新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.409、2006/5/15 15:55

[民事]
質問:結婚するので、これまで利用していなかった先祖代々の土地に建物を建てようと思います。私はこの土地について祖父から遺贈を受けて登記をしたもので、土地の実測などしていないので、詳しいことはわかりません。土地の形状からすると、南側の辺2mが幅4mの公道に接しているので家が建てられると思うのですが、東側の隣家との間には幅約20pのブロック塀があり、隣人は、ブロック塀自体は隣人の土地内にあるもので、私の土地はブロック塀を含まない部分だと言っています。しかし、この話が本当だとすると、私の土地が公道に接する部分は180pになってしまい、家が建てられなくなります。父に確認すると、ブロック塀は曾祖父の代に造ったらしいので、私の土地こそブロック塀全部を含んでいるはずだとのことでした。隣人が言うには、昔からこの辺の土地の測量方法は1間、2間単位で行われていたので、私の土地の間口は1間(約181p)だと主張して譲りません。何とかできないでしょうか。

回答:
1.質問では、あなたが登記をした土地と隣人の土地の境界線がどこなのかが問題となっています。即ち、ブロック塀が立っている幅約20pの土地が、あなたのものなのか隣人のものなのか不明であり、双方の土地の境界に関する認識が、あなたはブロック塀の隣家側の縁(へり)、隣人はあなた側の縁、となっており、一致していません。
2.このような境界線の争いは、どこを境界にするかについて当事者どうしで話し合い、共通認識を得られればよいのですが、話がまとまらない場合は、境界確定訴訟を起こすことになります。境界確定訴訟とは「隣接する土地の境界線について争いがある場合に、判決によって境界線を確定することを求める訴え」のことで、判決によって一定の効果が形成される形式的形成訴訟と言われます。ただし、当事者が合意したからといって、それだけで境界が確定するわけではなく、境界と所有権の範囲とは別のもの(即ち、隣人同士で境界線を定めたとしてもそれは隣人同士で所有権の範囲を決めたということであって、境界線の定めとして裁判所を拘束しないとの趣旨)というのが判例です(最高裁昭和42年12月26日)。境界確定訴訟では、土地の占有状態、形状、地積、登記所に備え付けの公図や不登法17条地図、境界石、道路その他客観的な資料に基づいて境界が判断されます。訴訟の途中で、不動産鑑定士や測量士に境界の鑑定を依頼することもあります。鑑定費用は、原則として当事者の負担ですが、裁判所の依頼などで任命された場合は、通常は折半となることが多いです。鑑定費用は事案の内容によって異なりますが、30〜50万円程度かかります。判決までの期間についても、訴訟という性格上、早くても1年程度は見ておく必要はあるでしょう。もっとも、裁判所は境界がどこかを確定できる段階になったところで、和解による解決を当事者双方に提案する場合もあり、係争土地の帰属によっては金銭で調整・解決する手法もとられます。但し、先の判例からすると、境界自体を内容とする和解・調停はできないので、「境界の確定」としてではなく、「所有権の範囲の確認」として和解・調停を成立させるようです。
3.ところで、あなたの場合は、結婚のために家を建てたいのですから、長い間裁判中では家が建てられず、損害を被る事態となります。そこで、不動産登記法の一部の改正により、平成18年1月20日から、これまでの裁判所による境界確定訴訟以外に境界を定めることができる「筆界特定制度」が始まりました。筆界特定制度は,筆界特定登記官が,土地の所有権の登記名義人等の申請により,申請人等に意見及び資料を提出する機会を与えた上,外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて,筆界の現地における位置を特定する制度です(不動産登記法123条以下)。本件では、あなたが、対象となる土地の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の筆界特定登記官に対して,筆界特定の申請をすることになります(同法131条)。申請手数料は,対象土地の価額によって決まりますが,対象土地(あなたの土地と隣人の土地、2筆の場合)の合計額が4,000万円の場合,申請手数料は8,000円です。審理では、筆界特定登記官があなたの申請に基づき、法務局内及び区役所、県庁、区画整理事務所等関係機関から当該筆界を特定するに必要な資料を収集するとともに、申請人や隣人(関係人)から話を聞いたり意見書を提出させたり(同法139条)、筆界調査委員である土地家屋調査士などが現地調査・測量などして提出した意見書(同法142条)を踏まえ、双方の土地の状況、工作物、囲障、境界標の有無その他あらゆる事情を考慮して、筆界を特定します(同法143条)。特定した筆界の内容は公告するとともに、申請人や関係人に通知します(同法144条)。筆界特定に不服の場合は、従来の境界確定訴訟となります(筆界特定登記官を被告にするのではありません)。
4.以上であり、あなたの場合、父からブロック塀の建立経緯について事情を聴取し、隣人と話し合いで解決できないか、無理なら筆界特定の申請、それでも不服なら境界確定訴訟を行うことになるでしょう。

法律相談事例集データベースのページに戻る

法律相談ページに戻る(電話03−3248−5791で簡単な無料法律相談を受付しております)

トップページに戻る