新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.434、2006/6/30 10:53
[民事・契約]
質問:私は,10年ほど前,1年後に全額返してもらうという約束で,友人に100万円を貸したのですが,その友人は約束通り返してくれないどころか,現在に至るまで1円も返してくれません。そこで,最近になって法律相談を受けたところ,このままだと時効が成立してしまって返してくれと言えなくなるかもしれないから,内容証明郵便を利用して,その友人に返還請求をした方がいいとのアドバイスを受けました。私は,これまでこの「内容証明郵便」というものを全く使ったことがないのですが,これは,一体,どのような郵便なのでしょうか。また,これを出すと何か法的に特別な効果が生じるのでしょうか。よろしくお願いします。
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回答:
1、まず,内容証明郵便というのは,「郵便物である文書の内容が公的に証明される郵便」のことをいいます。現在,郵便の送り方としては,普通郵便(通常郵便物),書留,速達など様々な種類が存在しますが,内容証明もそのような送り方の一種と言えます。ですので,内容証明自体が,ある決まった文書内容などを意味するのではありませんし,逆に,内容証明で送る文書の内容は,定まった形式さえ守っていれば,どのような内容でも記載して相手方に送付することができます(現在は,インターネットを利用して送付することができる電子内容証明郵便というサービスもあります。)。そして,内容証明郵便は,送付した文書の内容及び郵便を差し出した日付が公的に証明されるという点において他の郵便と異なる効果が生じてきます(差し出した文書の謄本は,5年間郵便局に保管されます。)。また,オプションとして,配達証明という特殊取扱を付加することによって,相手方に送達された日付についても,公的な証明を受けることができます。
2、次に,内容証明郵便自体になんらかの法的効果や強制力を生じさせる効力があると考えている方がよくおられますが,これは誤解であり,法的効果などが生じるのは,あくまで送付した文書の内容自体に基づくものであり(例えば,クーリングオフを主張することなど。),同じ内容の文書を普通郵便で送ったとしても法的効果は生じることになります。このような内容証明郵便を利用すべきケースとしては,まず,法律上重要な意思表示をする場合が考えられます。例えば,クーリングオフの通知をしたにもかかわらず,後日,相手方業者が,「そのような文書は受け取っていない。」などと争ってくることがありますが,内容証明郵便で通知を送っておけば,クーリングオフを主張する内容の文書を送ったことに加え,差出日及び送達日(配達証明付の場合)までも公的に証明されますので,相手方がそのような争い方をしてくる可能性がほぼなくなります。また,内容証明には,他の送付方法と異なり,受け取った相手方に対して,「放置していたら,裁判にされるかもしれない。」という心理的なプレッシャーを与えるという事実上の効果もあるといえますので,今回のケースのような貸金返還請求の場合に,相手方に任意の支払を促すという意味で,一定程度の効果が期待できることもあります。
3、以上を前提として今回のケースについて検討しますと,ご友人にお金を貸し付け,支払期限から10年経過してしまいますと消滅時効が成立してしまい(民法166条,167条),その後,相手方から時効援用(民法145条)という意思表示をされてしまいますと,以後,返還請求ができなくなってしまいますので,この時効完成を妨げるため,相手方に何らかの返還請求を行うべき場面と思われます。もっとも,今回のように裁判外で請求する場合ですと,さらに6か月以内に訴訟提起等を行わないと消滅時効の効力を防ぐ効果が失われるのですが(民法153条),仮にその期間内に訴訟提起したとしても,相手方から,「そのような返還請求の手紙など受けていない。すでに時効が成立している。」などと主張される可能性もあります。
4、しかし,返還請求の通知を配達証明付内容証明郵便によって行っておけば,あなたからご友人に対して貸金の返還を求める内容の文書が送られたことに加え,いつ出したのか,いつ相手方に届いたのかについても公的に証明されますので,さきほどのような相手方の事実に反する主張を事前に防止することができます。ですので,今回のような法的に重要な意思表示をする場合には,将来の紛争防止のため,なるべく配達証明付内容証明郵便で文書を送付するとよろしいでしょう。