新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.478、2006/9/21 14:05

[民事・不法行為]
質問:私は男性で公務員ですが、同僚と不倫関係になり、相手方夫の代理人から謝罪と慰謝料請求の内容証明が来ました。ほっておいたところ慰謝料600万円を求める損害賠償請求の訴状と裁判所に1ヶ月後に出廷するようにとの口頭弁論期日の呼び出し状が送られてきました。幸い、私の妻にはまだ知られていません。立場上公にしたくないのですが、どうしたらいいでしょうか。ちなみに口頭弁論期日ってなんでしょうか。都合が悪い場合変更も出来るのでしょうか。

回答:
あなたのご質問については、ほぼ同様の事案が、当事務所ホームページNo,300にございますので御参照してください。今回は、口頭弁論期日までの訴訟の流れについて、詳しく説明致します。御了承ください。
(1)訴えの提起から訴訟係属について
通常の民事訴訟において、訴えの提起は、原告となる者が訴状を裁判所に提出してなされます(民事訴訟法133条1項)。そして裁判長が訴状に不備が無いかチェックします。不備がある場合、その補正を促して(同法137条1項)、不備が無い場合、原告によって提出された副本によって、被告に対し訴状の送達が行われます(同法138条、民事訴訟規則58条1項、なお、送達については民事訴訟法98条〜113条を参照)。この送達が被告になされ、被告が訴状を受け取った時点で、訴訟が係属したことになります。
(2)口頭弁論期日について
口頭弁論期日とは、口頭弁論の行われる期日です。そして口頭弁論とは、訴訟手続中において、当事者が主張立証・攻撃防御を尽くし、証拠調べを経ることによって、裁判所が争点に関して心証を形成して最終判断に至るまでの訴訟審理の時間的・場所的空間をいいます(但し、法文が用いている口頭弁論は多義的です)。裁判長は、訴えの提起によって速やかに、(初回)口頭弁論期日の指定をし(民事訴訟規則60条1項本文、民事訴訟法93条1項)、当事者に呼出状を送付することになります(民事訴訟法139条)。本来、民事訴訟は私人間の紛争を解決する場であり、私的自治の妥当する場面です。他方訴訟は日々大量に係属することから、訴訟は、公平で、適正な、そして国の機関を利用するのですから無駄な経費がかからないように【訴訟経済といわれています】迅速な解決が求められます(民事訴訟法2条)。このような適正、公平、迅速で低廉な裁判を行うため、訴訟の主張内容については当事者に任せ【当事者主義といわれています】、訴訟手続き、進行に関しては裁判所側が主体的役割をなし、裁判長が期日を指定するのです【職権主義といわれています】。その後の続行期日についても、裁判長が指定します(同法93条1項)。以上の観点から期日の変更について説明します。
(3)期日の変更について
上記のように、公正、迅速な裁判のために期日を指定しているわけですから、原則としては期日のままに、口頭弁論が行われることになります。しかし、当事者が突如期日に出廷来られなくなるケースも考えられます。その場合、変更の申立てをして、以下の要件を充たした場合、期日の変更が認められます(民事訴訟法93条各項)。
@弁論準備手続の期日及び弁論準備手続を経ていない口頭弁論期日の場合
顕著な事由が必要です。顕著な事由とは、例えば、当事者・代理人の急病、縁者の不幸当により出頭できない場合や示談進行中などがこれにあたると解されています。ただし最初の期日である場合、当事者の合意があれば期日変更は認められます。もっとも顕著な事由は疎明することを要し、疎明資料を提出しないときは変更申立てを却下しなければなりません(最判昭24.8.2民集3−312)。すなわち、単に裁判所に行くことについて気が進まないとか、都合が悪いというだけでは変更は出来ないことになります。
A弁論準備手続を経た口頭弁論期日の場合
全ての期日変更において、やむを得ない事由が必要です。やむを得ない事由とは、顕著な事由より狭く、当事者にどうしても期日に出頭できない事由があり、かつ、代理人、復代理人等に依頼できず(最判昭28.5.29民集7-623)、又は他人に委任したのでは目的を達し難い事項に関する場合などがあたるとされています。なお調査不十分では、やむをえない事由にはあたらないことに注意する必要があります(民事訴訟規則64条)。
