新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.424、2006/6/12 15:22 https://www.shinginza.com/qa-seikyu.htm
[民事・契約]
質問:私は友人に貸したお金が返ってこないので,簡易裁判所に対して100万円の支払いを求める本人訴訟を提起し,裁判の結果,60万円の請求を認める判決が出ました。請求額の半分程度しか認められなかったので控訴したいという気持ちもありますが,判決を確定させて早く終わらせたいという気持ちもあります。そこで質問なのですが,@控訴をする場合,いつまでに,どのような手続をすればいいのでしょうか。A自分が控訴しない場合でも相手が控訴してきた場合は,自分はもう控訴することはできないのでしょうか。B相手が控訴したかどうかはどのように確認すればよいのでしょうか。控訴するかどうか悩んでいますので,よろしくお願いします。
↓
回答:
1、民事裁判では,第1審の判決内容に不服がある場合に控訴することができます。そして,第1審が地方裁判所の場合は,第2審を担当するのは高等裁判所になりますが,今回のように第1審が簡易裁判所の場合には,高等裁判所ではなく地方裁判所が第2審を担当することになります。次に,控訴は,第1審の判決内容に不服があればどのような場合でもできる訳ではなく,原則として,判決主文に着眼し,全部勝訴であった当事者は控訴することはできません。例えば,原告が,100万円の支払を求めた裁判で100万円の支払を認める判決が出た場合,原告は,判決の理由が納得いかないとして控訴することはできません。一方で,今回のように,100万円の支払を求めた裁判で60万円の支払を認める判決が出た場合,原告にとっては,残りの40万円については部分的に敗訴しているといえますので,原告は,残りの40万円についても認めるよう控訴することができます(いわゆる一部認容判決)。
2、では,個別のご質問に対して回答致します。まず,@控訴期間ですが,これについては法律で厳格に定められており,第1審の当事者が判決書(又はこれに代わる調書)の送達を受けたときから2週間とされています(民事訴訟法285条)。例えば,4月1日(火)に判決書の送達を受けた場合には,4月15日(火)までに控訴をしなければいけないことになります(民事訴訟法285条1項,95条,民法140条。なお,期間満了日が,土曜,日曜,祝日等にあたる場合には,民事訴訟法95条3項に例外規定があります。)。また,第1審の当事者が送達を受けたときからカウントしますので,各当事者で送達日が異なる場合には当事者によって控訴期間満了の時期が異なることになり,例えば,第1審の被告の方が原告よりも1日遅く送達を受けた場合には,被告の控訴期間満了日は原告のよりも1日遅い日となります。
3、そして,控訴の方法についてですが,控訴は,控訴状を第1審の裁判所に提出することによって行うと定められています(民事訴訟法286条1項)。控訴審をするのはあくまで第2審を担当する裁判所なのですが,控訴状自体は,第1審裁判所に提出することになっておりますのでご注意下さい。今回のケースでは,第1審が簡易裁判所なので,控訴状を簡易裁判所に提出することになります。
4、次に,Aの質問についてですが,例えば,自分自身が控訴をしないで自分の控訴期間が満了したあとに,相手方から控訴があったことを知ることがあります。このような場合,相手方から控訴があった以上,第1審の判決は確定せず,引き続き第2審の審理が行われることになるのですが,自分の控訴期間が満了している以上,一見,控訴できないようにも思われます。
5、しかし,不服とした部分しか審理を行わない控訴審において,これではあまりに控訴しなかった当事者に不利となることから,民事訴訟法は,このような控訴しなかった当事者のいわゆる「後出し」のような控訴を認めています。このような控訴を「附帯控訴」といい(民事訴訟法293条),今回のケースにおいて,自分が控訴しなかったが相手方が控訴してきた場合に,自分の控訴期間が過ぎていたとしても,第1審で認められなかった40万円の部分について附帯控訴することができます。
6、最後に,Bの質問について,相手方が控訴したかについては,裁判所にもよりますが,基本的に第1審を担当していた裁判所の担当部又は事件係へ問い合わせることにより確認することができます。