新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース ≪参考条文≫ (刑法175条)わいせつな文書、図画その他の物を頒布し、販売し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役又は二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処する。販売の目的でこれらの物を所持した者も、同様とする。
No.408、2006/5/15 15:45
[刑事・違法性]
質問:先日、インターネットのアダルトサイトにクリックしたところ、中学生くらいの女性のモザイク無しの猥褻画像を見つけたので、これを自分のパソコンに保管し、親しい友人と一緒に鑑賞しました。ところが、この行為は、児童ポルノ禁止法(「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」)に触れている可能性があるので、警察が捜査し、私のアクセス記録が残っていた場合、逮捕されてしまうのではないかと不安になりました。今からでも画像データを処分すれば罪に問われないでしょうか。画像の女性が18歳以上だった場合はどうでしょうか。
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回答:
1.児童を性的虐待から保護することを目的として、平成11年に「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」が制定され、その7条に「児童ポルノを「所持」等した際に処罰される旨の規定が設けられたため、あなたのような不安を持つ方が出てきました。本件では、「中学生のモザイク無しの猥褻画像」ということですから、同法2条3項3号の「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したもの」ということができ、「児童ポルノ」に該当するといえ、さらに、パソコンのハードディスク内に保管することは「所持」といえますので、本条に該当するか心配になると思います。
2.しかし、この7条の規定は、所持をどんな場合でも禁止するものではなく、1項の目的、つまり「児童ポルノを頒布、販売、業として貸与、公然陳列」の目的をもって所持した場合というように、目的が明示されているので、あなたの場合もこの目的がなければ処罰されることにはなりません。
3.ところで、あなたの場合、友人と一緒に鑑賞したので、これが「児童ポルノを頒布、公然陳列」したものと考えられないでもなく、所持はそのための手段とも解することができ、7条1項、2項に該当する可能性があるのではとの質問です。しかし、「頒布」は不定多数人に配付すること、「公然陳列」は不特定又は多数の者が閲覧できる状態に置くことをいい、友人1人と一緒にその場で「見た」というだけなら、配付もなく、不特定または多数の者の閲覧可能性もなく、本条に該当しないでしょう。画像の女性が18歳以上の場合はそもそもこの規定の適用外です。ところで、実際は18歳未満の女性のポルノを18歳以上の女性のものと思って頒布の目的で所持した場合についてですが、18歳未満であるとの認識がないので、故意がなく本罪は成立しません。
4.なお、ホストコンピュータのハードディスクに記憶、蔵置された画像データを不特定多数の者が認識できる状態に置いた場合には、わいせつ物を公然陳列したといえ、刑法175条のわいせつ物公然陳列罪が成立するというのが判例です(最高裁平成13年7月16日)ので、あなたの場合も、ハードディスクをサーバーとして児童ポルノのデータを不特定多数の者が受信できる状態にするなどの場合には、刑法のほか児童ポルノ禁止法7条1項、2項違反ということになるでしょう。但し、児童ポルノ禁止法は刑法の特別法ですので、成立するのは児童ポルノ禁止法のみです。そして、画像の女性が18歳以上だった場合、児童ポルノ禁止法は成立せず、刑法175条のみが成立することとなります。
(児童ポルノ頒布等)
第七条 児童ポルノを頒布し、販売し、業として貸与し、又は公然と陳列した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
2 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。
3 第一項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。