新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース ★本件は,平成18年版赤本のP.77の事案を参考にしています。内容を確認する場合は,参照して下さい。
No.473、2006/9/21 13:27 https://www.shinginza.com/qa-jiko.htm
[民事・不法行為]
質問:長男が交通事故に遭い,死亡してしまいました。長男は収入のない3歳の子供ですが,逸失利益は認められるのでしょうか。
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回答:
1,逸失利益とは,被害者が死亡したことにより被った,仮に被害者が生きていれば,将来得られたであろうと考えられる所得などの経済的損害のことを言います。そして,収入のない未就労者が死亡した場合であっても,裁判実務では一般に,逸失利益は認められております。そして,18歳未満の未就労者の死亡による逸失利益は,裁判実務では一般に,「基礎収入額×(1−生活費控除率)×(就労可能年齢に達する年数に対応する中間利息控除係数−就労始期年齢に達する年数に対応する中間利息控除係数)」で計算されます。
2,まず,「基礎収入額」は,有職者の場合,原則として,事故前の年収額を基礎とします。ただ,未就労者の場合,まだ就労しておりませんので,裁判実務では一般に,賃金センサスによる男女別学歴計全年齢平均賃金を基礎とし,例えば,賃金センサス平成16年男子学歴計全年齢平均賃金は,542万7000円とされています。
3,次に,「生活費控除率」とは,仮に被害者が生きていれば,収入がある反面,生活費もかかりますので,その分を控除するべきとの考えに基づくものです。そして,裁判実務で尊重される,財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している,民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(通称「赤本」)(平成18年版)によりますと,「生活費控除率」は,男子(幼児を含む)の場合,50%程度とされています。
4,最後に,裁判実務では一般に,労働可能年齢は67歳までとされ,また,就労始期年齢は18歳からとされています。そして,「中間利息控除係数」とは,仮に被害者が生きていれば,18歳から67歳まで収入がありますが,将来に及んで発生する損害額を,通常は一時払いされることになりますので,その間の利息相当額を控除するべきとの考えに基づくものです。そして,平成18年版赤本によりますと,「67歳に達する年数(67歳−3歳=64年)に対応する中間利息控除係数」は,19.1191,とされ,「18歳に達する年数(18歳−3歳=15年)に対応する中間利息控除係数」は,10.3796とされています。
5,よって,本件で,裁判では,「542万7000円×(1−0.5程度)×(19.1191−10.3796)=2371万4633円程度」の逸失利益が認められる可能性があります。