B以上の例外として第一回の口頭弁論期日は当事者の合意で変更することが認められています。期日指定は裁判所の権限であり、訴訟の迅速化も必要ですが、第一回だけは当事者の準備、話し合いもあり例外的に当事者に権限を認めています(民訴 93条3項但し書き)。
(4)口頭弁論期日まで
口頭弁論は書面で準備しなければなりません(民事訴訟法161条1項)。被告としては、原告の訴えに対して、答弁書(被告の本案の申立てを記載している準備書面を特に答弁書と言います)を作成します。この準備書面を提出すると、初回口頭弁論期日準備書面に欠席した場合でも、記載した事実を陳述したものとみなされます(陳述擬制、同法158条)。ただし、二回目以降の口頭弁論期日において欠席すると、相手方の主張した事実を争うことを明らかにしないとされ裁判上自白したものとみなされます(擬制自白、同法159条3項、159条1項)。なお実務上では、初回口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しなかった場合、いわゆる「欠席判決」として、一方当事者の主張だけで判決がなされることがあります(同法同条、同法243条1項)。
2.以上の説明を前提にして本ケースについて検討してみます。
(1)公にしないための対応
結論から言いますと、今すぐにでも弁護士に依頼することをお薦め致します。すなわち、弁護士に事件を依頼されますと、今後の裁判の関係書類の送付先を弁護士のもとにすることができます。さらに訴訟の追行を弁護士が担当するようになりますので、実際に裁判所に行く回数を減らすことが出来ます。ただ、実際問題として当ホームページNo,300にも示したように、公にならないことについて絶対的な保障はできません。もし、弁護士に依頼されない場合、裁判所からの書類はご自宅に配送されること、口頭弁論期日には、毎回ご自分が出廷をしなければならないことにご注意して下さい。
(2)訴訟への対応
今回のケースの場合、既に初回口頭弁論期日の指定がなされており、期日がせまっていますので、まずは、期日の変更を申し立てることになります。あなたの場合、第一回目の弁論期日ですから、相手方へ期日の変更の同意をしてもらうか、示談を相手方に申し出て、示談交渉中である顕著な事由があることがわかる書類の提出をすることになるでしょう。具体的には、積極的に相手方と話し合ってくれる代理人を選任して裁判外で話し合い期日を変更してもらうということになります。それと並行して,相手方の主張に対して、答弁書を作成し、提出することになります。今回のケースの場合、確かに、浮気の事実がありますが、金額が多額であると思われるので、答弁書に最低でも、「原告の請求を棄却するとの判決を求める。理由は口頭弁論で述べる。訴訟費用は原告の負担とする。」と記載し、裁判所と、相手方に直接答弁書を提出しましょう。示談交渉が難航してしまった場合、実際に口頭弁論期日に出頭することになります。ここで、自らは、600万円も支払う必要が無い理由などを、裁判官の面前で主張することになります。この訴訟への対応についても、弁護士に依頼すれば、弁護士が行うことになります。

民事訴訟法
第九十三条  期日は、申立てにより又は職権で、裁判長が指定する。
2  期日は、やむを得ない場合に限り、日曜日その他の一般の休日に指定することができる。
3  口頭弁論及び弁論準備手続の期日の変更は、顕著な事由がある場合に限り許す。ただし、最初の期日の変更は、当事者の合意がある場合にも許す。
4  前項の規定にかかわらず、弁論準備手続を経た口頭弁論の期日の変更は、やむを得ない事由がある場合でなければ、許すことができない。
第九十八条  送達は、特別の定めがある場合を除き、職権でする。
2  送達に関する事務は、裁判所書記官が取り扱う。
第九十九条  送達は、特別の定めがある場合を除き、郵便又は執行官によってする。
2  郵便による送達にあっては、郵便の業務に従事する者を送達をする公務員とする。
第百条  裁判所書記官は、その所属する裁判所の事件について出頭した者に対しては、自ら送達をすることができる。
第百一条  送達は、特別の定めがある場合を除き、送達を受けるべき者に送達すべき書類を交付してする。
第百二条  訴訟無能力者に対する送達は、その法定代理人にする。
2  数人が共同して代理権を行うべき場合には、送達は、その一人にすれば足りる。
3  刑事施設に収容されている者に対する送達は、刑事施設の長にする。
