新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.413、2006/5/24 14:56
[民事・不法行為]
質問:傷害事件の被害者です。加害者からの暴行で失明してしまい,その損害額を加害者に支払ってもらおうと思い,加害者と交渉しました。しかし,加害者には支払う意思がないので,弁護士に依頼して訴訟を提起しようと考えています。依頼した弁護士に支払う弁護士費用を加害者に負担させることはできるのですか。
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回答:
1、結論から回答しますと,依頼した弁護士に支払う弁護士費用の全額を加害者に負担させることができるとは限りませんが,一定限度で加害者に負担させることは可能です。まず,弁護士に訴訟を依頼した時にかかる費用には,@着手金(弁護士による委任事務処理の成功不成功の結果にかかわらず,依頼時に支払う委任事務処理の対価),A報酬金(弁護士による委任事務処理の成功の程度に応じて,支払う委任事務処理の対価),B交通費,通信費等の実費,C日当(弁護士が委任事務処理のために事務所所在地を離れ,移動によってその事件のために拘束されることの対価)などがあります。
2、そして,訴訟で勝訴した当事者は,敗訴した当事者に,訴訟費用を負担させることが可能なのですが,弁護士費用は訴訟費用に含まれないと解されています。しかし,本件のように,加害者に支払う意思がない場合,被害者は訴訟を提起せざるを得ませんが,被害者は,弁護士に依頼しなければ十分な訴訟活動を行うことはできず,弁護士に依頼せざるを得ないことを考慮しますと,訴訟で勝訴した被害者が弁護士費用を全額負担しなければならないと考えるのも不合理な結果となります。そこで,最高裁判所(昭和44年2月27日判決)は,弁護士費用が,事案の難易,請求額,認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる範囲内のものにかぎり,不法行為と相当因果関係に立つ損害であるとして,加害者に対する弁護士費用の請求を認める旨の判決を下しています。
3、但し,判例の傾向からしますと,加害者に負担させることができる弁護士費用は,被害者が負担した弁護士費用の全額ではない傾向にある点に注意が必要です。判例は,弁護士費用を除いた認容額の10パーセント前後の額を認める傾向にあります。そして,認容額が少額になる程,10パーセントから増額した額を認める傾向にあり,また,逆に認容額が多額になる程,10パーセントから減額した額を認める傾向にあります。