新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.428、2006/6/30 10:39 https://www.shinginza.com/qa-kojinsaisei.htm

[債務整理・再生]
質問:個人再生の方法として給与所得者再生と小規模個人再生という手続きがあると聞きましたが、私はどちらの手続きを選べばいいのでしょうか。どちらでも選べるのですか。

回答:
1、あなたがどちらの手続きをとるべきかを説明する前に、まず、給与所得者再生と小規模個人再生の両方に共通する点を、破産や任意整理と比較しながらおおまかに説明します。給与所得者再生と小規模個人再生を合わせて個人再生ということがありますが、個人再生というのは、全ての債務が免責される代わりに、基本的には財産も全て換価して債権者の配当にあてるという破産と違って、基本的には財産を残しつつ、債務を圧縮することによって債務の整理をするものです。同様に、財産を維持しながら、債務を整理するも方法として、弁護士が介入しての任意整理という方法がありますが、利息制限法による引き直し計算によって、債務を圧縮して、債務の整理をするという点では個人再生と共通ですが、利息制限法で引き直し計算をしてもあまり減額できず、今後の弁済計画が立てられないような場合や住宅ローンに抵当権がついていて、抵当権を実行しないという約束が銀行にして頂けないような場合などには、任意整理ではなく、個人再生の手続きの検討をせざるを得ないということになります。すなわち、個人再生の手続きというのは、@財産(特に住宅)を維持しながら、A住宅ローン以外の債務については利息制限法で引き直し計算した金額の最大で20%まで圧縮し、BAの金額を基本的には3年間で支払っていく(住宅ローンについては別途支払っていくことが必要になります。)ということを可能とする債務整理の手続きということになります。ただし、個人再生の手続きは、少なくとも半年の期間がかかりますし、弁護士費用も任意整理や破産と比べると割高であることが多いと思われます。
2、給与所得者再生の手続きと小規模個人再生の手続きの大きな違いは、上記Aに関して、給与所得者再生の手続きでは、小規模個人再生で要求される要件に加え、可処分所得という要件が加わるということと、上記Bに関し、再生計画が認められるかどうかに関して、小規模個人再生では、議決権の過半数が積極的に反対すると再生計画が認可されないが給与所得者再生の場合には、この要件がないという点にあると思われます。両者の選択にあたり、給与所得者再生は、その名の通り、「給与所得者」を対象にしていますから、自営業を営まれている方はこれを使えないなどということはありますが、逆に言えばいわゆるサラリーマンの方がどちらを使うかは、この違いが結論を左右することになると思われますので、以下、それぞれついて、もう少し説明します。
3、Aに関して、住宅ローン以外の債務について、最終的に返済していかなければいけない金額は、小規模個人再生の場合、おおまかな考え方としては、債務総額の20%(ただし、債務総額が100万円以下の場合はそのままの金額ですし、債務総額の20%が100万円以下の場合には100万円になりますので、注意して下さい。逆に20%が300万円を超える場合には300万円になります。)か申し立て時に有する差押が可能な財産の評価額のどちらか多い方ということになります。例えば、利息引き直し計算後の住宅ローン以外の債務が350万円であるが、時価200万の車を所有している場合には、弁済総額は100万円と200万円の多い方で200万円ということになります。給与所得者再生についても基本的な考え方については同様ですが、一定の計算方法で算出する可処分所得の2年分(要するに収入から最低生活費を引いた額の2年分)が上記の200万円より多ければ、その金額を返済する必要がでてくるということになります。
4、Bに関して、議決権の過半数というのは、債権額を基準とするので、例えば、100万円、40万円、50万円の3社が債権者としていた場合に、40万円と50万円の債権者が同意していても、100万円の債権者が積極的に異議を出した場合には再生計画は認可されないということになります。
5、以上からすれば、可処分所得の要件が加わっても、返済しなければいけない総額が増えないのであれば、再生計画について、債権者の同意を要しない給与所得者再生の方が良いということになりますし、逆に総返済額が増えるようであれば、異議の可能性も考慮しつつ、小規模個人再生を選択する、というのが一般的な考え方になるかと思われます。もっとも、小規模個人再生を申したて、再生計画が認可されない場合に、申し立てを取り下げて、給与所得者再生を再度申し立てることも可能ですし、また、上記以外にも、事案によっては、両者の選択にあたって他にも考慮すべき事情がある場合もありますので、詳しくは専門家にご相談下さい。

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