新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.462、2006/8/24 10:06
[税務]
質問:夫が先月6月に突然死亡しました。夫の財産は、自宅不動産が6000万円、預金2000万円、株式が約1000万円あります。夫は会社員ですが2ヶ所から給与を得ていたので毎年確定申告をしていました。相続人は妻である私と子供2人です。相続税はかかりますか。夫の場合は、準確定申告をしなければならないと聞いたのですが、それは何ですか。ちなみに葬式費用は300万円かかりました。自宅不動産には2000万円のローンが残っています。
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回答:
1.準確定申告とは、確定申告すべき人が年の途中で亡くなった場合、その年の1月1日から亡くなった日までの所得を申告することをいい、相続人は、相続があったことを知った日から4か月以内に被相続人の所得税の確定申告をしなければなりません。準確定申告をしなければならない人は、下記要件に当てはまる人です。
(1)2ヵ所以上から給与を受けていた場合。
(2)給与収入が2000万円を超えていた場合。
(3)給与所得や退職所得以外の所得が合計で20万円以上あった場合。
(4)医療費控除の対象となる高額の医療費を支払っていた場合。
(5)同族会社の役員や親戚などで、給与の他に貸付金の利子、家賃などを受け取っていた場合。
あなたの夫の場合は、2ヶ所以上から給料を得ていたため毎年確定申告をしていたということですから、夫が亡くなって4ヶ月以内すなわち10月までに相続人が準確定申告をすることになります。相続人が2人以上いる場合には、各相続人が連署により準確定申告書を提出することになりますが、他の相続人の氏名を付記して各人が別々に提出することもできます。この場合には、他の相続人に申告した内容を通知しなけばならなりません(所得税法16、85、124、125、所令263、所規49、所基通85―1、124・125−4等)。
2.次に相続税がかかるかどうかについてですが、相続税は、相続で取得した正味財産額が、基礎控除額を超える場合に課税されます。正味相続財産額とは、遺産総額から債務・葬式費用、非課税財産を控除したもので、基礎控除については定額控除が5000万円、法定相続人比例控除が1人につき1000万円となっています(配偶者の場合は、取得財産が1億6000万円又は配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い方までは非課税となります)。従って、あなた方の場合は、定額控除が5000万円、法定相続人が3人ですので3000万円、合計8000万円の基礎控除額があります。また、相続財産の額ですが、額面だけ見ると、土地建物6000万円、預金2000万円、株式1000万円と合計9000万円になり、8000万円の基礎控除を引いても1000万円は残ることになり、1000万円に対して相続税がかかるようにも思えますが、相続財産は正味で計算することになるため、必ずしも1000万円全額に対して相続税がかかるわけではありません。
3.自宅不動産の評価方法は、土地は通常路線価にて、建物は固定資産税課税上の評価額で評価します。路線価も固定資産税の課税評価額も通常は取引価格よりも低く評価されますので、必ずしも自宅不動産の評価額が6000万円ということにはなりません。路線価は取引価格よりかなり低く、さらに建物は築20年を経過していますので、ずっと低い評価となると思われます。預金と株式は時価評価です。また、葬式費用を引くことができ、債務である住宅ローンの額2000万円も引かなければなりません。そして、準確定申告において納付すべき所得税については、相続税の申告において相続財産の債務として控除ができます。従って、仮に自宅不動産の評価額が3000万円、準確定申告で納付すべき所得税10万円とすると、正味相続財産は(3000万+2000万+1000万)−(300万+2000万+10万)=3690万円となり、基礎控除額8000万円を超えないため、相続税はかからないことになります。
4.従って、あなたの場合は基礎控除額の範囲内ですので、相続税に関する申告も納税も不要となります。但し、準確定申告は必要です。