第百三条  送達は、送達を受けるべき者の住所、居所、営業所又は事務所(以下この節において「住所等」という。)においてする。ただし、法定代理人に対する送達は、本人の営業所又は事務所においてもすることができる。
2  前項に定める場所が知れないとき、又はその場所において送達をするのに支障があるときは、送達は、送達を受けるべき者が雇用、委任その他の法律上の行為に基づき就業する他人の住所等(以下「就業場所」という。)においてすることができる。送達を受けるべき者(次条第一項に規定する者を除く。)が就業場所において送達を受ける旨の申述をしたときも、同様とする。
第百四条  当事者、法定代理人又は訴訟代理人は、送達を受けるべき場所(日本国内に限る。)を受訴裁判所に届け出なければならない。この場合においては、送達受取人をも届け出ることができる。
2  前項前段の規定による届出があった場合には、送達は、前条の規定にかかわらず、その届出に係る場所においてする。
3  第一項前段の規定による届出をしない者で次の各号に掲げる送達を受けたものに対するその後の送達は、前条の規定にかかわらず、それぞれ当該各号に定める場所においてする。
一  前条の規定による送達
その送達をした場所
二  次条後段の規定による送達のうち郵便の業務に従事する者が郵便局においてするもの及び第百六条第一項後段の規定による送達
その送達において送達をすべき場所とされていた場所
三  第百七条第一項第一号の規定による送達
その送達においてあて先とした場所
第百五条  前二条の規定にかかわらず、送達を受けるべき者で日本国内に住所等を有することが明らかでないもの(前条第一項前段の規定による届出をした者を除く。)に対する送達は、その者に出会った場所においてすることができる。日本国内に住所等を有することが明らかな者又は同項前段の規定による届出をした者が送達を受けることを拒まないときも、同様とする。
第百六条  就業場所以外の送達をすべき場所において送達を受けるべき者に出会わないときは、使用人その他の従業者又は同居者であって、書類の受領について相当のわきまえのあるものに書類を交付することができる。郵便の業務に従事する者が郵便局において書類を交付すべきときも、同様とする。
2  就業場所(第百四条第一項前段の規定による届出に係る場所が就業場所である場合を含む。)において送達を受けるべき者に出会わない場合において、第百三条第二項の他人又はその法定代理人若しくは使用人その他の従業者であって、書類の受領について相当のわきまえのあるものが書類の交付を受けることを拒まないときは、これらの者に書類を交付することができる。
3  送達を受けるべき者又は第一項前段の規定により書類の交付を受けるべき者が正当な理由なくこれを受けることを拒んだときは、送達をすべき場所に書類を差し置くことができる。
第百七条  前条の規定により送達をすることができない場合には、裁判所書記官は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める場所にあてて、書類を書留郵便又は民間事業者による信書の送達に関する法律 (平成十四年法律第九十九号)第二条第六項 に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項 に規定する特定信書便事業者の提供する同条第二項 に規定する信書便の役務のうち書留郵便に準ずるものとして最高裁判所規則で定めるもの(次項及び第三項において「書留郵便等」という。)に付して発送することができる。
一  第百三条の規定による送達をすべき場合
同条第一項に定める場所
二  第百四条第二項の規定による送達をすべき場合
同項の場所
三  第百四条第三項の規定による送達をすべき場合
同項の場所(その場所が就業場所である場合にあっては、訴訟記録に表れたその者の住所等)
2  前項第二号又は第三号の規定により書類を書留郵便等に付して発送した場合には、その後に送達すべき書類は、同項第二号又は第三号に定める場所にあてて、書留郵便等に付して発送することができる。
3  前二項の規定により書類を書留郵便等に付して発送した場合には、その発送の時に、送達があったものとみなす。
第百八条  外国においてすべき送達は、裁判長がその国の管轄官庁又はその国に駐在する日本の大使、公使若しくは領事に嘱託してする。
