合によっては全部について返還請求が認められる可能性も出てきます。
6、学費の返還請求に関しては,学校教育法,教育基本法などの関係法規の他,その学校を所管する各省庁が定める省令など,関係法規が多岐にわたる可能性が高いと言え,学校側が全く返還に応じない場合などは,一度,弁護士等の専門家にご相談されるとよいと思います。

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