第百九条  送達をした公務員は、書面を作成し、送達に関する事項を記載して、これを裁判所に提出しなければならない。
第百十条  次に掲げる場合には、裁判所書記官は、申立てにより、公示送達をすることができる。
一  当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合
二  第百七条第一項の規定により送達をすることができない場合
三  外国においてすべき送達について、第百八条の規定によることができず、又はこれによっても送達をすることができないと認めるべき場合
四  第百八条の規定により外国の管轄官庁に嘱託を発した後六月を経過してもその送達を証する書面の送付がない場合
2  前項の場合において、裁判所は、訴訟の遅滞を避けるため必要があると認めるときは、申立てがないときであっても、裁判所書記官に公示送達をすべきことを命ずることができる。
3  同一の当事者に対する二回目以降の公示送達は、職権でする。ただし、第一項第四号に掲げる場合は、この限りでない。
第百十一条  公示送達は、裁判所書記官が送達すべき書類を保管し、いつでも送達を受けるべき者に交付すべき旨を裁判所の掲示場に掲示してする。
第百十二条  公示送達は、前条の規定による掲示を始めた日から二週間を経過することによって、その効力を生ずる。ただし、第百十条第三項の公示送達は、掲示を始めた日の翌日にその効力を生ずる。
2  外国においてすべき送達についてした公示送達にあっては、前項の期間は、六週間とする。
3  前二項の期間は、短縮することができない。
第百十三条  訴訟の当事者が相手方の所在を知ることができない場合において、相手方に対する公示送達がされた書類に、その相手方に対しその訴訟の目的である請求又は防御の方法に関する意思表示をする旨の記載があるときは、その意思表示は、第百十一条の規定による掲示を始めた日から二週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす。この場合においては、民法第九十八条第三項 ただし書の規定を準用する。
第百三十三条  訴えの提起は、訴状を裁判所に提出してしなければならない。
第百三十七条  訴状が第百三十三条第二項の規定に違反する場合には、裁判長は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。民事訴訟費用等に関する法律 (昭和四十六年法律第四十号)の規定に従い訴えの提起の手数料を納付しない場合も、同様とする。
第百三十八条  訴状は、被告に送達しなければならない。
第百三十九条  訴えの提起があったときは、裁判長は、口頭弁論の期日を指定し、当事者を呼び出さなければならない。
第百五十八条  原告又は被告が最初にすべき口頭弁論の期日に出頭せず、又は出頭したが本案の弁論をしないときは、裁判所は、その者が提出した訴状又は答弁書その他の準備書面に記載した事項を陳述したものとみなし、出頭した相手方に弁論をさせることができる。
第百五十九条  当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には、その事実を自白したものとみなす。ただし、弁論の全趣旨により、その事実を争ったものと認めるべきときは、この限りでない。
2  相手方の主張した事実を知らない旨の陳述をした者は、その事実を争ったものと推定する。
3  第一項の規定は、当事者が口頭弁論の期日に出頭しない場合について準用する。ただし、その当事者が公示送達による呼出しを受けたものであるときは、この限りでない。
第百六十一条  口頭弁論は、書面で準備しなければならない。
第二百四十三条  裁判所は、訴訟が裁判をするのに熟したときは、終局判決をする。

民事訴訟規則
第五十八条 訴状の送達は、原告から提出された副本によってする。
第六十条 訴えが提起されたときは、裁判長は、速やかに、口頭弁論の期日を指定しなければならない。ただし、事件を弁論準備手続に付する場合(付することについて当事者に異議がないときに限る。)又は書面による準備手続に付する場合は、この限りでない。
第六十四条 争点及び証拠の整理手続を経た事件についての口頭弁論の期日の変更は、事実及び証拠についての調査が十分に行われていないことを理由としては許してはならない。

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